Dolive Doliveってなに?

(tefu)lounge, tefu, tefu下北沢 DATE 2023.03.03

遊びも仕事も楽しめる複合施設、
(tefu)loungeのアイデア

小田急線と京王井の頭線が交わる東京・世田谷の下北沢は、劇場、古着屋、飲食店がひしめき合い、多くの文化人や若者を魅了してきました。2000年代からスタートした再開発によって大きく街が変わるなか、新たなスポットとして2022年1月に誕生した(tefu)lounge。仕事、勉強、くつろぎなど様々なシーンに使える複合施設には、日々を過ごす家づくりの参考になるヒントも詰まっていました。

無意識下の行動に作用する仕掛けが満載

下北沢駅南西口の目の前にある5階建て。1階にはナチュラルスーパーマーケットとコーヒースタンドがあり、2階には小さな映画館とカフェが入っています。3階は時間貸し、月極ができるシェアオフィス&ラウンジ、4階は会議室もあるシェアオフィス、5階がオフィス兼レンタルスペースになっています。

街を散策する合間に仕事をしたり、休憩をしたり。ライフスタイルに合わせて自由に使えるスペースは、下北沢の街が持つ自由闊達な雰囲気ともマッチ。誰もが気軽に立ち寄れるよう、ビビッドで奇抜なデザインというよりは、木をベースとしたナチュラルなしつらえでまとめられています。

「設計に関して、明確なコンセプトがあるわけでないんです」と、言うのは、この物件の企画・設計・運営を手掛けるUSD(株)の金塚さん。「コンセプトが必要なのは関わる人数が多いときだと思うんです。でも、ここは感覚が共通している人たちと作り上げたので、スケッチを見ればやりたいことがお互いに理解できる。なので、言語化は特に必要としませんでした」

“言語化しなくてもわかる“というのは、人の行動原理に沿っているから、と言い換えることもできます。人がある場所に立ったとき、視覚、聴覚、触感などによって通常、どのように感じ、行動するかというのを感覚的に共有。その感覚をデザインに落とし込んでいるのです。

今回、見せてもらったのは4階のシェアオフィスと3階のラウンジ&シェアオフィス、2階のカフェの3フロア。では、それぞれの真似したくなるアイデアを探っていきます。

IDEA1:雰囲気で場の役割を意識させる

4階のシェアオフィスは個々の部屋にドアがあり、プライバシーが守られています。ドアは木製で、天井はインダストリアル感のあるムードに。共有のキッチンは窓から陽が差し込む、明るいタイル張りになっています。

オフィスといえども無機質なイメージにならないのは、木製ドアや家具、廊下の半透明の照明の使い方によるもの。一見ホテルのようでありながら集中力が高まるのは、廊下に一直線に並ぶドアなど、どこか学校を連想させる構成だからかもしれません。

一方、3階のラウンジはほぼ仕切りのない開放的な空間に。入り口を入って左手が、ラウンジチェアを配した寛ぎスペース。ここの床はカーペット敷きになっています。入り口のほぼ正面に大人数や複数組がミーティングができる大きなテーブルがあり、右に行くと図書館のようにデスクが並び、ここからフローリングの床に変わります。その奥にはドアのあるミーティングルーム(予約制)もあり、様々な要望に応える用意があります。

「カーペット敷きとフローリングの空間の間に大きな仕切りを作っていません。でも、フローリングの寄木やデスクの並びには図書館のようなイメージがあります。すると、これまでの経験からか、自然と静かにふるまってもらえるんです。人って無意識下のうちに空間が変化したことを察知する能力があって、それによって行動も変わってくるのではないでしょうか」と、金塚さん。

わざわざ「お静かに」といった注意喚起をしなくても、利用者が自主的に場の空気感を作っていく。その方法は家づくりにも応用可能。

例えば、リビングダイニングの一角にカーペットを敷くだけで、寛ぐ場所と作業する場所をさりげなく分けることができます。また、書斎は本が積み上がっていてもよしとしつつ、リビングのものはギャラリーのようにディスプレイしていると、自然とリビングに本を置きっぱなしにしなくなるなど、空間にメリハリをつけることで、自分の意識や行動にもルールができてきます。

IDEA2:くぐることで空間を広く感じさせる

3階は仕切りがないとはいえ、カーペットからフローリングに変わる境界や、ミーティングルームにつながるところはフレームをつけています。何気なく通り抜けているようで、実はここでも意識の変化が生まれています。

「このフレームは意識的に作りました。茶室のにじり口もそうですが、くぐることで印象が変わります。また、低いところを通ることでくぐった先の空間が広く感じられることも。なので、天井高は変わらないのですが、奥に入ると『広い』と感じると思います」

家の中でもちょっと低くなる場所を作るだけでリズムが生まれます。キッチンとダイニングの間など、扉で仕切ると閉塞感が生まれてしまうところでも、くぐるような壁をつけることで、開放感はキープしながら、抑揚を作ることができます。

また、自宅でのリモートワークが浸透した今、参考にしたいのが一人用のウェブミーティングブース。個室になっていて、作り付けのテーブルとハイスツールを設置しただけの簡易的な作りですが、家族がいるとウェブ会議がしづらい、という場合にぴったり、部屋の一角に壁を立て、ドアを取り付けるだけなので、DIYでも設置可能。必要がなくなれば取り壊しも簡単と、家を固定ではなく流動的に使うアイデアでもあります。

IDEA3:家具の感覚で空間を作る

3階のラウンジなど、この建物の内装の一部は家具会社が設計。それも気持ちよく過ごせる一因だと、金塚さんは言います。

「家具は人が使うものだから、細かいところに心配りがありますよね。使い勝手のよさは不可欠。入り口をアールにして柔らかさをもたらしているのもそうだし、空間の動線なども使いやすいように考えてくれました」

住まいを設計してくれる家具会社もあるので、家具視点で家を考えてみるのもいいのでは、とアドバイス。

この建物内にある家具はほぼオリジナル。場所によって椅子の高さや座り心地を変えて、ここでも無意識に用途を誘導する仕掛けが施されています。

また、2階のカフェのカウンターにも注目。オリジナルで作ったカウンターは脚が付いていることでキャビネットのようでもあり、家にいるような心地よさを作り出しています。

「オフィスも仕事をする場だからオフィスらしく、というのではなく、家の延長のように使ってもらいたいと思っています」

カウンター下の扉を開けると収納になっていて、これも取り入れたいアイデアのひとつ。自宅のキッチンカウンターの下部にグラスなどを入れる収納スペースを作っておくと、ダイニングテーブル側から食器を取り出せるといったメリットも。ゲストが来た際でも便利に使うことができます。

駅前という立地に加え、カフェ、オフィス、映画館、ナチュラルスーパーマーケット、コーヒースタンドが併設という、老若男女が行き交う空間だけに、ひとつのテイストにまとめるのではなく、それぞれが自分の居場所と思える普遍的なデザインを取り入れた(tefu)lounge。サインがなくても、どのような場所なのかを感じ取れ、扉がなくてもリズムをつけられる仕切り方。さらには、家具感覚で空間をしつらえるなど、家づくりにも転用できる考え方を、ぜひ参考にしてみてください。
(tefu)lounge

東京都世田谷区北沢2-21-22
2F 9:00〜12:00、3F 9:00〜23:00(24時間利用可能なオプションあり)
ラウンジの利用料金 ¥750/1h〜 
HP