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大分県杵築市・山香町にある「山香文庫」 DATE 2023.02.21

築150年の古民家へ移住×本に囲まれて過ごせる民泊「山香文庫」としての暮らし

「家は買わなくてもいいし、形だって、誰と住むのかだって自由」。暮らしのカタチが多様化している今、家の使い方自体を見直す人が増えているみたい。そこであなたも、家との付き合い方、住み方、暮らし方を、もっと柔らかい頭で「シン解釈」してみるのはどうだろう? 誰かのユニークなライフスタイルをヒントに、あなたの「こんな暮らしもいいよね」を見つけてみませんか。

今回シン解釈するのは

大分県杵築市の山香町にある築150年以上の古民家で、
本に囲まれて泊まれる農村民泊「山香文庫」。

大分県杵築市・山香町「山香文庫」の間取り
大分県杵築市・山香町「山香文庫」の牧野史和さん・鯨井結理さん
山香文庫

大分県杵築市山香町大字広瀬899
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牧野史和さん

5年前に自身が暮らす古民家で農村民泊「山香文庫」をスタートした。現在は茶園でお茶の生産・販売に携わる仕事をしながら、山香文庫を運営している。

鯨井結理さん

ヨガのインストラクターとしての顔も持ち、全国各地で出張レッスンをしながら、リモートでヨガスタジオの運営のサポートも行っている。

都会から大分県へ移住。
築150年を越える理想の古民家

大分県杵築市・山香町にある「山香文庫」は、築150年越えの古民家で過ごせる農村民泊です。営むのは、ここで暮らすオーナーの牧野史和さんとパートナーの鯨井結理さん。以前はそれぞれ首都圏に住んでいましたが、牧野さんが地域おこし協力隊としてこの地に赴任したことをきっかけに移住し、数年経ってから鯨井さんが合流することになりました。

大分県杵築市・山香町「山香文庫」の外観

「僕は茶園でお茶の生産に携わりながら、彼女はヨガインストラクターとして活動しつつ山香文庫を運営しています。そもそもここに住むことになったのは、就職活動中に見つけた地域おこし協力隊の募集がきっかけでした。当時、大学卒業後は農業を発信する仕事がしたいと思い、いろんな土地の地域おこし協力隊のパンフレットを見ていたんです。そこで見つけた杵築市の城下町の写真がとても素敵で、直感的に応募したんですよ」と牧野さん。

大分県杵築市・山香町「山香文庫」の牧野史和さん・鯨井結理さん

縁もゆかりもない土地でしたが、写真を見て「この町を歩いてみたい」と感じたそう。その後、希望通り農業振興担当として3年間の赴任が決定。働くうちにますますこの土地に魅せられ、移住を考えるようになったといいます。

「自然豊かで人も優しいこの町がどんどん好きになって、任期終了後にそのまま移住しようと決めたんです。そこで暮らす場所を探し始めたときに、ピンときたのが山香でした。山々に囲まれた静かな環境も理想的でしたし、山が香るという地名も綺麗だなと思い、この町に絞って家探しをスタートしました」

大分県杵築市・山香町「山香文庫」の内観

山香文庫の玄関

大分県杵築市・山香町「山香文庫」の内観

縁側があるダイニング

家を探すにあたって、牧野さんには3つの条件がありました。それは高台に位置していること、門前に石垣があること、そして縁側のある古民家であること。地域の方々から情報をいただきながら、何軒も空き家を見て回ったそうです。

「アパート暮らしが続いていたのもあり、広くて情緒がある古民家に憧れがあったんです。石垣については、母の実家に石垣があったので、自分が住む場所にもあればいいなと。ついでに風通しがいい高台にあれば最高! なんて考えていたときに、出合ったのがこの古民家でした。3つの条件がそろっているのと、何よりも縁側に陽が射している情景に感動して。『あ、ここだ』と一目惚れしましたね」

