林 哲平 PROFILE
BETSUDAI Inc.TOKYO / CEO
広告、出版系の企業にて映画・ファッション業界をはじめ、さまざまな企業の広告・プロモーションに携わった後、新築規格住宅のフランチャイズ『LIFE LABEL』、住宅エンターテインメントメディア『Dolive』の2つのネットワークの主宰として、両ブランドの商品開発から広告・マーケティングまでを手掛ける。 2020年4月には「株式会社社外取締役」を設立。オンラインサロンの運営、様々な企業や商品のプロデュースを仕掛ける。
BETSUDAI Inc.TOKYO / CEO
広告、出版系の企業にて映画・ファッション業界をはじめ、さまざまな企業の広告・プロモーションに携わった後、新築規格住宅のフランチャイズ『LIFE LABEL』、住宅エンターテインメントメディア『Dolive』の2つのネットワークの主宰として、両ブランドの商品開発から広告・マーケティングまでを手掛ける。 2020年4月には「株式会社社外取締役」を設立。オンラインサロンの運営、様々な企業や商品のプロデュースを仕掛ける。
GORDON MILLER(ゴードンミラー) / ディレクター
グラフィックデザイナーなどの経験を経て、2019年からGORDON MILLERに参画。以降ブランドディレクターとして、ブランディングの統括や制作物のデザイン、PR、プロダクト監修など多岐にわたる領域を一手に引き受ける。
−ここからは、実際のパースを見ながら、今回のガレージハウスのディテールについて訊かせてください。まず外観についてですが、今回、平屋タイプと3階タイプの二種類から選べますよね。それぞれこだわったポイントについて教えてください。
じゃあ平屋タイプから。真ん中にガレージをつくろうって最初に言ったのは、僕でしたっけ?
そうですね。たしか、林さんの大分のご自宅の“通り庭”が話に挙がりましたよね。
そうそう。通り庭というのは、京都や大阪の町屋に見られるような、家の表から裏口まで続く土間の通路のこと。ソトでもナカでもある空間で、使い方もさまざまです。僕の祖母が暮らしていた家も、まさにそのようなつくりになっていて。そこから着想して、ガレージを家の中心に据える設計にしたんです。家とカーポートを一体化したガレージハウスというかたちは、土地を広く取れない都市部においても合理的ですよね。
ーもうひとつ、今回のプロジェクト名である「THE HOUSE GARAGE」ですが、世間一般だとガレージハウスという言い方かなとも思うのですが、由来についても教えてください。
これは我々GORDON MILLERから提案させてもらったんです。社内でプランを見ながら皆でネーミング案を考えていたときに、ふと「なんかガレージの中に家があるみたいだね」ってポツリと言ったメンバーがいて。たしかに従来のように、家にガレージが付いてるのではなく、家そのものがガレージみたいだなと。
なのでその一言から発想を得て「THE HOUSE GARAGE PROJECT」というネーミングになりました。
−今回は3階タイプもあるということですが、これはとくに十分な土地を確保できない都市部に向けて用意されたプランということでしょうか?。
そうですね。平屋を建てにくい方に向けてというのもありますが、
もうひとつ、この家は“スケルトン・インフィル”にもとづいて設計しています。住宅は、スケルトン(駆体)とインフィル(デザイン)を組み合わせることによって完成する、という考え方のことです。スケルトンを選んで、インフィル部分は自分好みのデザインを落とし込む。その組み合わせによって、より自分らしい住宅ができあがるんです。今回でいうと、ガレージが1階の中心部分にあることは踏襲しつつ、そこにGORDON MILLERの世界観を平屋と同じように表現しています。
−なるほど。そのスケルトン・インフィルの考え方が根底にあるんですね
これは今回のガレージハウスのみならず、家づくりにおけるDoliveの思想です。注文住宅や建売を買うといった選択だけではない、ユーザー主導の家づくりを、広く実現していきたいと思っていて。今回のガレージハウスは、まさにその考えのフロントに立って、体現していく住宅になったという自信もあります。
−躯体が変わるとデザインの表現も難しい点が出てきそうですが、3階建プランを考える際に工夫したポイントはありましたか?
