DATE 2026.09.10
誰かの家に一歩足を踏み入れた瞬間、「あ、この人の世界だ」って伝わってくることがある。飾ってあるもの、選んだ色、光の入り方。それはきっと、その全部にその人の「好き」を感じられるから。
この連載では、「好き」から始まる家づくりを提案するDoliveが、自分の「好き」をまっすぐ空間に落とし込んでいるクリエイターたちの家を訪ね、彼らがなぜその選択をしたのか、どうやって「好き」をカタチにしたのか、じっくり紐解いていきます。
今回ご登場いただくのは、建築家の加藤渓一さん。生まれ育った八王子を拠点に活動し、実家の隣、祖父母の家があった土地に自邸を建てました。八王子の街中に突如現れる「野性と暮らす家」。自然と対話しながら生み出された空間から見えてくる、加藤さんが思い描いた家づくりのビジョンとは。
- 家づくりのスタイル
住まい手とつくり手が、同じ舞台に立つ - 家づくりアイデア①
身構えずに外に出られるインナーテラス - 家づくりアイデア②
境界ごとに環境をつくり、
山を歩くような身体感覚を - 家づくりアイデア③
揺らぎのある自然素材を多く取り入れる - Custom your own No.00
この家で集めた「好き」を、Doliveの家にカスタム!
住まい手とつくり手が、同じ舞台に立つ

合言葉は「妄想から打ち上げまで」。どんな暮らしがしたいのか。どんな素材で組み立てていくのか。住まい手が、妄想を膨らませて、現場で見て触れる。家づくりのプロセスを閉じたものにしないで、施主を巻き込み、同じ舞台に立つのが加藤さんの建築スタイルです。
「僕個人ではスタジオピース一級建築士事務所を運営しているんですが、仲間たちと『HandiHouse project』を主宰しています。一緒に床を貼ったり壁を塗ったり、手を動かして、お客さんに家づくりを体験し、理解してもらう。家は完成して終わりではなく、暮らしは続いていくものだから。住まい手に理解があれば、空間の生かし方、暮らし方もより豊かになると思うんです」
住まい手が受け身ではなく、能動的に関わることで、選択肢の幅が広がり、家づくりはもっと自由になると、加藤さんは言葉を続けます。

「例えばうちの床にも使っている杉材は、傷つきやすいけど、味があって裸足で歩いても気持ちがいい。施工現場での傷、クレームを避けるために弾かれてしまう素材も、理解してもらえれば、選択肢に入ってくる。傷や揺らぎも、思い出として受け止めていけるようになるんですね」
家づくりアイデア①
身構えずに外に出られるインナーテラス


加藤さんが自邸を設計する際、いちばんに浮かんだ想いは「身構えずに外に出たい」。部屋着で、素足のまま、リラックスした状態で。
「アウトドアが好きだし、日本の豊かな四季を感じて暮らしたいと思ったんです。ただ、野性を家にそのまま持ち込むと、暑くて寒い、住みづらい家になってしまう。神社の大きな庇のある縁側から着想を得て、インナーテラスというアイデアが浮かんだんです」

部屋の快適さも、外の気持ちよさも、あきらめない。2階にあるLDKと地続きにあるインナーテラスは、屋根と壁で雨風を凌ぎ、日差しを遮りながらも、風や光を浴びることができる場所です。
「ガラス戸を開け放って、椅子を置いてテレビを観たり、お風呂上がりに涼んだり。子どもが遊ぶこともあるし、愛犬と戯れることも。雪を眺めたり、雨の匂いをかいだり。自然との距離がちょうどいい。
あと、ガス栓を引いているので、ロースターを置いてよく焼肉をやっています。BBQは準備も片付けも大変だけど、焼肉なら簡単にできる。非日常が日常にある感じが気に入っています」
家づくりアイデア②
境界ごとに環境をつくり、山を歩くような身体感覚を

導線としてこだわったのは、山を歩くような身体感覚。素材、段差、採光によって、空間の境界ごとに異なる空気感を演出しています。
「山を歩いていると、風が抜けたり、光が差し込んだり、景色がひらけたり、さまざまな身体感覚が得られますよね。そうした野性的な感覚を家にも取り入れたくて。効率的に間取りを配置するのではなく、あえて歩かせるような奥行きのある導線を描きました。境界ごとに環境をつくり、グラデーショナルに展開するようなイメージです」
例えば、段差のある広い玄関から、プライベート空間につながる1階の廊下は、木の温もりが漂う仄明るいの森の中にいるようなイメージ
その途中にある黄色いタイルの洗面所は、山の中腹でひとやすみできる水場のような場所。
部屋の扉を開ければ、白い壁に、窓から見える緑と差し込むやわらかい光。寝室には、少しひらけた山小屋についたような安心感が漂っています。

