土井地博 さん
ビーアット代表取締役/ビームス 執行役員 コミュニケーションディレクター
約20年PR宣伝を担当し現職に至る。現在は同社初の合弁会社である「株式会社ビーアット」のCEOや国内外の企業、ブランド、人とのコミュニケーションを繋ぐディレクターを担う。
「家ってもっと住む人自身がラフに楽しくデザインできたらいいよね。それができたら、街並み全体がもっとオシャレで可愛くなるはず」という想いを胸に、家の顔であるファサードにフォーカスして研究していく企画。毎回、とある業界のオピニオンをゲストに迎え、家づくりをもっと自由にオシャレに発想するためのアドバイスを伺います。
ビーアット代表取締役/ビームス 執行役員 コミュニケーションディレクター
約20年PR宣伝を担当し現職に至る。現在は同社初の合弁会社である「株式会社ビーアット」のCEOや国内外の企業、ブランド、人とのコミュニケーションを繋ぐディレクターを担う。
Freada ディレクター
2007年にFREAK’S STOREに入社し、ショップスタッフ、PRを担当。新作と古着をミックスする自由なスタイルでブランドの顔に。2017年には「Freada(フリーダ)」を立ち上げ、ディレクターに就任。
この企画のテーマ、家づくりって、ファッションみたいにもっと楽しく、自由に、おしゃれにできるはず、という想いから、ファッション業界のお2人をお呼びしました。
ファッション業界の人って、いろんなデザインのものを自由な感覚でコーディネートするプロですから。家ももっとファッションみたいなノリで考えられたら、街並みもおしゃれになるかもなって。
見ていてかっこいいと思う街も既にありますけどね。尾道とか、電線もないし、昔の街並みがキープされてて。倉敷や丹後の舟屋とかも。昔ながらのコミュニティが生きていて、「木を見て森を見ず」にならずに、自分の家を森の一部(その地域の一部)だとみんなが捉えて住んでいるようなところはいいよね。
確かにそうだね。ただ、新しく建てる家に関しては、もっと家で楽しいことしよう!っていうマインドを持てればいいと思うんです。服を買うときみたいに、オシャレになりたい!こうなりたい!って自由な発想で家を作ってほしいなって。
家への意識はここ1〜2年で劇的に変化してるよね。今だと「都内23区に住まなきゃいけない」っていうのもなくなってきてるし。実際に家で過ごす時間が増えたから、これからもっと変わるんじゃないかな。
ファッション業界の人って、考え方が柔軟で、魅力を伝えるのがうまいから、「これいいね!やっちゃおうよ!」みたいなファッションのノリが家作りにもほしい。
住宅業界でも洋服的な観点でコーディネートするのっていいよね。日本人って、いろんなものをミックスして自分らしく合わせるのが得意だから。セレクトショップ的なブランドミックスの提案は、世界でも珍しいから、それが家づくりでもできたら、他の国の人が驚くようなことができるんじゃないかと思います。
小笠原さんが家をコーディネートするとしたら、どんな家にしますか?
木とタイルとか、違う素材を合わせたいなあ。服でいうと、ボロボロのTシャツにパールのネックレスを合わせる感覚がかわいいですよね。「冷たい」と「温かい」の異なる質感を合わせる感じがおしゃれ!
異素材を組み合わせる! いいね!