平屋タイプは、家のどこにいても、ガレージとの距離が必然的に近いんですよね。3階建にするときには、その距離感、ガレージが家の中心にある具合を再現するのが難しかった。解決策のひとつとして、スキップフロアを採用したことで吹き抜けのような開放感が生まれ、そうすることで、ガレージとその他の空間とのあいだにつながりを持たせました。
−内装のイメージソースや、用いる材をどのように選んだかなどについても訊かせてください。
GORDON MILLERのラボで使われている材に近い雰囲気のものを選んだりはしましたね。家をつくるときは住宅用の既製品しか使えませんから、あくまで近い素材ということですが。
ただ、そもそも、うちのラボに必ずしも寄せなくてもいいのではないか、とも考えていました。既製品の縛りがあるなかで、Doliveさんからいろいろと提案していただいたものを見ながら、一緒に考えていきました。
−“ガレージハウス”という言葉の持つイメージよりも、リビング空間からはぬくもりある印象を受けます。ガレージとそのまわりの空間とが、いい塩梅で調和しているような。
ガレージの無機質なイメージに引っ張られすぎないよう、きちんと“家然”とするようにとは、つねに意識してもらいました。たとえば梁の素材には、あえて木の破片をセメントで固めて作った素材を使っていたり。ところどころにやわらかな手触りのある材を使ってもらいました。ヴィンテージ家具にもモダンな家具にも馴染みよい空間になっていると思います。
−おふたりが、もしこの家に暮らすとしたら。どのようなガレージライフを送りますか?
家族や友人たちと、つねにつながっている場所にしたいですね。友人やお客さんが来れば、ガレージを客間として使ってくつろぐ。家族のあいだなら、リビングだとやりにくいこととか、広く使いたいことなんかをガレージに持ち込むような気がします。たとえば大きなスクリーンを立てて、そこで子どもたちがYouTubeを観てくれれば、ママ、パパとしては安心ですよね。
−小さな子どもたちにも目が行き届きますね。
妻はギターを弾くので、子どもたちがガレージで遊んでいる脇で練習するかもしれない。「お父ちゃんがガレージにいるなら」って、子どもたちもそこで宿題をするようになるかもしれない。
−自分の部屋にこもってなにかをするのではなく、昔のお茶の間のように、家族団欒の場としても機能しそうですね。“ガレージ”とひとくちに呼んでしまうのも、もはや違う気がしてきました。
帰ってくるときにも出て行くときにも、つねにガレージが動線になっているのがいいですよね。
−とくに、家の真ん中にガレージがある平屋タイプは、より象徴的な意味合いも感じさせますね。猿渡さんはいかがでしょう? ここに住むとしたら、どのようなガレージライフを送りたいですか?
あまり参考にならないかもしれませんが……。僕は自分の車が好きでたまらないので、家のなかからつねに車が見えているというだけで興奮してしまいます(笑) あらゆる角度から眺められますからね。平屋タイプでも3階建タイプでも、「この角度から見られるの?」というのが、なにより楽しみです!(笑)
猿渡さんはけっこうデカイ四駆に乗ってますよね。
趣味でサーフィンをしますし、遠出することもわりと多いんですよ。仕事柄、荷物をいろいろ積むこともありますし。
そうだ、推奨しているかは置いておいて、キャリア付きの車なら、ロフトから荷物を投げ込めるかもしれませんね(笑)スライドドアのミニバンなら、両側のドアを開けておくことで部屋に開放感が生まれそう。車に腰掛けて、リビング側の家族としゃべったりもできますね。ひとの集まり方も、無限に広がりそうです。
−車を、一種、家具のように扱うというか。
個人的には、家のなかにいても自分の車のシートに座りたいです(笑) そうやって車が生活に近くなっていくと、それまで車にそれほどこだわりのなかったひとも、もしかすると、いい車にしたいと考えるようにかもしれませんね。
たしかに、買い換えるかもですね。
−同じように、ガレージでライフスタイルが拡張されれば、新しい趣味を持つようになったりするかもしれませんね。暮らし方も選ぶモノも、変わっていきそうな予感がします。
たぶんここに暮らし始めると、家でくつろげばいいのに、わざわざ庭に出て焚き火をしたりするんですよ。車が家のなかにあるっていうのも、どう考えても異常ですよね。でも、そういった無駄がいいですよね。ワクワクする。
わかります。
ともすればセンスが必要な理想のライフスタイルを、だれもが簡単に叶えられるように、5年後も10年後も楽しめるように。このガレージハウスがその手助けになればと、そう思っています。