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石田勇介,toolbox DATE 2021.12.17

「家は一生に一度の買い物」と言われていた時代も今は昔。1軒目では見送ったこだわりや憧れ、家づくりを体験したからこそわかる知識をかき集め、車を買い替えるように2軒目、3軒目の家を考えてみるのも魅力的だと思いませんか? 更なる理想の住まいを求めて湧いてくる、とある人物のイマジネーションから、家づくりのヒントを学びます。

今回登場するのは、空間づくりの材料とアイデアを提供する内装ストア『toolbox』の石田勇介さん。家の内側から人々のライフスタイルや街づくりにまでアプローチしている石田さんに、尋ねてみました。
「もし2軒目の家を建てるとしたら、どんな家に住みたいですか?」

石田勇介さん

空間づくりのプラットフォームとして、材料とアイデアを提供する内装ストア『toolbox』で商品開発や企画をおこなう。少年時代から押し入れや二段ベッドを改造するほどの、生粋のDIYer。アウトドア好きで、キャンプ、カヤック、釣り、料理、自転車、ドライブと多岐にわたる趣味を持つ。

  “自分らしい空間”をつくるための建材やアイデアを提供しているtoolboxで、企画や商品開発を手がける石田勇介さん。自身も2010年に自宅として購入した中古マンションをセルフ・リノベーションするなど、仕事でもプライベートでも家づくりをアクティブに楽しんでいます。
(石田さんの現在の家はこちらの記事でチェック!)

〈石田さんの1軒目〉

石田さんの1軒目は、実験室のような、子供の遊び場のような......自由でユニークな家。

そんな石田さんが、もし2軒目の家を建てるとしたら……? そう尋ねてみると、こんな答えが返ってきました。

「たとえば、多くの人は“家”と聞くと、リビングがあって、キッチンがあって、お風呂があって……という空間をイメージしますよね。でも、本当にそれでいいんだっけ?と考えてみると、もっと自由な発想の空間づくりができるはず。普段あまり料理をしないのであればキッチンは最小限でいいし、ベッドルームに洗面台があってもいい。もし2軒目の家を建てるとしたら、今ある“家”の概念をもっと拡張していくような空間づくりに挑戦したいんです」

取材が行われたのはtoolboxの会議室

2軒目は、周辺環境を選ぶところから楽しむ。

「家を所有すること自体を楽しみたい」というのが、石田さんが考える2軒目の家のコンセプト。1軒目を生活の拠点に、2軒目はもっと自分の趣味嗜好に特化した空間を作りたい、と石田さんは言います。

〈石田さんの1軒目〉

「2軒目の家を持つとしたら、都会のど真ん中の一人暮らし用のワンルームマンションを改装するのもいいですよね。ずっと生活するには不向きな場所かもしれないですけど、2軒目として考えるなら周辺環境も含めて自分が一番アクティブに楽しめる場所を選びたい」

「近所に銭湯やスパがあれば、ユニットバスをなくしてシャワーだけにしてもいいですし、お気に入りの店がいくつかあればキッチンも最小限でいいですよね。そうやって都市や地域を活用すれば、家の中でももっと自由に使えるスペースが増えると思うんです」

都会の2軒目は、ワンルームのリビングをお茶の間にリノベーション。

「僕がイメージしているのは、昔の住宅の“茶の間”です。そこで食事もできるし、作業もできるし、寝ることもできる空間。2LDK、3LDKの住宅のように用途や機能を分散させなくても、ひとつの場所で自分の好きなように過ごせる茶の間が理想ですね。キッチンも、囲炉裏のようなイメージで座りながら料理ができるようにしたい。そこで座ったまま料理をして、そのままできたての料理を食べられる……みたいな。一見、突拍子もないようなアイデアも、2軒目だからこそ実現できると思うんです」

都会の“茶の間”ワンルーム

田舎の不思議な構造物を2軒目に?

