DATE 2025.06.26

No.00 meets you 白いプレーンな箱に自分の好きを描く | vol.1 バリスタ・林翔

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まるで無地の白Tシャツのように、何とでも合う家「No.00」。Doliveがつくったこのシンプルでプレーンな家をキャンバスに、各分野で活躍するクリエイターたちが“自分らしい家”を描き出します。

「もしこの家を自分が建てるなら?」
場所、素材、色、インテリア。何も決まっていないからこそ、暮らしのイマジネーションがふくらんでいく。与えられた図面も、決まった正解もない。「No.00」という家をキャンバスに、想像をふくらませて家づくりを考える企画です。
今回は桜新町でコーヒースタンド「Autumn」を営む林翔さんと一緒に、プレーンな白い箱のようなこの家を、どんなふうにデザインにするのか考えてもらいました。
No.00

どんなスタイルにも染まってくれる、白いキャンバスのような家。「No.00」は、好みや暮らしに合わせて自由にデザインできる、プレーンで柔軟な“自分らしい家”の出発点となるDoliveのオリジナル住宅です。

「いいと思うものだけ」でできた店。

桜新町でコーヒースタンド「Autumn」を営む林翔さんが、自身の店づくりでいちばん大切にしたのは、“自分が今いちばんいいと思えるもの”をちゃんとつくること。

コーヒー店での勤務のほか、家具屋で働いていた経験、大学で学んだプロダクトデザインの知識。そして、洋服や映画、本から自然と培ってきた感覚を、無理に飾ることなく空間に落とし込んでいます。

なかでも特にこだわったのが、カウンター。「一番いいカウンターを作ってください」と依頼したのは、家具屋時代の師匠でもある職人。オーク材を贅沢に使い、木目を活かしながらもあえて濃い色で仕上げたカウンターは、「無垢材の色を活かす仕上げが流行ってるけど、逆をいきたかった」と林さんの個性がはっきりと表れている。
「Autumn」の店内。床はオリジナルのパーケット床。北海道にあったデッドストックのタモ材を職人に依頼して作った特注フローリング。
そんなこだわりの床の参考にしたのは、東京都庭園美術館の床。もともと皇族朝香宮家の自邸として建てられたため建築意匠がとても優れており、国の重要文化財に指定されている。

店の構造も一般的なコーヒーショップとは一線を画す。いわゆる“フードを選んで、レジを通って、奥で受け取る”という動線は、あえて無視。店が回りづらい、席数がとりづらいなどのデメリットは承知の上で、「お客さんがどう動くか決めすぎない」ゆるさを大事にしたそう。

「クラシックは不滅だ」という映画『マイ・インターン』のセリフが印象に残っているという林さん。流行に左右されず、「10年後に見てもかっこいいか?」という視点で素材を選び、時間の中で価値が失われない空間を目指しました。

海のそば、土でできた家?! 林さんが思い描く理想の家とは。

そんな林さんが「No.00」を初めて見たときの印象は、「豆腐みたいな家」。
真っ白で四角くて、とてもプレーン。それが、どんなスタイルにも染まってくれそうな“余白のある箱”に見えたんだとか。

「もしこの家を自分が建てるなら?」というテーマで、まず思い描いたのは“場所”のこと。理想は、海の近く。海沿いの高台に、ぽつんと一軒だけ建っているような、ちょっと別荘っぽい雰囲気に憧れてるんだそう。

家のディテールはまず外観から。
家の外観は、中東やモロッコの建築にありそうな土の質感のあるテラコッタ色の壁に。「かたちは四角く、屋上は絶対に欲しい!」と話す林さん。期せずも「No.00」のカタチが好みだったようです。家の構造は2階建て。だけど部屋は細かく区切らず、吹き抜けのワンルームに。仕切るのはトイレとお風呂くらいで、あとはできるだけ広々と使いたいと思い描きます。

