長野県南箕輪村に「センタクアトリエ」を要するお家を建てた洗濯家の「中村祐一」さん。洗濯に適した家は生活しやすい家でもあるとのこと。では、そんなお家で365日行われる洗濯はどんなものなのだろう。前編に続きお話を聞いた。
中村祐一さん(36)
長野県伊那市のクリーニング会社「芳洗舎」3代目。「洗濯から、セカイを変える」という信念のもと、2006年から洗濯アドバイザーとなり、現在は「洗濯家」。「衣・食・住」における「衣文化」の革新に取り組む。「洗濯王子」の愛称で、テレビ・雑誌など各種メディアにも多数出演。
アイロンがけから朝は始まる
中村さんの朝はアイロンをかけるところから始まる。中村さんは言う。「家に帰るまでが遠足で、アイロンがけまでが洗濯」。洗濯機を回して、干したら終わりではないのだ。そんな中村さんの洗濯の様子を見てみよう。
アイロンのスチームが朝の光に照らされて綺麗!
―洗濯は朝から?
- 中村さん:
- 僕は毎朝アイロンがけからスタートとします。家が仕事場なので、切り替える意味もあると思います。そして、掃除機をかける感じですね。
―掃除機もこだわっていたりするんですか?
- 中村さん:
- この部屋にはこの掃除機、みたいなことはないです!きれいにすることにこだわるというより、アイロンや掃除をすることで気持ちを整える感じです。
―なるほど。アイロンもたくさん持っているんですね!
- 中村さん:
- どのアイロンがいいのか、試すためにいろいろ揃えていますが、僕のお気に入りは「ティファール」です。
―なぜですか?
- 中村さん:
- 「熱」の扱いが上手いです!これは、さすがポットやフライパンなどもつくっているメーカーだなと思いますね。
―料理など、他の家事もやられますか?
- 中村さん:
- コーヒーにはこだわっています。焙煎からやるんです。実家がコーヒー屋だったら、コーヒー王子になっていた可能性もあります!
コーヒー王子…なんかかわいい!
―そういったこだわりについて奥さんから何か言われたりは?
- 中村さん:
- どうぞお好きに、という感じです。コーヒーを焙煎してキッチンを汚したままにしておくと、怒られることはありますけどね(笑)。
王子は年中部屋干し
―えぇ!晴れた日の朝とかが洗濯日和じゃないんですか?
- 中村さん:
- 基本的に僕は一年中部屋干しです。この部屋に干します。
一年中部屋干し!?
晴れていても雨でも部屋干し。部屋干しをする前提で、干すところが備え付けで設計されている
―部屋干しは雨の時の苦肉の策だと思っていました
- 中村さん:
- 外のデメリットは紫外線もそうですし、天気にも左右されますし、外の汚れもくっつくわけです。
―部屋干しって臭くなる代名詞みたいなとこないですか?
- 中村さん:
- 部屋干しで臭くなるのは、汚れが落ちていないからです。干し方や干す場所が原因ではなく、洗い方が原因です。
まじすか…
- 中村さん:
- 臭わなくなる方法の1つとしては、皮脂などのアブラをしっかり落とすことですが、お湯で洗うのが手っ取り早いです。あとは、最近は柔軟剤が過剰になりがちなのも問題ですね!
カレーのシミは消える
―今後は部屋干ししかしないことにします!
- 中村さん:
- そういうわけでもないんです。たとえば、カレーのシミがついた時は、外に干します。紫外線でシミが消えるので。ケチャップのリコピンとかも消えますね。
―ケチャップ消えるんですか!
- 中村さん:
- 普通に洗って外に干せば消えます。紫外線に当てることが大切なので、都内だと2、3日じっくり干していたらいいと思います。
干すだけとか最高!
―あのシミは消えないものと思って、家でミートソース食べる時は上半身裸で食べていました。冬のミートソースはキツいんですよ、上半身裸で寒いから!
机には歯ブラシもあれば、プロ用のシミ抜きガンも並ぶ!
新しい汚れに出会うとウズウズ
―汚れにイラッとすることはないですか?
- 中村さん:
- どっちかというと試したくなってウズウズします!
―家族でカレーうどんを食べに行く時に、わざと白いシャツを着て行くとか?
- 中村さん:
- そこまではしないですけど、汚れに対してポジティブです!
そんな人はじめて…!
- 中村さん:
- そもそも白い服だろうと汚れることを気にしないですし、子供に対しても「なんで汚したの!」みたいなことはないです。新しいシミだとウズウズします!
洗濯を待っている時も楽しそうな王子
―愛というか変態的ですね!
- 中村さん:
- そうですか?(笑)子供が2人いるのですが、成長で汚れが変わるのが面白かったりします。小さいうちは食べこぼしとかですごい量の汚れがつきますが、徐々に少なくなって来る。
―なるほど!
- 中村さん:
- そしたら、絵の具の授業が始まり、習字が始まり、汚れが変わるんです!成長する喜びと、汚れが変わる喜びがあります!
私は独身だから全く共感できないけど、そうなんですね!
―ちなみに、落とせないシミってあるんですか?
- 中村さん:
- 汚れ自体だと墨が落としにくいです。上の子が今年から習字が始まっていよいよきたかと!ウズウズしています!
同じような白いシャツも実は違うブランドで、こだわりを持って選んでいる
そば打ちみたいな洗濯を
―洗濯が好きでなくても、楽しくなる方法とかありますか?
- 中村さん:
- そば打ち的な洗濯をして欲しいと思っています。
そば打ち?
- 中村さん:
- そば打ちってお父さんとかはこだわるじゃないですか?でも、毎日の料理でそば打ちってやらない。
―絶対にやらないですね、やりたくもないかも!
- 中村さん:
- 洗濯にもそういうのがあって、毎日はやらないけど、日曜日はシャツを真っ白にする洗い方をやるとか。
お湯をためた桶に粉末洗剤を溶かし、シャツをつけておくと襟汚れが簡単に落ちるそう
- 中村さん:
- シャツだけなら桶一つで済むので楽です。脱水だけ洗濯機に任せるのがオススメです。
話を聞けば聞くほど、センタクアトリエのような家が欲しくなった。衣食住の衣なので、洗濯は切っても切れないポジションにある。そのような大切なものだから、機能的な方が便利だし、同じやるなら美しくしたい。ただ今はそんなお金はないので、とりあえずそば打ち的洗濯を始めてみようと思う。
Photography/上原未嗣 text/地主恵亮