Dolive Doliveってなに?

RIGHT NOW BOOKSTAND DATE 2023.03.09

#3 まちにひらける、猫が店長の本屋兼住居「RIGHT NOW BOOKSTAND」

誰と、どこで、どう暮らす? この組み合わせ次第で暮らし方は無限大。自由な組み合わせを選んでいる人の暮らしを覗いて、これからのライフスタイルのヒントにしてみるのはどうだろう。Doliveの新しい家「No.00(ナンバーゼロ)」を想像のベースに、さらに新しい暮らしのアイデアをインタビュー。もしあなたが「No.00」に住むのなら、誰と、どこで、どう暮らす?
Doliveの新しい家「No.00(ナンバーゼロ)」って?

暮らしへの自由な想像の邪魔をしない、プレーンでノンデザインな家。オリジナルのままでもカッコイイし、そこから自由にアレンジしてももちろんOK。「No.00」に自分らしいライフスタイルを味付けして楽しもう。

野口理恵さん

株式会社rn press(アールエヌ・プレス)代表取締役。編集・ライター。ソフトバンククリエイティブ、太田出版、PIE International、WIRED日本版などを経て2018年に独立。2022年に自宅兼事務所の1階に小さな書店「RIGHT NOW BOOKSTAND」をオープン。

新しい賃貸住宅施設「hocco(ホッコ)」で、猫と営む自宅兼本屋の暮らし。

猫のモリオが店長を務める、東京武蔵野市の書店「RIGHT NOW BOOKSTAND」。飼い主の野口理恵さんが、動くのが大好きなモリオのために引っ越した先で開業した本屋さんです。

本屋を始めるきっかけとなったのは、引っ越し先を探す際、「階段のある家 ペット可」で検索をして、「hocco(ホッコ)」という新しいタイプの賃貸住宅を偶然見つけたこと。

「hocco」は小田急バスが自社のバスターミナルに建設した施設で、中庭を囲むように13戸の戸建てが並ぶ住居群。住人が自分の得意なことを地域に開きながら暮らす“なりわい暮らし”をコンセプトに、ターミナルに近い5戸は最初から店舗併用の賃貸住宅として貸し出されています。野口さんが営む「RIGHT NOW BOOKSTAND」はそのうちの1戸。

「私が一番最初の入居者だったらしく、申し込んだときにはまだ全部の家が空いていたんです。猫のために家を探していたので最初はお店を開くつもりもなく、住居のみのタイプでもいいかなと思ったんです。でも、1階の土間部分を店舗として好きに使っていいというのを聞いて、もともと出版の仕事をしていたのもあり、週末だけだったら書店を開いてもいいかなと」

土間から一段上がった1階奥は、野口さんのワークスペース。「書店は木・金・土・日にやってます。月・火・水は出版の仕事をしているんですが、本業が忙しいときは週末でも店は閉めたりして。割と不定期でやっています」

本業を続けながら本屋を開業というと大変そうに聞こえますが、「本屋を始める前の暮らしと実はそんなに大きく変わらない」と野口さん。

「以前都心の方に住んでいたときも、自宅を仕事用の事務所にしていたので、よく人が遊びに来る家だったんです。ずっと生活が仕事と地続きな感じだから、本屋をするようになってからも、今までより知らない人がふらっと来るようになったな、くらいの違いで(笑)。書店に置いている本棚もそんなに大きくないので、私用の本棚の続き、くらいの感覚。この暮らし方にはそんなに違和感なくスッと入れました」

この家に引っ越してから、猫のマニを新しく迎え入れ、モリオとモリオの先輩ウナギを入れた猫3匹、人間のパートナー、たくさんの植物たちと暮らす野口さん。交代制で「RIGHT NOW BOOKSTAND」に出勤してくれるという3匹と一緒に、私生活も本業も本屋業も自然に繋げながら生活しています。

プライベートゾーンを外に開いて、地域の人と繋がる家。

野口さん宅の2階には、パートナーのワークスペース、寝室やお風呂場がありますが、中庭側の壁が全面大きな窓になっていて、間仕切りも少ないため、プライベートゾーンでありながらオープンな雰囲気。植物が好きなこともあって、家を選ぶ際はいつも日当たりの良さ重視で選んできたと言います。

「どの家にするかを選ぶとき、2階から見える景色の写真を全部屋分送ってもらったんですが、その景色と日当たりでここを選びました。1番景色が抜けていて、向こうの道から歩いてくると、家の奥の壁が見えるのもいいなって。春は、家から通りの桜並木が見えるんですよ」

2階にある野口さんのプライベート本棚

猫たちが2階の窓から外を見渡せるキャットタワー

「hocco」自体が「地域に生活を開く」コンセプトなだけあって、私生活のスペースがゆるやかに外に繋がる構造の家になっていますが、これまでもパートナーと猫との暮らしで個室を作る必要性を感じなかったという野口さんにとっては特にストレスのない形だったそう。階段を降りてすぐの野口さんの仕事スペースも、キッチン&ダイニングの役割も果たしながら、そのまま書店部分と繋がっています。

