もう中学生さんの考える、おイエ(いぇい)! DATE 2024.09.03

もう中学生さんの考える、おイエ(いぇい)!

「家ってもっと自由に想像してみてもいいんじゃない?」——。さまざまな分野で活動するゲストが「本当に欲しい家」を妄想する「妄想HOUSE」。あらゆる固定観念から自由になり、自分たちの「好き」を夢いっぱいに詰め込んだ家を考えていただく連載企画です。

今回のゲストは“段ボール芸”でお馴染みのピン芸人、もう中学生さん。独自の世界観で沈黙をも笑いに変える、エキセントリックすぎる頭の中を覗き見します。もう中ワールド全開な妄想HOUSEの完成、少々お待ちを~。
もう中学生さん

1983年生まれ、長野県出身。“もう中”の愛称で親しまれている吉本興業所属のピン芸人。イラストを描いたダンボールでひとりコントを行う。甲高い声で「少々お待ちを〜」とネタの間を繋ぎ、「ためになったねぇ〜」とネタを締め括るのが特徴。パーソナリティを務めるSBC信越放送ラジオ『もう中学生のおラジオ中』(毎週土曜21:30~22:00、radikoでも視聴可能)がもうすぐ3年目を迎える。
Instagram - @moutyu_maluta

トランスフォームする移動型の家。

「自然あふれる田舎暮らしか、それとも都会暮らしか。ちょいと悩みますね〜」

そんな拠点選びから妄想を始めた、もう中学生さん(以下、もう中さん)。仕事柄、東京で活動することが多いため都内に拠点を置いていますが、彼の地元は長野県長野市。18歳で上京するまでは自然豊かな場所で過ごし、当たり前だった当時の暮らしが、今では“いつか叶えたいライフスタイル”になっているようです。

「今は家にいるとき、そのほとんどがネタ作り(ダンボールアート制作)の時間。アトリエを備えた家は、僕にとって仕事場でもあるので、ゴロンとお休みするのは実家に帰ったときだけと決めています。なので、現時点でどちらかに振り切るのは、なかなか難しいですね」

タイミングが合えば、仕事の合間を縫って実家に帰省することもしばしば。都会の喧騒から離れ、幼少時代から親しんできた自然豊かな地元で束の間の休息をとっているんだそう。

「つい先日も実家に帰ったんですけど、その日の食卓に並んだ茄子がすごく美味しくて。小ぶりではあったんですけど、農薬を使わず、自然の雨風を凌ぎながら、ここんとこの暑さにも耐えたんだなっていうのを感じられるたくましい茄子だったので、味はもちろん、なんだか感慨深さも。実家の縁側に玉ねぎが干してあるんですけど、その光景もすごく魅力的で、もともと山育ちではあるんですけど、今になって、そういう田舎でのスローライフに憧れを抱くように。かといって、東京に戻ってきたら戻ってきたで……」

「実家がある長野から東京に帰ってきたその日、いつもお世話になっている近所のクリーニング屋さんの前を通ると、『あ、もう中さん!』って話しかけてくれて。そのママさんは僕の服のボタンが取れかけていると、『そのボタン直してあげるから、5分後またうちに来てね』って、普段から気にかけてくれる人なんですよ。この間も電車に乗っていたら『もう中さん、そんなに下を向かなくて大丈夫です』って声をかけてくれるお姉さんがいて、たまたま具合が悪く、俯いていただけなんですけど、そうやって励ましてくれる人が周りにたくさんいると思うと、都会を離れる必要もないのでは?とも思っています」

「田舎と都会、僕にとってはどちらもすごくいい場所なので、あえて拠点を作らず、トランスフォームする移動型の家が僕の理想ですね。ぱっと見は、ごくごく普通の山。どっか行きたいときは “シャコーン”ってスコップが装着され、土の中を潜って移動できたり。ときには水の中も、空の上も」

大道芸人のように、ネタで使う大道具・小道具を家から現場まで自ら持ち運ぶ、もう中さん。移動型の家は、そんな彼にとってはネタの道具を仕事場まで届ける“足”としも好都合なはず。山暮らしをベースに、好きな場所を自由に行き来できる家。しかし、山の頂上には自然には似つかわしくない電光掲示板のようなものが……。

もう中さんの直筆ラフスケッチ

「この電光掲示板では、“わっ”とか“えっ”とかを定期的に表示。『今、こんな感じでっせ!』っていう僕の状況を近所の方たちにお伝えできる仕掛けです。“いぇい”のときは『丸太さん、今日も元気だ』って思っていただいて。ひとり暮らしなので、万が一の緊急事態もこれでお知らすることができます」

頭をぶつけても痛くない、グミ素材に囲まれたアトリエ。

彼が最初に“トランスフォーム”というキーワードを出したとき、てっきりロボット型の家を想像してしまいましたが、「ご近所さんが驚かないように、見た目は景観に溶け込む“山”にしよう」という配慮には、ユニークながらも優しさが垣間見えました。

