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MINOYA,みのや DATE 2022.12.15

築60年の美容室をリノベーション × 同僚3人でのシェアライフ

「家は買わなくてもいいし、形だって、誰と住むのかだって自由」。暮らしのカタチが多様化している今、家の使い方自体を見直す人が増えているみたい。そこであなたも、家との付き合い方、住み方、暮らし方を、もっと柔らかい頭で「シン解釈」してみるのはどうだろう? 誰かのユニークなライフスタイルをヒントに、あなたの「こんな暮らしもいいよね」を見つけてみませんか。

今回シン解釈するのは

「美容室で暮らす」をコンセプトに、築60年の元美容室をリノベーションした3人のシェアライフ。

築60年の美容室をリノベーションした物語

ここはレトロな佇まいの美容室……ではなく、美容室をリノベーションしたシェアハウス「MINOYA(みのや)」。築60年になる木造二階建てのこの家で暮らすのは、同じ設計事務所に勤める櫻井彩(さくらい・あや)さん、吉村梓(よしむら・あずさ)さん、鶴田爽(つるだ・さやか)さんの3人。2019年頃、この物件と出合ったことをきっかけに、3人でリノベーションを手がけて暮らすことになりました。

「美容室で暮らす」というユニークなコンセプトでリノベーションをしたため、シェアハウスになった今も、美容室だった1階の世界観はそのまま。大きなまる鏡と、シャンプー台のあるスペースがこの家の中心となっています。

このシェアハウスのはじまりは、メンバーである櫻井さんが知人と何気ない会話をしていたときのこと。「その方のご両親が持っている物件があって、借り手の美容師さんがご高齢のため退去が決まったので、 建て壊して駐車場にしようか迷っている、というお話をされていて。それを聞いて、ピンときたんです」と櫻井さん。

その場でGoogleマップを使い、外観を見たところ、直感的に「ここで暮らせたらおもしろいんじゃないか」と思ったそうで、思わず「一度見に行ってもいいですか?」とお願いしたといいます。同世代の吉村さんと鶴田さんにも声をかけ、数日後には現地を訪れたそう。

外観も美容室だったときの面影を残すデザインに

「その頃、私を含めて全員シェアハウスに住んでいたこともあって、美容室という背景をベースにしたシェアハウスをつくったら、新しいシェアのかたちが見つかるかもしれないと感じたんです。そこで『リノベーションしてみんなで住まない?』と提案。2人とも即OKしてくれました」

「実際、お邪魔してみたら、全員が『この建物はぜったいに壊すのはもったいないね』という意見で一致して。そのままオーナーさんに相談してリノベーション計画がスタートしました」

1階の大胆なグリーンのボーダーや、美容室ならではの照明など、一般的な住宅には見られないユニークなデザインに心躍ったという3人。より「美容室に暮らす」という未体験のシェアライフに期待が高まったといいます。

美容室の内装のまま、いたるところに鏡があるので同時に身支度できる共用部

「昔ながらのデザインにもワクワクしました。オーナーさんが快諾してくださったので、すぐにリノベーションプランをプレゼンし、補修箇所や色味などの細かいところを打ち合わせしていきました。ここが美容室になる以前、オーナーさんの祖父母が同じ区画で『美濃屋』という商店を営んでいたという話を聞いて。思い出が詰まったその場所の名を残すべく、プロジェクト名は『MINOYA』に、そのままシェアハウスの名前にもなりました」

ロゴは3人暮らしにちなみ、MINOYAのMを3つ連ねたデザインに。髪を整える様子をイメージして、Mの字には動きをつけたそう

「『美容室に住む』というコンセプトをベースに1階は美容室の要素をほぼそのまま残しました。色褪せていた壁をレトロなグリーンのボーダーに合わせてクリーム色に塗り替え、店舗にキッチンを新しく入れたくらいで、間取りもあまり変わっていません。なかでもコンセプトが反映されているのは、美容室の特徴である洗面台や鏡、そしてシャワールームなどの水回りを共用部のメインに配置したこと。洗面台は、シャンプーボウルを再利用しているんですよ」

老朽化していた2階は、3人それぞれの部屋に。「間取り変更をするために天井を解体したら、立派な梁(はり)と上棟式のときに取り付けられた安全祈願の札が現れてびっくり! めちゃくちゃかっこいいね!とみんなで大はしゃぎしたのを覚えています。この味わい深さをデザインにも活かそうとなり、梁がちゃんと見えるよう各部屋の天井は照明を設置してから半透明のポリカーボネートで覆いました。見上げるたびに建物の歴史を感じられますし、ポリカーボネート越しに室内照明がふんわりと灯ることで、部屋を印象づけるアクセントになったんですよ。」

閉じているようで繋がっている、個室の透明な天井

約4.5畳に分けた各部屋には、窓に沿って奥行きのある四角の枠を設置。櫻井さんは作業用のデスクに、吉村さんはテレビ台や本棚として、鶴田さんは集中したいときや、読書する際のお籠りスペースとして利用しているそうです。

「壁を剥き出しのままにしたり、柱も一部を残すなど、2階の部屋でも以前の建物の雰囲気を活かしました。新しく設置した柱と、古い柱のコントラストもなかなかバランスがよくて気に入っています」

