NIGEMIZU
眺めのいい海沿いの家でアオイの殺害計画を立てる、謎の女ユウキ。 不穏な計画はユウキの妄想の中で順調に進むが、予定よりも早く到着したアオイは、その奔放な行動で計画を狂わせていくー。 各方面で活躍する、松田ゆう姫とアオイヤマダが織りなすニューサスペンス。
作品ページ
『NIGEMIZU』の物語は、不穏な計画を胸に「No.00」を訪れた謎の女・ゆう姫と、そのターゲットである自由奔放なアオイが、現実と妄想の狭間を行き来する一日を描いた“ニューサスペンス”。緊張感のなかにユーモアがにじむ、不思議な余韻を残すストーリーです。
注目したいのは、「No.00」という家そのものが、ストーリーの一部として“機能している”という点。単なる映像の背景ではなく、感情の起伏を映し出すキャンバスとして、空間が物語を引き立てています。
無垢のフローリングに、まっ白な壁。そして大きな窓から差し込む自然光。余計な装飾のない「No.00」だからこそ、ぽつんと佇む登場人物の存在感が際立ちます。まるで何が起きてもおかしくないような、そんな緊張感が家の隅々に漂っているようです。シンプルな構造だからこそ生まれる「余白」が、観る者の想像力をかき立てサスペンスの舞台として強い効果を発揮しています。
また、空間がプレーンだからこそ、そっと置かれたインテリアのひとつひとつが際立ちます。昆虫の標本やアクリルの小物など、どこか不穏でミステリアスな空気感が、物語のトーンに絶妙にマッチしています。
2階の大きなFIX窓から見える景色も、「No.00」ならではの魅力のひとつ。
「ここ、ほんとに地平線しか見えないんですよ。だから急遽セリフに『地平線』って言葉を加えたんです」と松田さんが語るように、空間デザインがストーリーに影響を与える場面も。海沿いなどに建てれば、実際に窓から水平線を望むこともできる、そんな「No.00」のポテンシャルが、今回の映像にも活かされています。
さらに、空間の導線も、物語を動かす重要な仕掛けに。一階と二階をつなぐ吹き抜けの階段、土間仕様の広いエントランス、大開口のシルバーサッシといった構造が、予期せぬ来訪者の登場や場面転換を自然に生み出しています。
「家に任せたというか、空間の力を信じて撮ってた」と語る写真家・磯部さんの言葉どおり、演出の源には『No.00』の建築的な魅力が影響しているようです。
リビングとダイニング、そしてアイランドキッチンが一体になったレイアウトも、登場人物たちの自然な動きを後押し。料理をしたり、一緒に食卓を囲んだりするシーンがスムーズに展開します。無垢材の床の滑りすら演出の一部に。「ただスルスル滑ってただけじゃなくて、ちゃんと意味あるのよ」と語るアオイさんの言葉からも、空間からのストーリーへの影響が感じられます。 「No.00」のプレーンな佇まいだからこそ、このように作品のジャンルやトーンに合わせたアレンジが可能。シンプルであることは、何にでも染まれる強さなのだと、『NIGEMIZU』は教えてくれます。
本作のプロデュースと主演を務めたのは、音楽ユニット「Young Juvenile Youth」のボーカルとしても知られるアーティスト・松田ゆう姫。彼女が手がけた未発表曲『A GUY』から着想を得て、『NIGEMIZU』の世界観は生まれました。
演出を担当したのは、写真家・磯部昭子。本作は彼女にとって初の映像演出作品。写真家ならではの視点で切り取られた構図や、光の使い方が印象的です。脚本は松田・磯部らによる共同制作。
さらに、『NIGEMIZU』はアカデミー賞公認のアジア最大級短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア 2025」にもノミネート。余白を大切にした住宅空間と響き合い、観る者に静かに、しかし強く訴えかける作品となっています。
眺めのいい海沿いの家でアオイの殺害計画を立てる、謎の女ユウキ。 不穏な計画はユウキの妄想の中で順調に進むが、予定よりも早く到着したアオイは、その奔放な行動で計画を狂わせていくー。 各方面で活躍する、松田ゆう姫とアオイヤマダが織りなすニューサスペンス。
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