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DATE 2017.07.28

復古創新の”RE”

今回ご紹介するのは、築90年の文化住宅を改装した、西荻窪にある生活雑貨を販売しているカフェ『Re:gendo(りげんどう)』。空間や置かれているアイテム、食事メニューなど、お店づくりに一貫しているのは、古いモノやコトに、新たな命を吹き込む「再生=“Re”birth」への取り組み。そこにはどんな想いが込められているのでしょうか。『Re:gendo』が大切にしている“RE”に迫ります。

日本の暮らしの文化・美しさを伝えていきたい

2011年にオープンした『Re:gendo』。実は、このお店を開く以前からも『群言堂(ぐんげんどう)』というライフスタイルショップを全国に展開し、女性を中心に人気を集めていました。一連のお店づくりには、共通した想いがあるといいます。

Re:gendo

『Re:gendo』は、島根に本拠地を置く、『石見銀山生活文化研究所』が運営しています。私たちが大切にしてきた考え方は「復古創新」。昔から引き継がれてきた、美しい日本の暮らしの文化。それは、次の世代に伝え続けなければ失われてしまうものでもあります。“今”を生き生きと楽しみながら、古き良きものを活かし新しい価値を提案しながら、残すべきものは残していく。そんな風に受け継がれていく暮らしの魅力を全国の『群言堂』というライフスタイルショップを通して提案してきました。その後、しっかりと人の手がかけられたものを食べる。少し前まで当たり前のことだったのに、いつの間にか難しくなってしまっている昨今、改めて「食べる」ことを提案する場所として、高尾駅に『一言堂』をオープン。そして2011年に新たな取り組みとしてはじめたのが『Re:gendo』です。西荻窪にあった昭和初期の古い住宅を再生し、昔ながらの日本の暮らしの文化、美しさを再び次世代に伝えていく場所としてオープンしました。

昔ながらの伝統技法で、古い文化住宅を再生

西荻窪の住宅街に佇む、『Re:gendo』。古くて趣のある外観に惹きつけられ、足を止め、そのまま店内に入っていく人も多いのだとか。この建物を”Re”birthするまでには、どんなストーリーがあったのでしょうか。

この建物は、元々は昭和初期に建てられた、古い長屋状の集合住宅。いわゆる「文化住宅」といわれるものでした。会長がこの辺りを散歩していたときに見つけて、一目惚れしたんです。出会ったときにはもう再生させた後のイメージも湧いていて、そのままお店をつくることに。改装にあたっては、私たちの本拠地がある島根から職人さんが集まり、泊まりがけで作業が進められました。中には日本を代表する左官職人もいて、店内の壁は、漆喰に灰を混ぜた「ねずみ漆喰」という伝統的な技法を使って仕上げられています。この技術を使うと、独特な優しいグレーの色合いになるんです。ほかにも庭や床など全体的に手を加え、建物は味わい深い雰囲気に生まれ変わりました。

ねずみ漆喰でつくられたグレーの壁は、優しく落ち着いた表情。

使われなくなったものを活かした空間づくり

外観もさることながら、店内にもノスタルジーを感じる、穏やかで居心地のいい空間が広がります。この雰囲気を生み出しているのは、どこか郷愁漂う椅子やテーブルなどのアイテムたち。ここにも”RE”へのこだわりがあるといいます。

店内の内装や什器の多くは、もともとは古くなり、使われなくなっていたものたち。『石見銀山生活文化研究所』では、古い建物が壊されると聞くと、直接その現場に足を運んで、古材やそこで使用されていた道具を見に行きます。その中から気に入ったものを仕入れ、全国の店舗で活用しているんです。『Re:gendo』では、かつて学校の階段に使われていた木材を店内の床の一部に使ったり、廃線になった線路をテーブルの脚に活用したりしています。ほかにも、フランスの教会で使われていた椅子を再利用したり、京友禅の染め板をテーブルの天板として活用したり、古いラジオをスピーカーとして取り入れたり……。見捨てられていたかもしれない道具や素材の価値を見出して活かしているものがたくさんあります。そんな店内の空間も楽しんでほしいですね。

組フランスの教会で使われていた椅子を
什器として使用。背中の物入れがユニーク。

島根で廃線になった線路をテーブルの脚に
使用。積み重ねられた時間を感じます

京友禅の染め板を天板として使用したテーブル。
長い期間使用することで模様が薄らいでいく
経年変化も楽しめるとのこと。

古いラジオをスピーカー代わりに使用。
店内の音楽はここから流れます。

食と生活雑貨で伝えていく暮らしの文化

お店で楽しめるのは「おむすび膳」と「にぎり膳」といった食事メニューや、使い心地のいい生活雑貨。これらの食事やアイテムを目当てに日々多くのお客さんが訪れています。食事のメニューや雑貨のセレクトの背景には、どういった想いがあるのでしょうか。

私たちが提供するのは、「手のひらの料理」。現在のところ、昼の食事メニューでご用意しているのは、土鍋で炊いたご飯でつくる「おむすび膳」と、季節の野菜寿司がメインの「にぎり膳」の2種類です。日本では昔から病を治すことを「手当て」と言いますし、神仏に祈るときには手のひらを合わせる風習がありますよね。日本では、手のひらには巧妙な力が宿っているという考えから、このふたつのお膳は、皆さまの日々の力の源となりますようにと想いを込めておつくりしています。また、お膳に付ける小鉢も、昔ながらの日本の家庭料理ですが、主婦の方がお家でやるものに旬の野菜や乾物、発酵食品などの食材を取り入れ、一手間はいっているようなものをお出ししています。

現在店内に置いてある焼き物や布小物などの生活雑貨は、主に日本の手仕事でつくられたものをセレクトしています。人気なのは、竹炭の中に小さな穴を空けた「草花遊び」というオリジナルの花器。花を挿す穴や受け皿を変えてみたり、同じものをいくつか並べて置いてみたりと、アレンジの仕方次第で何通りもの飾り方ができるアイテムです。この商品が生まれたのも、草花に囲まれた里山の暮らしを楽しむ発想があったから。実際に使って楽しんでもらうことで、日本の生活文化の価値を見直すきっかけになったらいいなあと思いますね。これらの生活雑貨や、提供するお食事を味わってもらうことはもちろん、その背景にある古き良き文化を感じてもらうことが私たちの目指しているところ。これからも美しい日本の暮らしの魅力を伝え続けていきたいと思います。

使われなくなった日本の古い民家や生活道具、また、徐々に移り変わっていく日本の食文化。そんな中で昔からものごとの魅力を改めてすくい上げ、時代に合わせて活かしきることで、古き良きものを次世代に受け継いでいく。『Re:gendo』が体現しているのは、そんな「”Re”birth=再生」のかたちでした。”懐かしさと心地良さを感じる空間を味わいに、足を運んでみてはいかがでしょうか。

●PROFILE:Re:gendo-りげんどう-

日本の暮らしの文化に根付いたものづくりを行う『石見銀山生活文化研究所』が、2011年西荻窪にオープンさせた食事と生活雑貨のお店。2種類の食事メニュー「おむすび膳」と「にぎり膳」は季節によって食材が変わる。築90年の文化住宅をリノベーションした空間も人気。
※ 2017年夏より、店舗改修をスタートする予定です。来店時はオープン状況をご確認ください。

店舗情報
Re:gendo-りげんどう- 公式サイト:http://re-gendo.jp/
石見銀山生活文化研究所公式サイト:http://www.gungendo.co.jp/