「とはいえ、本物の山だと手入れが大変なので、自然素材はフェイク。お色味と型がそれなだけで、土もリアルなものじゃないです。僕は意外と綺麗好きなので、出入りするときに家の中が土で汚れるのも嫌なので(笑)。ちなみに入り口は、排水溝みたくギザギザとしたパーツが“ウィーン”って開閉するような感じで。近未来な感じがカッコいいですね」

「そんな入り口からまずアプローチできるのは、アトリエ。妄想といっても、この家も仕事場としてちゃんと機能するよう、家に帰ってきて一仕事を終えてから、その先にお風呂場、そして寝室に行けるような動線にしたいですね。アトリエの広さは、最低でもダンボール2枚を床に置ける広さが欲しいです。作業効率化を図るのに、片方のダンボールに絵を描いている間にもう一方の段ボールをその場で乾かしたいので。作品作りに使用する絵の具は、理科室の薬品庫みたいなショーケースに陳列して、筆を洗える水回りもアトリエにはマストです」

「現在の住まいは一階のガレージをアトリエにしているんですけど、その天井が低く、コンクリート打ちっぱなしなので、よく頭をぶっけて痛い思いを……。なので、壁の質感は“全て柔らか、まるでグミ”っていう形でお願いいたします(笑)。そこにちょっとしたステレオみたいなのを置いて、音楽やラジオを聞きながら作業できると最高ですね」

「たまに中華屋さんとかに行くと、『お2階の席です』って席まで案内されて、注文を済ませると“ガシャガシャン”って小さなエレベーターみたいなもので料理が届くじゃないですか。アレみたいに、その日の現場に持って行きたい小道具を、呼んだら自動的に出てくるシステムをアトリエに導入したいですね。例えるなら、“くら寿司スタイル”とか。仕事場から帰ってきたら、小道具を片付けるのが結構大変なので、仕舞いたいときは携帯用の袋ごと一気にお片付けできて、逆に持ち出したいときに作品のタイトルを呼べば、それが自動的に出てくる。あ、これはかなりいいかも」

家具を自由に作り出せる、毎日がクリエイティブな居住空間。

“家は仕事場”と話すように、現在の住まいと同様、「居住スペースは必要最低限で」と妄想ながらもシビアに間取りを考えていく、もう中さん。

「寝室は、お布団とCDプレイヤーをおける空間があれば充分です。でも、ここは贅沢に、ベッドルームにしてみてもいいですか? じつは41年間、自分で買ったベッドで寝たことがなく、家具屋さんに見に行ったことはあるんですけど、なかなかハードルが高くて……。これまで買ってこなかったベッドを“なんで今更”と、変なプライドも邪魔をしてきて(笑)。本当はベッドライフに憧れているのに」

でも、夢のベッドライフといっても、この妄想HOUSEでは家具が不要。ベッドもわざわざ買う必要はありません。

「この内壁は、“全て柔らか、まるでグミ”なので、自分で形状を変えて。『よっこらしょ』って壁を伸ばして、コロコロの棒とかで形状を平らに整えて、枕も手で“ふにゃ〜ふにゃ〜”ってかき集めて、また棒で整えて。お手製ベッドをつくってみたり。そういえば最近、“狭いお家でも、夢のデスク&椅子が置けますよ”っていうキャッチフレーズに惹かれ、リモートワーク用のデスクを一式購入したんですけど、この家なら、何か考え事をするときのデスクも自由自在に作り出せますね」

妄想HOUSEの大枠が固まってきましたが、もう中さんといえば、タレントグッズやレトロなゲーム機器、CDだけでもなんと2,000枚以上を所有するなど、コレクターとしての顔も有名です。その収納スペースはどうするのでしょうか。

「今は、バラバラにグッズを保管しているんですよ。CDだけでも寝室の隅に 4つの収納ボックス、枕元にも小さな棚があって、台所にも縦積みタイプのボックスを置いていて、それぞれにずらっと保管してあるので、それを一緒くたにできたらいいですね。この家なら棚も自在に作り出せるので、CDショップ風に自作のポップを一緒にレイアウトしてみたら面白そう。あくまでも自分宛て、自己満ですけど、『今週のオススメ!』とかをポップに書いてあったら、毎日がちょっとドキドキ、ワクワクしませんか?」

「毎日のワクワクでいえば、スープバーも可能でしたらちょいとスペースを設けてもらって(笑)。僕、スープが大好きでして、オクラのスープとか卵スープとかが常に5種、24時間飲めるスープバーがあったら嬉しいですね。そして、音楽の部屋も、温泉とかありですか?」と、妄想が湯水のように湧き出してくるもう中さん。最後に、「今回の妄想HOUSEを名付けるなら?」と問いかけたところ、ネタ帳をペラペラとめくりだしました。

「名付けて、山の山。“の”は“乃”の方がおさまりいいですかね。『山乃山』でどうでしょうか? ん〜、もうちょっといい名前がありそうな。ちょっと後悔するかも(笑)」

Photography/小林真梨子 Illustration/HONGAMA Text/伊藤千尋(GGGC)

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