マテリアルは、洋服の肝ですからね。
あとは、家を買うときにタイルとか壁の色を定期的に変えられるチケットがついてたらいいなあ。飽きたら年2とかで変えられるんです(笑)。私は、最初は淡いオレンジと黄色とピンクみたいな、思い切り派手な色を部分使いしたい! 素材は土壁×タイル×木を組み合わせて……。
メキシコみたいな街並みになりそうだね。あとは、素材だけじゃなくて、時代とか値段も超えて、みんなが編集者みたいに好きなものを選んで家を作る感覚ってすごくいいよね。
今、異素材とか新旧のミックスがいい!って考え方は増えているよね。IKEAで買ったものと、骨董を混ぜるとか、MUJIの家具もあればミッドセンチュリーの家具もある、みたいなのが今っぽい。逆に、全部真っ白の家具とか、ちょっとしんどくない? 好きな人もいるけど。
服でも全身ひとつのブランドってちょっとダサいですよね。やっぱりそこに、何かを混ぜる着こなしがセンスがいいと思う。
ファッションでいうところの「外す」感覚だよね。
そうそう。我々の腕の見せ所ですよね。(笑)
ただ、合わせるものは何でもいいってわけじゃなくて。安いけどかっこいい、ここに置いてあったらかわいいって。僕たちは仕事でその感覚が自然と身についてるけど、最近は一般消費者のリテラシーもそうとう高いよ。インスタとかを見ててそう思う。
今の若い子たちが家を買い始めたら、かわいい家が増えるかもしれないですね。
次世代の家がどうなるか楽しみですね!では、今の人たちが「もっとおしゃれな家に住んだら楽しいよね!」って意識を持つにはどうしたらいいでしょうか?
家を買う時ももっと選択肢が増えたらいいですよね。例えば、FREAK’S STOREさんの家とかBEAMSの家みたいな、今ある以外の選択肢があって、誰かがちゃんと提案をしてくれると消費者の満足度は上がるんじゃないかと思います。
今、ファッション業界って、服だけじゃなくてライフスタイル全体をプロデュースしてるじゃないですか。住宅業界もそれに倣ってライフスタイルの提案をしていけたらいいよね。
確かに、家を売る人が「売れた後に、そこに住む人がどう暮らしていくのか」までを提案するようになると、違ってくるよね。住む人にとっては、買ってからが暮らしのスタートなんだから。
では、家を作る側がまず変わった方がいいってことでしょうか?
それもある!でも、まず消費者が「好きな家を好きなように作っていい!」って思えるようになることも大事だと思うんだよね。建築のプロだけじゃなくて、他業界からも、おしゃれな家は作れるよ!って提案できるようになって、消費者が住みたい家を具体的にシミュレーションできるようになってほしいんです。
やっぱり、買う側への提案が大事ですよね。洋服だと、高級ダウンって黒が一番売れるんですよ。高い買い物で思い切って赤にしよう!とはならないんですよね。だから正直、家を買うときにみんなが無難なデザインになっちゃうのも分かる気がするなあ。
小笠原さんがおっしゃっていたように、家を変えるチケットがついていて、簡単に家を変えられたら、もっと好き勝手やってみよう!って思えますよね。
土井地さんが家をまるっと提案するなら、どんな家になりますか?
僕はもともとモダンでインダストリアルなトーンが好きなんだけど、提案したいのは、あえて日本らしい家ですね。昔の長屋みたいなイメージじゃなくて、高層ビルを木造で作るとか、そういう和の取り入れ方が始まっているじゃないですか。先人の知恵を、今のテクノロジーと感性で蘇らせるような作り方の家に、興味あるし、かっこいいと思います。
木造がいいってこと?
木だけじゃなくて、例えば真鍮とか銅とか、日本が長年産業として持っていたものをうまく混ぜると、現代の「日本的なインダストリアル」ができると思うんだよね。我々がイメージする普通の日本家屋じゃなくて、もっと「現代的な日本」みたいなものが今やりたいです。
いろんな話が出ましたね。結論として、どんなデザインの家がいいでしょうか??
うーん、もしみんながそれぞれやりたいように家を作っちゃったら、街としてはどうなるんですかね。うちの壁はピンクで、お隣さんは真っ青だったりして、かっこいい街並みになるかなあ?
メキシコのカラフルな街並みはそれに近いかもね。海外でも、おそらく日本でいう景観条例のようなルールが決められていると思うんだけど、今後はそのルールも取り払って、好き勝手な家を建てた方が、結果的にかわいい街になるのかもしれない。特定のエリアに住みたい人たちが集まって、多様性をキープしながらひとつの街のようなものを作っていくと、面白い街並みができるんじゃないかな。
Photography /原田教正 Text/赤木百(Roaster) Illustration/高城琢郎