大分県杵築市・山香町「山香文庫」の牧野史和さん・鯨井結理さん

仕事終わりに縁側で日向ぼっこする時間が、一日のなかで一番好きな時間だそう

その後、念願の古民家暮らしがスタート。老朽化が進んでいる部分は改修しましたが、柱や縁側など、もとあった素材は可能な限り生かしています。

「15年以上空き家だったため、古くなった床と天井の一部、和式だったトイレは改修しました。くわえて古びた建具を抜いたところに新しく壁も作りましたが、間取りはそのまま。かつては集落のなかでも一番立派な家だったこともあってか、150年以上経ったいまでも使える部分が多いのはラッキーでした」

大分県杵築市・山香町「山香文庫」の内観
大分県杵築市・山香町「山香文庫」の内観

その後、鯨井さんが合流。全国を巡りながら移住先を探していた鯨井さんは、知り合いだった牧野さんと交流を重ねるうちに、ここで一緒に暮らすことを決めたといいます。

「理想の移住先を探していたときに牧野くんが山香を案内してくれたんですが、風が気持ちよくていいところだなぁと。私も旅先ではゲストハウスや民泊を利用することが多く、そこで地域のみなさんと交流するのも好きだったので、ここで民泊をやるのも楽しそうだなと感じたんです」(鯨井さん)

大分県杵築市・山香町「山香文庫」の寝室

それから5年ほど暮らすうちに、2人とも「家」という場所への価値観が変化したといいます。

「これまでの家は、外と切り離された “直線的に囲まれた屋内”という位置付けでした。でも平屋で地に足がつく自然に囲まれた古民家は、外と家との境界線があいまいなんです。家のなかにいても風の音や草の香りがして、五感で自然を感じられる。そんな環境で暮らしていたら、周囲の自然も含めて僕らの『家』だと感じるようになりました」

大分県杵築市・山香町「山香文庫」の縁側

そう話す牧野さんの横で、鯨井さんも「うんうん」と頷きます。

「いまでは外で暮らす生き物と一緒に暮らしているような感覚もあります。冬にやってくる渡り鳥が年々母屋に近い枝に止まるようになったり、虫に近づいても逃げなくなったり、彼らも私たちに慣れてきて。常に何かしらの気配があるから、牧野くんが出かけているときも寂しくないんですよ」(鯨井さん)

大分県杵築市・山香町「山香文庫」の牧野史和さん・鯨井結理さん

「古民家は建物が古いぶん、手入れが必要なところも愛おしいんです。マンションに比べるとほこりが溜まりやすいのでこまめに掃除しなきゃいけないし、外壁や室内の仕切りが老朽化して隙間風が吹くことも。何かと手がかかりますが、手入れをするほどこの家と仲良くなれている気がします」(鯨井さん)

大分県杵築市・山香町「山香文庫」の洗面台

レトロな洗面台も当時のまま

大分県杵築市・山香町「山香文庫」のキッチン

洒落た道具がそろうキッチンは、お客さまと共有

普段は季節の果物を収穫したり、山で摘んだ野草でお茶を作るなど、四季の移ろいに応じた仕事をしながらまったり過ごしているのだとか。

「庭に梅やかぼす、柿など、いろんな果物の木が植えてあるので、柿がなったら縁側で干し柿にして、いい野草が生えてきたらお茶にしようとか、季節の流れに合わせて生活しています」

大分県杵築市・山香町「山香文庫」の縁側
大分県杵築市・山香町「山香文庫」の庭

自分たちの住まいであり、
本に囲まれて宿泊できる農村民泊に

そんな山香文庫は、里山での体験をともなう農村民泊と民泊ができる場所でもあります。牧野さんが農業の発信方法を模索するなかで農村民泊という取り組みを知り、運営するための資格を取得。住み始めてから間もなく民泊を始めたそう。

大分県杵築市・山香町「山香文庫」の内観

宿泊客用のリビングは、本に囲まれた空間

「当初は農村民泊兼、地元の子供たちが集まる寺子屋のような場所にもしたいと考えていたんです。でも、この近くにはほぼ住んでいなくて(笑)。なので小中学生向けの農村民泊&民泊としてのみ運営することにしました」