立地と周辺環境を最大限に活用すれば、家づくりはもっと自由になる──。都会に建てる2軒目について空想を膨らませた石田さんはさらに、「田舎の地域だったら、また別のアイデアが生まれそうですよね」と続けます。

「田舎の道を車で走ってると、貯水池や川の水門に監視塔が立ってるのが見えるじゃないですか。ああいう特徴的な建物の中に住んじゃうのも面白そうだなって(笑)。せっかく2軒目の家を持つんだから、キャラクター性のある建物を選ぶのも楽しいと思うんです。僕はドライブが好きなんで、田舎に2軒目があるとしたらその家には車で向かって……。遠くから眺めて“俺、あんなところに住んじゃってるよ!”って思わず笑っちゃうみたいな家がいいですよね。それくらい振り切ったヘンテコな家に住みたいです」

遠くからでも一目でわかる、特徴的なコンクリートの建造物

星空を眺めて“寝る”ことに特化した空間に。

実際の監視塔や水門の画像を見て、「やっぱりユニークな外観がいいですよね」とさらに想像を膨らませる石田さん。都会の2軒目が「遊び」に特化した空間だとしたら、2軒目はどんな空間になるのでしょうか?

会議室のあちらこちらに、石田さんの遊び心が隠されている……?

「周りに高い建物がないから、きっと星空がきれいに見えると思うんです。だから、2軒目の監視塔ハウスは“寝る”ことに特化した家にしたい」と石田さん。

「天井をガラス張りにしたり、開閉可能な屋根にしたり……。部屋の中に寝転んで、満天の星空が見えたら最高じゃないですか。だから、キッチンやお風呂は無くてもいい、そのぶんベッドだけは最高級のものを置きたい。一般的な家づくりはどうしてもコストバランスを考える必要があるけど、2軒目の家は機能を絞り込んでそこに予算を集中させるイメージです。そうやって振り切った考え方をすれば、面白い家がどんどん生まれてくるんじゃないですか?」

部屋のディティールにとことんこだわる。

普段の仕事でも建材や空間商品の新しいアイデアを練っている石田さんは、2軒目の家でもうひとつ実現したいことがあるのだそう。

「例えば、自動車のメーターやスイッチにはグラフィックデザインが使われていて、ボタンひとつとってもキャラクターがあったりするじゃないですか。家にもそういうデザインを取り入れたら面白いんじゃないかってずっと考えているんです。toolboxの入り口にある照明のスイッチも、僕が自分でいろいろ実験しながらデザインを考えて、作ってもらったものなんです」

「自分の家だったら、そこに住みながらいろんな実験ができる。壁紙も床材もスイッチも、もっと楽しんでいいはずなんです。実際に使いながら空間に馴染んでいくものもあると思うし、そこから仕事にもつながるアイデアが出てくるかもしれない。ディティールの部分も自分でどんどんカスタマイズできるのが2軒目の良さだと思うんです」

自由な家づくりが、街や地域を活性化する。

都会と田舎、それぞれの環境に合わせて楽しむ2軒目の家。石田さんの口からは、聞いているだけでワクワクするようなアイデアが次々と飛び出してきました。「すごく変なことをやっているようですけど、こういう自由な考え方もこれからの家づくりのスタンダードになるんじゃないかと思っています」と石田さん。

「住む人の考え方が変われば、都市や地域の活用方法も変わってきます。周辺の環境に合わせた自由な家づくりがもっと浸透すれば、周辺の飲食店や銭湯ももっと盛んになって、地域全体も活性化する。不動産は条件と金額を掛け合わせた相場の世界だと思われがちですが、そういう価値観を壊したい。家の内側から、街や地域を変えていくのが僕の理想なんです。なにより、そういう自由でカジュアルな家の持ち方がスタンダードになったら、生活がもっと豊かになりそうじゃないですか」

 住宅の固定観念にとらわれない家づくりは、自分の生活を豊かにすることはもちろん、周辺の町や環境を巻き込んだ活性化にもつながるーー。2軒目では、そんな自由な家づくりを楽しんでみるのもいいかもしれません。

「自由で楽しい家づくり」は、意外と身近なところから始められるはず

Photography/ 藤井由依(Roaster) ※石田さん1軒目の写真はこちらの記事からの流用です。 Text/ 山本大樹 Illustration/ Yunosuke