GELCHOP
モリカワリョウタさん(左)とオザワテツヤさん(右)
2000年に3D構造グループ「GELCHOP」を結成。誰もが知る日常品に手を加え本来の意味や用途、カタチに変化を与える作品群、インテリアデザインやプロダクト、商業施設のオブジェ制作など多岐に渡って活躍。立体というカテゴリーのなかでさまざまな作品をつくっている。
2000年に3D構造グループ「GELCHOP」を結成。誰もが知る日常品に手を加え本来の意味や用途、カタチに変化を与える作品群、インテリアデザインやプロダクト、商業施設のオブジェ制作など多岐に渡って活躍。立体というカテゴリーのなかでさまざまな作品をつくっている。
GELCHOPさんは、ブランドなどとコラボもしつつ、唯一無二のユニークな作品をつくるクリエイターグループ。役割がそれぞれ異なり、モリカワさんは企画やアイデアを考え、オザワさんは制作の指揮をする工場長的な立場だそう。“馬鹿馬鹿しい事に全力を尽くすこと”をモットーに、日々遊びのように作品作りをしています。
(オザワさん)「最近は既存品を改造して作品を作ることが多いです。作品には、自分たちが生活している中で感じた不満や、こうしたら笑えるねみたいな気づきを落とし込むようにしていて。日常的なものを、ちょっと違う角度で見つめたら面白いアイデアが思い浮かぶんです」
(モリカワさん)「例えば、子どもの頃に体育館でバスケットボールに座ったことってないですか? バスケットボールって柔らかいし、クッション性もあるから椅子にもなる?それじゃあバスケットボールでソファが作れる?って感じで作品を作っています。発想の原点は子どもみたいなもんですよ(笑)」
そんなユーモア溢れるGELCHOPさんはどんな妄想HOUSEを考えるのでしょうか。
(モリカワさん)「なんでもありってなると難しいな。規制とか色々な問題があって、そこを突破するのが面白いんだよね」
作品にも通じる反骨精神をもって、2人が妄想HOUSEのベースとして選んだのは、不便な中古の家。ずっと遊んでいたいからこそ、すべてが揃っている環境はつまらないと言います。
(モリカワさん)「中古の家だと、ここがもろいなとか、生活しづらいなっていう気づきが出てくるから、そこをどうしたら改善できるかって考えるのが面白いよね。失敗しても、次の作戦を練ったりして」
まずモリカワさんが想像し始めたのは、ガラスドームに包まれた、自給自足ができる家。2人のそれぞれの家があって、現実の世界で普段仕事をしている作業場のようなスペースが近くにあるのが理想だそう。なぜ自給自足なのかというと、「自分で楽しいことや必要なことを考えて、研究して、やりくりできると毎日の生活自体が遊びみたいになるから」とモリカワさん。
(モリカワさん)「さらにガラスドームでボロい中古の家をおおったら、家の破損の心配もなくなるな。しかもその中が、ある程度温度管理できて、あらゆるものを自給自足しやすい環境が作れたら、毎日快適に実験しながら生活できる」
食べ物を自分で作るだけでなく、必要なエネルギーも自分で補えるのがモリカワさんの理想。畑や太陽光発電、水力発電、バイオマス、蓄電システム…など妄想が膨らみます。
(モリカワさん)「畑をはじめ、至るところが実験場所になっていて。最低限のエネルギーは確保しながら小規模でできる先端の発電の仕組みを試したり、ローテク発電を改造してみたり、生活全てを遊びながら実験しちゃったりして。休む暇ないなぁ」
(オザワさん)「高低差があれば水が流れてくるかもしれない。そこでロータリーが回れば、水力発電も可能かもしれないね」
(モリカワさん)「ソ連時代に地下構造を研究するために、何処まで地下の切削ができるのかって実験があったらしい。確か目標15km、地面を掘り込んで地熱の熱源まで行ければ、風呂も電気も問題なし。日本では6km掘ると200℃に達する可能性があるとか。シャベルで掘る訳じゃないよ(笑)、切削マシーンに残土どうする?ってこれ妄想でいいんだよね。あとは、粉砕と合成ができるマシーンが欲しい。ゴミでも何でも放り込んだら、色んな素材を作れるやつ。建築資材から生活雑貨まで、3Dプリンターもあるし…。なんかドラえもんみたいになってきた(笑)」