鶴田さんの個室には元からあったレトロなベランダも

天井解体時に出てきた安全祈願の札

「みんなで集まる豊かさ」と「個人の時間」が同居するシェアハウス

リノベーションにあたって、最初は3人の担当箇所を決めていたそうですが、完成後に見てみると、ほぼすべての場所にそれぞれの意見が細かく反映された仕上がりに。「美容室に暮らす」「もとの空間を活かす」という共通認識があったからこそ、バラバラに出し合ったアイデアが上手くまとまったようです。

「根底に共通のテーマがあったので、誰かが意見を出した時に『それは美容室だったからできることなのか?』という視点でディスカッションがスムーズに進みました。お客さんがここに座っていたのかも、あそこにホットタオルが置いてあったのかな?と、情景を想像しながら考えるのも楽しかったですね」

アイデア出しの時点から共存する設計フローもMINOYAの特徴

数ヶ月を経て、リノベーションが完了。オーナーさんが「こんなに美容室らしさを残すと思っていなかった」と驚くほど、「美容室に暮らす」というコンセプトが体現された空間になりました。「共有部の中心に水回りがあることで、誰かが顔を洗っている横で1人が朝ごはんを食べていたり、鏡の前でメイクしているなど、空間を共有しながらそれぞれ違うことをしているのがおもしろいですね。普通のシェアハウスのように洗面やキッチンなどがスペースごとに区切られていないので、移動する必要もなく便利です」

「シェアハウスの共有部分は、一般的には『みんなが集まる場所をどうつくるか』という視点で考えがちですが、ここはその逆。同じ空間にいながら各自バラバラのことをやっている。美容室という背景があるからできたことなのかなと思っています」

みんなで暮らす豊かさと、1人の充実感が同居する空間は「今後ほかのシェアハウスに住めるか不安なほど、いままでで一番居心地がいい」と3人。

「シェアハウスの共用部としては珍しい、私物を好きに置ける棚も作りました。誰が何段目を使うといった決まりもないので、お気に入りの香水や雑貨などを思い思いに置いています。こうして共用部に各自のカラーを感じられる場所があるからか、気分的には一人暮らしとあまり変わらないんですよ。ゴミ出しなどの役割分担もなく、気がついた人がやるという感じなので」

美容院のままの棚には、3人それぞれのコスメなどが並んでいます

玄関横には小上がりを設け、平坦なリビングに変化をつけたことで、空間を共有しながら、充実した個人の時間も過ごすことができます。

アトリエと呼んでいる小上がり。リビングと繋がっているようで、空間をうまく区切っています

「このスペースではストレッチをしたりネイルをしたり、ほどよい距離感でのびのび過ごしています。ちなみにここの格子戸は、もともと2階の和室にあった障子の枠を再利用しました。リノベーションを進めている途中で、何かに使えそうじゃない? という話になって。白く塗って小上がりに設置したら、思いのほか洋風な1階のデザインにマッチしたんです」

「そして小上がりの床は、この空間に合わせて特注したもの。フローリングだと住宅っぽさが唐突に現れてしまうような気がして……。 角材を輪切りにしてタイルにように敷き詰める方法を選択しました。その角材は、玄関ドアの一部や2階にある各部屋のネームプレートにも利用しています。同じ素材でも色を塗ったり単体で使うなど、工夫次第でいろんな使い方ができるんですよね」

「3人で暮らすシェアハウス」から、「まちに開かれた空間」へ

MINOYAに3人が住みはじめて約2年。暮らしにも慣れてきたため、少しずつ街に開けたパブリックな場所にしていく計画があるのだとか。

「生活のペースもつかめてきたので、そろそろ外の人に使っていただいてもいいかなと。最近では週末限定で1階を貸し出してみたり、ちょっとずつ家の使い方を変化させています。MINOYAを訪れた人に、私たちが想像もしていなかった使い方を提案してもらえたら楽しいですよね」

偶然の出会いと、シェアハウス経験者だからこそ生まれた「MINOYA」は、これから先、いったいどんな空間に変化していくのでしょうか。地域にもオープンに開いていくことで、「暮らしの場である美容室」から、さらなるシン解釈が生まれるかもしれません。

櫻井彩さん

2016年に設計事務所「株式会社オンデザインパートナーズ」入社。主な作品はシェアオフィス・コワーキングスペース「G Innovation Hub Yokohama」、vivistop 柏の葉リニューアルPJ 「子どもたちが更新し続けるものづくり空間」、DeNAべイスターズ選手寮など。

吉村梓さん

2017年より現職。主な作品にFUTAMATA RIVER LIBRARY、2025年度には、手がけた芹ヶ谷公園 芸術の杜、(仮称)町田市立国際工芸美術館がオープン予定。

鶴田爽さん

2016年より現職。 主な作品に深大寺の一軒家改修「観察と試み」、クライアントと建築家による超DIY 「ヘイトアシュベリー」、バオバブ保育園がある。「模型づくりワークショップ担当」としても活動中。

Photography/安川結子 Text/金城和子 Illustration/蔵元あかり(Roaster)

あなただけの“暮らしのシン解釈“を具現化できる家が誕生!

Doliveから登場した新しい家「No.00」は、住む人らしいライフスタイルを自由に味付けできる家。「家はこうでなきゃいけない」なんてことは一切なく、プレーンなベースのプランにあなたなりの暮らし方や好みのデザインをカスタムすることができます。この記事で登場するさまざまな“暮らしのシン解釈“をヒントに、あなたもあなたなりのアイデアで自由に家づくりをしてみるのはいかがですか?