外観のベースに参考にしたのは、中東やモロッコで見られる伝統的な住宅様式。「小さな窓がポツポツ空いている感じ。そんな雰囲気がなんだか面白くて、好きなんです」。主に土でできた壁は厚く、断熱性が高い。また、暑さや日差しを防ぐために窓は少なめで小さくなっている。
玄関まわりには、ガレージのような大きな扉を採用。天気のいい日には全部開け放って、内と外がつながるような開放的にもなる。「バワリーキッチンっていう、よく通っているカフェがあって。そこも天気のいい日はガレージ扉を開けて、テラス席と一体になるんです。あの感じがすごく好きで」。
「あと、角の処理はすごくこだわりたいですね。大正時代の建物が好きなんですけど、角がきっちり直角じゃなくて、自然に丸く仕上がってるんです。それがすごく良くて、自分もそうしたいなと思っています。」

続いては内観。「床も壁も天井も、ぜんぶ外観と同じ素材で仕上げた内装。土っぽい質感のある素材に、自然光の濃淡で自然とグラデーションになるような空間が理想ですね」と林さん。家具は低め、配置は余白を活かしてぽつぽつと。木やガラス、ウールなど異素材をミックスして、“揃えすぎない”ラフさも大事にしたいそう。照明は必要なところだけに置いて、光と影がちゃんと意味を持っている空間が好きなんだとか。カーテンやラグも、透け感や質感にこだわりながら、少しずつ“自分らしい空間”を整えていきたいと想像は膨らみます。

林さんがNo.00をキャンバスに思い描いた、理想の家のカタチがこちら

土の外壁と装飾

中東の建築に影響を受けた、土のような質感のテラコッタ外壁。 潔い四角いかたちに、少しだけ角の丸みや小窓を加えて、やわらかな印象に。

手仕事を感じさせる、角の処理

大正時代の建築に見られる、少し丸みを持たせた角。ソリッドな素材感にゆるやかさが加わることでこの家の空気をやわらかくしてくれる。

ガレージのようなリビング

FIXの窓ではなく、ガレージ扉のような開口部。お気に入りのカフェで見たあの開放感を、自宅の玄関にも。

His 3 Essential Items for No.00
ひとつ目は椅子ですね。ヴィンテージのイージーチェアで、真鍮の脚がついてるやつ。うちの隣にあるアンティーク家具屋「stop the alarm」で見つけました。店主いわく「これまで直してきた中で一番かっこいい」と言ってたくらいで、脚が真鍮で、角の取り方とか細部の造りもすごく綺麗。ちょっと高かったけど、これは奮発して買いました。
これはオーダーで「ARKESTRA」に作ってもらった鏡。フレームのサイズもセンチ単位で調整しました。大きすぎると視野に収まらなくて、ガラスを見てるだけみたいになるので、自分の視線にちゃんとおさまるサイズ感を考えました。面取りもしてあって、既製品にはない仕上がり。世界に1枚しかない、自分のための鏡という感じです。
あとは……ぬいぐるみですかね(笑)。yuya inagawaさんっていう作家さんのうさぎのぬいぐるみで、「シュヴァルツくん」って名前をつけてます。僕がその作家さんに「うさぎ作れますか?」ってオーダーしたのが最初で、今ではラインナップにあるけど、それを見るたびに「これ、俺が最初だったんだよな」ってちょっと誇らしく思ってます。

想像からはじまる、暮らしのヒント。

「No.00」って、本当に真四角で、真っ白で、装飾もない。
でもだからこそ、「ここに何を足すか」「どう暮らすか」がすごく想像しやすかった。まるで自分の想像力を試されてるみたいで、どんどん欲が出てきた、と林さんは笑う。

そうやって妄想を重ねるうちに、自分の価値観や“好き”が少しずつ浮かび上がってきた。
しかも不思議と、今の自分の家やお店のことまで頭に浮かんできて、「あの照明、実は好きだったな」とか、「これってすぐにでも取り入れられるかも」なんて、現実にもフィードバックできそうな気づきがいくつもあったそう。

「妄想って、それだけで終わるものじゃないんですね。自分の価値観とか、理想の暮らし方を確認する手段でもあるなって思いました」。

林翔さん

「Autumn」店主。コーヒースタンドで10年ほどバリスタとして勤務後、2022年11月に自身のお店「Autumn」をオープン。

Illustration/ 五味健悟 Edit, Text/ 中島直樹

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