階段を登れば、明るいLDKが広がり、山頂にたどり着いたような開放感があります。
「朝起きると、1階の廊下は窓がないので、照明をつけないと真っ暗なんです。でもそこに、ぼんやり一筋の光が見えて、階段を登るとぱっと明るくなる。この身体感覚は豊かだなあと日々思いますね」
変形した土地を活かすかたちで、3つの長方形を重ねた間取りが生む多様な角度、伴って変わる屋根の高さも、身体感覚にリズムを生んでいます。
家づくりアイデア③
揺らぎのある自然素材を多く取り入れる

野性的な身体感覚を演出するのは、導線だけでなく、素材の力も大きいようです。
例えば床材。1階の玄関と廊下は、麻のような質感で、通気性のよさから脱衣所などにも取り入れられる「サイザル」。凸凹が足裏を適度に刺激して、歩く心地よさを感じます。

連なる個室はナラのフローリングに。2階のリビング・ダイニングとインナーテラスは杉、キッチンと縁側のようなスペースは土の質感を感じるひんやりとした床材に。
「サイザルや杉は冬でも冷たくならず温かいので、裸足でいることが多いですね。自然素材なので、杉が呼吸をして隙間が生まれたりすることもありますが、そういう揺らぎも味わっています」


洗面室やお風呂場の扉の取っ手には石を採用。寝室のベッドボードには、石目のタイルを貼りました。
外壁は、小石や樹皮を混ぜ込んだ素材と「掻き落とし」という手法で、ザラッとした質感に仕上げています。


「荒々しい野性味溢れる外壁にしたくて。土のようでもあり、木の幹のようでもあり、岩のようでもある。ふわっとしたイメージを持って、職人さんと一緒に手を動かして仕上げていきました。雨樋をつける前に雨が降って、その流れが模様のようについているのもいい味わいだなと思っています。山の岩に流れた雨のあとがついたような感覚で」
異なる自然素材を多く取り入れても、統一感があるのは、1階や床など低い位置は濃い色味を、2階や天井など高い位置は明るい色味を使っているから。
“無駄”に潜む、暮らしの豊かさを手放さない

自分たちの手で組み立てることを前提に、例えば柱も持ち運べるサイズのものを複数本採用し、職人たちと一緒に手を動かし続けたという加藤さん。
「自分たちで手を動かした分、やっぱり愛着が湧くし、ちゃんと掃除もするし、これから不備が生じても大丈夫だと思える。効率という側面から見たら、セルフビルドも、導線を長くすることも、自然素材を取り入れることも、”無駄”かもしれません。
でもそこに、思い出ができたり、光や風が感じられたり、肌触りが気持ちよかったり、豊かさが生まれる。そういう無駄に生まれる余白を大事に、これからも家づくりもしたいし、暮らしていきたいですね」

条件ではなく、妄想からはじめ、柔軟な思考で手を動かしながらプロセスも味わう加藤さんの家づくり。効率的に無駄なものを切り捨てるのではなく、自然の揺らぎを受け止める寛容さが暮らしの中に漂っています。
Custom your own No.00
この家で集めた「好き」を、Doliveの家にカスタム!

「野性と暮らす家」で見つけた「好き」を、Doliveの家『No.00』に落とし込んでみたら?!
土のようで、木の幹のようで、岩のようでもある。加藤さんがそう語った外壁の質感を、No.00にもまるごとまとわせました。小石や樹皮を混ぜ込んで、掻き落としでザラリと仕上げた土の肌。グレートーンの住宅街に、ポッと現れる土の色です。雨に打たれ、日を浴びて、少しずつ変わっていく。その揺らぎも、味わいのうち。
庭は、整えすぎない。草木があちこちから好き勝手に顔を出す、土のままの庭です。屋上にも草木を植えたので、育つほどに家そのものが一本の木のように見えてくるかもしれません。横の壁には、小さなベランダも。部屋着のまま、素足で、身構えずに外へ。あのインナーテラスの気持ちよさを、ここにも。
街の真ん中で、自然と隣り合って暮らす一軒。
次はあなたの番。No.00は、どんな「好き」も受け止めてくれる一軒だから。自分だけの「好き」を宿した家を、自由に妄想してみない?
Photo/宮前 一喜 Text/徳 瑠里香 Illustration/ヤマグチ カヨ Edit/中島 直樹