大分県杵築市・山香町「山香文庫」の本棚

山香文庫という名前の通り、4000冊もの本に囲まれて過ごせるのも醍醐味です。全国から寄贈を募り、児童書から小説まで幅広い本が集まりました。

「もともとは子供たちが楽しめるように本を募ったんですが…いまは宿泊者の方に楽しんでいただけているのでよかったです。本は宿泊者用の寝室とリビングを中心に、ジャンル分けせずに置いています。もとの本棚に戻さなきゃいけないルールもないので、泊まったみなさんに本を動かしていただくことで、レイアウトが少しずつ変化していくのもおもしろいですね」

本棚は、古民家に残されていた箪笥の引き出しや、農家さんからもらったリンゴ箱を再利用。こうしたアイデアは、牧野さんによるもの。

「思いついたら、気ままにDIYしています。本棚の配置や照明に関しては、僕が東京でダンスをやっているときに舞台美術を見てきた経験が生きているかもしれません」

大分県杵築市・山香町「山香文庫」の本棚

箪笥の引き出しを再利用した本棚

最近は小中学生向けの農村民泊よりも、大人やファミリーがメインの民泊としての需要が多いといいます。

「ご予約をいただくペースはだいたい週に1組様で、1〜2泊滞在される場合が多いので、各自の仕事とのバランスも上手く取れています。民泊は1日に2人1組限定で、朝食付き(夕食は別途相談)。家族で泊まりたいという方もいらっしゃるので、お話がまとまれば家族4人で宿泊されることもあります」(鯨井さん)

宿泊者は本を読んだり、畳の小部屋でくつろいだり、牧野さんが焙じたお茶を飲みながらお喋りするなど、思い思いに過ごしています。

「僕たちの寝室以外は共有スペースなので、みなさん好きな場所でゆっくり過ごされていますね。小中学生を迎える農村民泊では何かしらのアクティビティが付くので、その際は僕が携わる茶園の茶葉でほうじ茶を作ったり、近くの野山で柿やかぼすの収穫体験を実施しています」

大分県杵築市・山香町「山香文庫」の内観
大分県杵築市・山香町「山香文庫」の内観

「山香周辺はこれといった観光地がないので、『山香文庫という空間に泊まってみたい』という目的で来る方がほとんど。なのでこの家を起点に旅のプランを立てたり、ノープランのままいらっしゃって、一緒に旅程を相談してから旅立たれることもあります(笑)。あと不思議なのが、仕事を辞めたタイミングで泊まりに来る方が多いんですよ。観光地ではなく暮らしに根ざした日常の場だからこそ、気分転換して気持ちをフラットにしたいときやリスタートの地として選んでいただいているのかもしれません」

大分県杵築市・山香町「山香文庫」の内観

宿泊者用の寝室には、文豪気分に浸れそうなおこもりスペースも

全国から集まる宿泊者と、
互いの経験をシェアする場所

大分県杵築市・山香町「山香文庫」の牧野史和さん・鯨井結理さん

「我が家を民泊として開くことで、この家は僕らとお客さまそれぞれが培ってきた経験や、各自が持つ情報を交換し合う場所になっている」と2人。

「都心では意識しなくてもさまざまな情報を得られていましたが、山香では自ら得ようとしない限り、以前と同じ量の情報は入ってこなくて。心身の健康という意味ではいい作用もありますが、やっぱり刺激がほしくなる瞬間があるんですよね。そんなときにお客さまが来てくださると、みなさんの人生や住んでいる地域、仕事の話も聞けてわくわくするんです」

大分県杵築市・山香町「山香文庫」の牧野史和さん・鯨井結理さん

「1日1組限定なので、じっくりコミュニケーションが取れますしね。山香という土地や古民家ならではの体験とお客さまの経験とを分け合うような時間は、民泊を始めたからこそ生まれたこの家の価値だと感じています」

外から人を迎える農村民泊という暮らし方によって、さまざまな人生経験が行き交う場所としても機能している「山香文庫」。そんなシン解釈は、人生をより豊かにしてくれるヒントになりそうです。

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