そんなエネルギッシュなモリカワさんの生活を、近くに建てた別の妄想HOUSEから、のんびり眺めていたいというオザワさん。
(オザワさん)「俺はプレハブみたいな小屋が、どんどんボロくなっていく過程を住みながら楽しみたい。自分が先に逝くか、家が逝くかみたいな過ごし方(笑)。あとは、庭に池が欲しいな。ちょぽんっていう水の音や、鳥や虫の音が聞こえて。そういう癒やしがある環境で、今よりもう少しゆるく生きていくんじゃないかな。農業とかもやりたいだろうから一応畑もね。でも、ストイックな感じじゃなくて、試しにやってみたけどダメだったくらいの感じで。気分で車をいじってるときもあるかな」
(オザワさん)「今まで作った作品の中に『犬のお掃除マシーン』っていうのがあるんだけど、そのアイデアを妄想HOUSEに取り込む感じかな。スイッチを入れたら動く犬の人形の足にマジックテープが縫い付けてあって、雑巾とくっつくシステム。犬が動きながら雑巾掛けをしてくれるんだけど、無駄ばっかりで全く掃除できないの(笑)。どんどん汚れて、ボロ雑巾のようになってく劣化を楽しめていいんだよ」
自然に囲まれた妄想HOUSEで、毎日実験をしているモリカワさんの様子を、ゆっくりと観察するというオザワさん。
(オザワさん)「山の中のボロい家の中で、大好きなビールを飲みながらモリカワの様子を見ます」
(モリカワさん)「とか言いつつ、たまに大丈夫?手伝おっか?って来ると思う」
GELCHOPさんの作業場は、妄想ハウスにも必須。
(モリカワさん「だんだんと完成されていくのが楽しいだろうね。妄想HOUSEの作業場では、仕事としては作業していない。作ることをとことん楽しみたいよね」
(オザワさん)「俺も気まぐれな感じで作業してるだろうな」
(モリカワさん)「作業場は俺たちだけじゃなくて、ものを作る仲間たちが集まる拠点になったらいいな。そこに行けば得意技を持ってる奴がいて、あいつに頼もうかなとかね」
(オザワさん)「子どもたちや年配の人も、みんな来たけりゃ来ればいい。みんなが来て楽しんで、ただ帰る。それでいい」
2人の家があって、その間には人が集まる作業場があって……。妄想が膨らんでいき、気づけば話は村づくりにまで広がっていました。
(モリカワさん)「いろんな知識や経験を積んできた人が集まったら、村になりそうで楽しそう。面白がれる方向性が似た人たちが集まって、一緒にエネルギーとか食べ物を作ったりして、お互いに分からない専門知識を補ったりしてね。みんなで妄想を描いている共同体」
(オザワさん)「全部ギブアンドテイクができたらいいね。みんなで鶏とか牛も育てたりして。今日の卵はこうだったとか言って、みんなで知識を分けあって研究できる。川があれば魚も釣れるし、生活に困らないね」
(モリカワさん)「でもみんなひとりになりたいときもあるから、スペースごとにガラスドームを分けてプライバシーを守っていこう(笑)」
そんな妄想の村でも、GELCHOPさんは村人のために、ユニークな作品作りを続けたいのだそう。
(オザワさん)「年齢的に後半戦に入ってきたから、老いてきた時の妄想も重要。楽しくなっちゃうアシスト器具とか、少し危険も伴う健康器具なんかで遊べる施設とか作ってもいいね。一般に普及するか分からないハイテクマシーンじゃなく、ローテクを駆使して作ってもいい。ちょっとした危険を感じることで緊張感とアドレナリンで若々しくなるとかね」
(モリカワさん)「歳を取ることを考えると不安と寂しい気持ちしか湧かないんじゃ前に進む気にならないもんね。楽しくなるための道具とか笑える環境を作って、年取るの楽しそうみたいな妄想しないと暗〜い気持ちにしかならない。やっぱりバカみたいなことを考えてバカみたいに必死に作るのには終わりがないなぁ(笑)」
Photography/山本大 Text/宮垣歩乃佳(Roaster) Illustration/HONGAMA