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片桐はいり, キネカ大森 DATE 2022.01.31
「家ってもっと、シミュレーションゲームみたいに自由に、楽しく作ってもいいんじゃない?」 こんな想いを胸に、さまざまな分野で活躍するゲストが「本当にほしい家」のイメージを探すお手伝い。連載「妄想HOUSE」は、あらゆる固定観念から自由になって、住む人の「好き」のみをベースにした家づくりのアイデア集です。

第5回のゲストは、『シン・ゴジラ』の“お茶出しおばちゃん“や『勝手にふるえてろ』の風変わりな隣人……。どんな作品に出演してもインパクトを残す俳優・片桐はいりさん。ホームグラウンドである映画館への愛たっぷりな、理想の家を教えていただきます。
片桐はいりさん

1963年1月18日生まれ。東京都出身。最新出演映画『ウェディング・ハイ』が2022年3月12日公開。NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』が放送待機中。
今回のインタビューは、常連客でもぎり時々スタッフとして通う映画館・キネカ大森で行われた。

長年憧れていたハワイの古い映画館に住みたい!

映画館スタッフに扮する片桐はいりさん

片桐さんは、国内外の映画館に精通した“映画館ハンター“でもあります。日本はもちろん、ロサンゼルスやバンコクなど世界中の映画館を見てきた片桐さんが、「住みたい!」と10年もの間思い続けてきた劇場があるのだとか。それは、ハワイの海岸に面した崖の上にある古い映画館。

「お仕事でハワイを訪れた際に出合いました。崖の上から海がブワーッと見える所で、まぁ絶景。そこに一軒家スタイルでポンと映画館が建っていて素晴らしい立地なんです」

インタビューを受ける片桐はいりさん

「『For Sale』と書いてあったから、友だちに『買いませんか?』と勧めたくらい。建物がかまぼこのようなドーム型なのもたまらないですよね。私が昔、通っていた映画館もこの形だったんです。だから、私の妄想ハウスもかまぼこ型の劇場にしたい!」

ちなみにハワイ島には「ハイリ・ストリート」という地名があるんだとか! 片桐さんの夢を叶えるのに、これほどぴったりな場所はありません。「ハイリ・ストリートのハイリは『Haili』。ハワイ語で“愛おしい思い出”という意味があるそうです。それにあやかって、妄想ハウスの名前をHAILI THEATRE(ハイリ・シアター)にするのもいいですね」

冒頭から“映画館愛”が止まらない片桐さん。「歴史がある場所が好きですね。地面からの“気”といいますか、人が踏み固めた土地だと思うと愛着がわきます。だから映画館に住むにしろ、新しく建てるんじゃなくて元からあるものを買うのが理想ですね」

「感動したのは、このエリアの映画館は日系の方が建てているものが多いということ。多くは農家の移民としてハワイ島に来て、毎日大変な仕事をしてる。彼らがお休みの日に『日本の風景が観たい』という理由で日本映画を上映するための映画館を建てて、故郷に思いをはせていた……そんな話を聞くと、涙が止まらなくなっちゃいます」

太陽と暗闇を両獲り!
スクリーン裏で海を見ながらくつろぎたい

話を妄想ハウスに戻すと……「コロナ禍になるまでは、『家で過ごす』ことを重視していませんでした。家にソファもないくらい(笑)。外出自粛期間に、部屋にずうっと閉じこもっていても全然落ち着かないし、屋外で感じられる空の大きさと太陽の光が自分にとって重要だったと改めて気づきました」と照れ笑いを浮かべる片桐さん。

「島の映画館に住めたら、太陽と暗闇をいっぺんに手に入れられるんですよ。目の前が海だから開放感がすごいし、明るくて、夕焼けもものすごくきれいに見える。そして家である映画館に入れば、暗闇が待っている。私にとっては夢の住まいです」

妄想エンジンがかかってきた片桐さん、「この立地だとスクリーン裏に海があるわけだから、テラスを作ってソファかハンモックを置いて、美しい景色を堪能したいですね」

勤務先でもある映画館キネカ大森の映写室でよくセリフを覚えたり、執筆をしているという片桐さん。「映写機のカラカラ……という音を聴いていると、すごく集中できるんです。ちょっと暗いのもちょうど良くて。私にとっては勉強室であり書斎みたいな場所なので、妄想ハウスにも同じ使い方ができる映写室がほしいですね」

天井が開いて即席・野外上映!
IMAXやフィルム上映も

キネカ大森にいる片桐はいりさん

「子どものころから、天井が高いところが好きだったんですよ。体育館とか、教会とか。修学旅行で東大寺大仏殿に行ったときなんか、感動のあまり一人で涙ぐんでいました(笑)」と語るほど、大きな空間への思い入れが強い片桐さん。

「なので妄想ハウスも、できるだけ天井が高いほうがいいですね。IMAXが楽しめるくらい……といったらビル数階建ての高さですが、天井が高かったらいいなあ。さらに『サンダーバード』に出てくる秘密基地みたいに、天井が開閉するのはどうでしょう?」。

「夜は真っ暗になるわけですから、天井を開けて“星空映画館”みたいにするのもいいですよね。夕暮れのマジックアワーには、風景に合う映画を上映しても面白そう……」。

「でも、そんなこと可能? それ以前に興行として成り立つのかしら……」と真面目に考え込んでしまう片桐さん。映画館で働いているスタッフさんならではの視点ですが……今回はいいんです、妄想ですから! 自由に夢を語ってください!

「今は激減してしまった35mmフィルムの上映もやりたいですね。『はいりさんが映画館を開くんだったら、やりますよ。映写機に触れるなら、どこでも行きます』という映写技師の友だちがいっぱいいるので、声をかけられたらいいな」。

2階席を自分専用ダイニングに! 
映画と観客を肴に一杯

「家を映画館にするなら、一般開放は当然。私も“もぎり”に立ちますよ」と意気込みます。「お客さん向けのフードは食べ放題にしたいですね。ハワイアンフードもいいし、インド料理の日もあったら面白そう。その日はインド人しか来ません!みたいな(笑)。踊りながら観てくれていいし、子どもが自由に走り回れる日もあっていい」

映画館フードに関しては、キネカ大森での思い出があるそう。「台風でお客さんが来られなくなってしまった日があって。『はいりさん、1人も入っていないけどフィルム回しちゃったから、もったいないし観ていけば?』って言われて、『よし、じゃあテーブルを出して、ご飯を食べながら観よう』って劇場内でカレーを食べながら観たんです。あれは楽しかったですね」。

「だから妄想ハウスでも2階席を自分専用のダイニングにして、そこで映画とお客さんを眺めながらご飯を食べたりお酒を飲んだりしたいですね。客席を眺めて『あ、今日も常連さんが来てる』とか思ったりして」。

「私が理想としているのは、やっぱりこういった大きな映画館。そこで、みんなで一緒に楽しみたい。この妄想ハウスが実現して、世界中から映画好きが集まる“聖地”になったらいいですね」

ドアから顔を覗かす片桐はいりさん

片桐はいりさんが長年通い続けて、時間が許す限りスタッフとして立ち続けている東京都・大森にある映画館「キネカ大森」。キネカ大森で映画を観ていると偶然片桐さんに出会うかも。

キネカ大森

Access:〒140-0013
東京都品川区南大井 6-27-25 西友大森店 5F
Tel : 03-3762-6000
JR京浜東北線[大森駅]東口 徒歩3分
HP

Photography /kento mori Text/SYO Illustration/HONGAMA