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Swimsuit Department, 郷古隆洋 DATE 2022.03.28

Swimsuit Department 郷古隆洋さんが考える
民芸品を詰め込んだイームズハウス

家を購入した人がその経験から考える2軒目のイメージ。家づくりを体験したらからわかる知識や経験値をもとに、次なる理想の家を語っていただきます。「2軒目を建てるならこうする」という想像をもとに、家づくりのヒントを学びましょう。

3回目のゲストはSwimsuit Department・郷古隆洋さん。現在は東京と福岡・太宰府の2拠点暮らしをしています。もし次に住まいを構えるなら? そんなテーマで郷古さんが考えたのは、長年憧れていた“イームズハウス”のオマージュとも呼べる空間。大好きな民芸品とアメリカのヴィンテージ家具で埋め尽くした、趣味が全開になった家に妄想が膨らみます。

郷古隆洋さん

ユナイテッドアローズやランドスケーププロダクツ勤務を経て、2010年にヴィンテージやアンティーク雑貨を扱う「Swimsuit Department」を設立。世界各地で買い付けたインテリア雑貨をネット販売する傍ら、日本各地の催事にトランクショーという形式で出店。店舗のインテリアコーディネートやディスプレイも手がける。

海と山がそばにあるイームズハウスを夢見て

現在、東京の家として使っているマンションは6年目に突入。新宿や渋谷まですぐに出られる立地が気に入り、更新3回目を迎えたばかりという郷古さん。福岡の太宰府にも住まいを構え、二拠点生活を満喫しています。

東京の家も、太宰府の家も、共通しているのが収集したアイテムの多さ。日本のみならず海外の民芸品のコレクターでもある郷古さんの住まいは、壁から床までさまざまなアンティーク雑貨で埋め尽くされています。

メキシコ州メテペックで昔から作られている陶器の教会のオブジェが好きで数多く収集している郷古さん。さまざまな色や大きさのものが並び、部屋のなかでも特殊な存在感を放っています。

そんな収集癖を持つ郷古さんが考えた2軒目は、20代の頃から憧れていたイームズ夫婦の自邸として有名な「イームズハウス」がベース。アメリカのミッドセンチュリーモダニズムを代表する建物を、どう味つけするのか伺いました。

次なる家は名作モダン住宅がベース

20世紀のデザインに最も影響を与えたとされる建築家でデザイナーのチャールズ&レイ・イームズ夫婦。多くの名作家具を残した夫婦が、ロサンゼルスのパシフィックパリセーズにて1949年に建てた自邸『イームズ邸 ケーススタディハウスNO.8』です。

自宅兼アトリエだったこの家は鉄骨とガラスで構成されたモダン建築で、デザイン業界に大きな影響を与えた建築物の1つ。20代だった若き日の郷古さんも、その建物の虜になった1人でした。

「イームズ夫婦が建てた家は、鉄骨で枠をつくったシンプルな建物なんです。大きな窓がパネルのようになっているのが面白くて。縦長の平屋に見えますが、実はスタジオを併設した2階建て。この建物は若い頃から自分の憧れだったので、次に家を自由に建てられるなら、イームズハウスのようにガラス開口を大きく設けたデザインで、窓からは常に緑が眺められる箱のような住まいにしたい」

場所は都会ではなく、山や海がある環境が希望だそう。イームズハウスも海がそばのカリフォルニアに建てられた建築物で、そこは同じように倣いたいとのこと。部屋のなかにいても、大きなガラス開口から豊かな自然を身近に感じたいと話します。

また、郷古さんがこだわったのは、左右横長に伸びた特殊な間取り。これはイームズ邸とも同じであり、さらに、郷古さんが福岡で持っているギャラリー兼ゲストハウスとも同様の間取りだそう。

「1階は和室とアメリカの2つのテイストに分けたいんです。囲炉裏を置いた和室、アメリカのヴィンテージ家具を揃えたキッチンリビング。空間ごとに味つけを変えたいですね」

囲炉裏のある和室とキッチンリビングの間は通路にして、車を置ける駐車スペースにしたいと郷古さん。
1階の駐車場スペースから、キッチンのある部屋に入れる動線が理想的で、扉を開けてすぐのところにトイレ・バスを設けたいのだそう。

「というのも、街を歩いていると、ときどきよその家から人が入浴する音が聞こえるんですが、それが妙に和むというか、心が温まるもので。自分にとって一番ほっこりさせられる生活の音。だから、玄関から入るときにその音を聞きたいな、と」

2階の両端が吹き抜けになっているのも郷古さんのアイデア。子どもの寝室、大人の寝室と続き、建物の端が吹き抜け空間になっていることで、風が通って気持ち良い空間になると考えます。

中央の駐車スペースには、長年愛用しているルノーのアヴァンタイムを置きたいという郷古さん。

キッチンは独立型のアイランドキッチンを置き、調理しながら周囲をしっかり見渡せる広いスペースにしたいそう。「そばには長テーブルとイスをドンと置いて、家族だけでなく、ゲストもたくさん座れる大きなものにしたいです」

「また、テーブルの中央に壷や皿など、さまざまなオブジェを置いても面白いですね。特に、器は月に10枚は購入しているので、ここが作品を見せる場所になっても良いかもしれません」

囲炉裏のある和室には、板間とコンクリートの床材を2つ使用すると新鮮かもしれない、という郷古さん。

「インテリアデザイン界の巨匠、故・倉俣史朗さんが80年代の店舗に“スターピース”という素材を使って話題になったんです。人工大理石のテラゾーとカラフルなガラスを散りばめた個性的な素材なんですが、これを和の部屋に使うと、新しい和の見え方が楽しめるかもしれません」

「この部屋もキッチンリビングもシンプルでスッキリ、というよりは、自分のコレクションを所狭しと置きたいですね」

部屋の壁には作りつけの食器棚を備えて、大皿を10枚くらいズラリと並べても良いかもしれない。小上がりになった囲炉裏のスペースに座り、壁に掛かった皿をのんびり眺める時間も素敵だ……と、妄想が進みます。

「2階には今の自宅にはないオーディオルームをつくるのが夢。壁一面の本棚、大きなデスク、座り心地の良いアーロンチェアで、思う存分読書に耽りたいですね」

また、現在の太宰府の家には屋上があり、毎年大きなプールを出しては子どもたちを遊ばせているので、妄想の2軒目でもやはり屋上はマストだそう。「プールだけでなく、パラソルを立ててBBQするのも良いですね。屋上はいろいろな使い道があると思います」

若き日に多大な影響を受けたイームズハウスは、今も家へのアイデアソースになっているという郷古さん。次なる理想の2軒目は、愛おしい民芸品をたっぷり陳列できるギャラリーであり、外の植物を遮断せずに暮らせる自宅でもありました。ここなら、趣味と仕事を兼ねた民芸品の買付けがますます楽しくなりそうです。

Photography /原田教正 Text/仁田ときこ Illustration/Yunosuke