家具や食器も「使う」ことで価値が高まっていく。フランスに根付く暮らしに寄り添った「“Re”use=再利用」のかたちを提供している『BROCANTE』。前編ではフランスの古道具文化や、お店づくりのこだわりを店主の松田さんに語っていただきました。後編では、商品の仕入れ方・販売の仕方などお店づくりの話や、古いモノの楽しみ方をご紹介します。
美しいガラクタが使う人の手元に届くまで
松田 尚美(以下、松田)
現在は年に1、2回ほど買い付けをしています。一度に買い付ける量はトラックを満載にして、2往復くらい。店舗には置ききれないので、2つある倉庫にストックして、状態の良いものからお出しします。『BROCANTE』では特にリペアに力を入れているわけではないので、魅力的でもリペアが必要なものは仕入れません。本気で直そうと思うとどうしても時間や手間がかかって、結局、値段も上がってしまいますからね……。それに、フランスの人たちだったら少しくらい壊れていても使えたら気にしないので(笑)。だから、現地でブロカント(※<前編参照>フランスでは日常的に使う美しい古道具のことを「Brocante(ブロカント)」と言う)を楽しむように、できるだけ買いやすい値段でそのままお出ししたいと思っています。
松田
ネットショップには倉庫に置いてある在庫商品も掲載するようにしています。ネットショップは遠方の方にご利用いただくだけでなくて、ご近所の方にはカタログのような使い方をしてもらっていて。ネットショップで商品を見て、気になった物は取り置きのご連絡をいただくことも多いんですよ。
『BROCANTE』ONLINE SHOP:brocante-online.biz/
ブランドや蘊蓄より、「自分の琴線」で選んで使う
アンティークや骨董品というと、「歴史や背景を知っておくべきなんじゃ……」「買っても自分の家や生活にどう取り入れたらいいのかわからない……」といった先入観があって、「敷居が高いかも」と感じている人も多いのでは。でも、『BROCANTE』が提案しているのは、あくまでも「”Re”use」。「手にした人がもう一度使うこと」を前提とした古いモノの楽しみ方です。
松田
『BROCANTE』ではブランドや銘柄にはこだわらず、純粋に「良いなぁ」「使いたいなぁ」と思ったものをセレクトしています。いわゆる「アンティーク」の世界では、その品物の歴史やストーリーを重視する傾向がありますよね。特に日本では、モノの価値の証になるようなブランドや蘊蓄(うんちく)を求める方も多いのかなって。でも、私はそういう蘊蓄を覚えるのが面倒くさいんです(笑)。買い付けるときも地域や年代をさっとメモしておく程度。買った後、暮らしの中で使いながら、ふとお皿の裏の刻印を見て、「あ、あの街の、あの時代のものだったんだ」と気づくくらいでも楽しい。特にお作法ではないので、「自分の琴線」に触れるものがあれば、それで良いと思っています。
松田
あとは飾るだけでなくて、あくまで実用品として、「使う」ことで面白さを感じてほしいですね。お店に置いてあるお皿は使いやすい白色のものや、分厚くて割れにくいものを選んでいますし、バケツに至っては個人的には穴が空いている方がいいくらい。植物を植えるときには逆に都合がいいんですよ(笑)。
先ほどもちょっと触れましたが、日本の方はブランド志向みたいなものもあって、「自分の琴線」とは別のところでモノを選んでいることが多い気がします。ブランドを重視して選んだ結果、他のアイテムと浮いてしまってちぐはぐな印象になってしまったり、後から「何か違う……」と感じて使わなくなったり。でも、「自分の琴線」に触れた本当に気に入っているものなら、直してでも使うと思うんです。それに、日本人って真面目なんですよね。このテイストのアイテムを入れたら、全部これで揃えないと気持ち悪い……みたいな、画一的な感覚になってしまいがち。でも、少し肩の力を抜いたほうが楽しくなるはず。暮らしの中で「使う」ことを前提に、自分の素直な「好き」という気持ちを大切にして古いモノを取り入れてもらえたらと思います。
古いモノの価値には、ブランドや歴史といった「それまでのストーリー」が大きく関わってきます。でも、今回、『BROCANTE』が教えてくれたのは「使う」ことで新たに生まれる「それからのストーリー」の楽しみ方。そこには、先入観にとらわれず、古いモノと、使う人とをもう一度つなぐ「“Re”use」のかたちがありました。