「RIGHT NOW BOOKSTAND」に置いている本も、基本的に私が好きな本と制作に携わった本なので、私の頭の中までお客さんにダダ漏れです(笑)。生活も頭の中も開いているので、人の本棚を覗いている気分だってよく言われますね。お客さんもお店なのに『お邪魔します』って言いながら入ってくる人が多いです」

書店部分には販売用の本棚が並べられていますが、本業と並行してできるくらいの規模が野口さんにとっても、お客さんにとっても丁度よく、ゆったりとしたレイアウト。平日の常連は近所のおじいちゃん、おばあちゃんたちで、平日の午後や土日は近所の小学生や親子がやってくるのだそう。

「本好きよりも、猫好きがたくさん来ている気もしますが(笑)、毎週来てくれる方もいたりして。私は基本的に仕事場の方にいて、声を掛けられたらお話するんです」

書籍のサイズに合わせて作られた本棚は、DDAAの元木大輔さんによるデザイン。本が宙に浮いているような軽やかなデザインがお気に入り

野口さんと地域の人々との繋がりは、お客さんとだけではなく、「hocco」で暮らすご近所さんや、仕事終わりのバス運転手さんにまで広がっています。

「ご近所さんは世代が近い方が多くて仲が良いですね。お隣にお芋やネギをもらったり、向かいのパイ屋さんの試作品をもらったり。そういうお付き合いがあって、でも干渉しすぎずな関係性で暮らしやすいです。基本的に猫と植物ファーストな暮らしなんですが、猫たちも思った以上に順応性が高くて。人懐っこい猫で良かったなと」

No.00に暮らすとしても、やっぱり猫ファースト。
多くは変えずに、少し大きく。

今の暮らしに満足はしつつ、「こうだったらいいな」という家への理想も持っている野口さんに、もしDoliveの家「No.00」で暮らすとしたら、どんな暮らしと家がいいのかを聞いてみました。

No.00の基本プランは、1階の入り口が大きく外に開いた土間になっていて、現在の「RIGHT NOW BOOKSTAND」に似ています。No.00の1階は土間の奥に個室のある仕様になっていますが、「個室がないオープンな空間が好き」と野口さん。

「私とパートナーは猫と一緒に何回か引っ越しているんですが、一度も個室を作ったことがないんですよ。ずっとだだっ広いワンルーム。今の家もそうなんですけど、お互いあんまり気にしないのかもしれません。なので、No.00も壁や個室はなくしたいです。でも、今の生活で、1階のキッチンが外から丸見えなのだけは、ちょっと恥ずかしいということが分かったので、No.00ではキッチンは2階にしたいですね」

基本プランの奥の部屋はなくし、今と同じ土間の書店&小上がりのワークスペースに。店先で子どもたちが座りながら本を読めるよう、シンプルなスツールや机も用意。

「色も今と同じ白い壁、白い家具が気に入っているので、そうしたいですね。白い壁が1番グリーンと猫たちが映えるので。1階が広くなるから、壁沿いに猫のキャットウォークと植物のお世話ができる場所を作りたいです。No.00でもやっぱり、猫と植物ファーストの家になると思いますね(笑)」

「仕事でZINEのワークショップをやったり、作家さんのインスタライブをやったりもするので、ワークスペースに人が集まれるソファや机があって、大きな本棚が置けたら嬉しいです。2階の要素は今の家からそんなに変えなくていいけど、スペースが増えるならやっぱり大きな本棚を置いて、グリーンとキャットタワーも置けるだけ置きたいですね!キッチンも2階にしたいから、そのままご飯を食べられるダイニングテーブルも置きたいなあ」

猫が一緒に寝るという人間用ベッドは今よりちょっと大きめに

「強いて言うなら、今の土間の暮らしで困っているのは、冬が思った以上に寒かったこと。人間はだんだん慣れてきたんですけど、去年は、この寒さを理解していなくて、エバーフレッシュという植物を土間に置いてたら、全部枯れてしまって2階に移動したんです。だから、No.00で新しく暮らすときは、床暖房がほしいなあ! 植物は上にも下にもいっぱい置きたいので。あとは、小さなことですが、猫のトイレがインテリアに馴染まないので、それを隠す丁度良いトイレ隠しがあったら嬉しいです。真っ白な部屋に置いても変に目立たないような」

「置く物は最低限でOKで、とにかく猫と植物にとっていい暮らしを」が第一優先な野口さんのNo.00は、小さな「こうだったらいいな」を取り入れた、今の暮らしの拡大版。野口さんのように小さな希望を少しずつ付け足していくことが、理想の暮らしを叶える一番の近道なのかもしれません。

Photography/宮前一喜 Text/ 赤木百(Roaster) Illustration/谷水佑凪(Roaster)