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DATE 2021.03.12

1200トンの岩塊の内部に広がる、“まぜまぜ”な読書空間。
隈研吾デザインによる「角川武蔵野ミュージアム」とは

2020年11月6日、KADOKAWAによる日本初のコンテンツモール「ところざわサクラタウン」が、埼玉県所沢市にオープンしました。土地面積4万平米という広大な敷地のなかに、ミュージアム、レストラン、ホテル、オフィス、神社。とりわけの存在感を放つ「角川武蔵野ミュージアム」は、隈研吾によるデザインの“岩の塊”。内部は5階建てになっていて、各フロアには、マンガ・ラノベ図書館、EJアニメミュージアム、武蔵野をテーマにしたギャラリー、カフェやショップなどが入ります。そこかしこに、あらゆる文化をいっしょくたにする工夫が散りばめられていました。

いつ、どこから眺めるか。刻々と顔を変える、61面体。

言わずと知れた建築界の巨匠、隈研吾によってデザインされた「角川武蔵野ミュージアム」。なにをおいても、その外観に圧倒されます。高さ30メートルの巨大な“岩の塊”は、じつは、2万枚もの花崗岩からなっていて、総重量は1200トン。多様な三角形で構成された面は、ぜんぶで61個。眺める方角や時間、天気などによってさまざまな表情を見せてくれます。

塊としての存在感がひとしおなのは、ひとつひとつの岩に、あえて70mmもの厚みを持たせているから。近づいてみると、岩の表面はゴツゴツと波打っていて、これは、岩の表面をノコでこまかく削る「割肌仕上げ」によるもの。色の濃淡ともあいまって、ひとつとして同じ一枚は存在しません。

その圧倒的ビジュアルには、緻密な意図が隠されているようです。

きちんとしない。ゆえに親密な読書体験。

とりわけ注目したいのは、建物の4階に位置する「エディットタウン」。というのも、ここは「角川武蔵野ミュージアム」の“まぜまぜ”というコンセプトを、もっとも端的に象徴する場所だから。図書館、美術館、博物館の要素をまるっと兼ね備えたフロアには明確な境界線がなく、さまざまなカルチャーがわけへだてなく交わっています。

チケット一枚で、自由に行き来することが可能です。

図書館にあたる「ブックストリート」は、2万5千冊もの本がぎっしりと埋め尽くす“街路”。本棚は、奥行きや幅の違うものがランダムに配置された違(たが)い棚になっています。画一的でないさまは、さまざまな個性をもつ街の“商店”さながら。本棚の裏側には「荒俣ワンダー秘宝館」が広がっていて、“裏路地”に迷い込んだかのような、楽しい錯覚を覚えます。

何気なく街を歩くうちに、本に触れ、現代アートに触れ、知らず知らずに、知識を吸収できる。そこには、いっさいの押し付けがましさがありません。

奥行きのある本棚の手前側には、無造作に寝かせ積まれた本が。一般的な図書館では見かけない陳列方法ですが、かといって雑然としている印象はなく、むしろ、整頓されていないがゆえの気軽さがあります。また、奥行きや幅の異なる違い棚の構造は、どこか、さまざまな形や大きさをした家具のよう。

その自由奔放さを見ていると、自宅での本も常にきちんと並べておく必要はないし、キッチンや寝室の空いたスペースや、形や大きさの違う家具・家電に収納したっていいのだと感じてしまいます。

天までそびえる⁉︎ 高さ8メートルの本棚劇場。

「ブックストリート」を抜けた突き当りには、5階の天井までが吹き抜けになった「本棚劇場」が現われます。ぽっかりと開いた空間が突如として現れ、天まで伸びるがごとくの本棚が、左右上下と視界いっぱいに。ここには、山本健吉や竹内理三といったKADOKAWAの創業に深く関わった人物の個人蔵書が収められています。

「本と遊び、本と交わる」をコンセプトにしたプロジェクションマッピングも定期的に開催。本棚一面に、おりおりの企画展にまつわるオリジナル映像が映し出される様子は、一見の価値あり!

地域に根ざす。木のぬくみとともに共鳴する想い。

階段を上がって、5階へ。「武蔵野ギャラリー」では、武蔵野の歴史と、文化の発信にこの地を選んだあらましが、紹介されています。いっぽうの「武蔵野回廊」には、武蔵野にまつわる作家の本や郷土資料が集められていて、この本棚も特別にあつらえられたもの。
隈研吾のデザインによってイメージされたのは、武蔵野の雑木林。木材にはすべて、埼玉県産のヒノキが使用されています。4階とは打って変わって、ミニマルで静謐な空間。木のぬくもりが、ダイレクトに伝わってくるようです!

ちなみに、使われている木板のサイズや仕様は一般公開されているので、自宅でDIYを楽しむのもいいかもしれませんね!

“まぜまぜ”とは、言い得て妙。とりわけ、「角川武蔵野ミュージアム」のコンセプトをそのまま体現したともいえる「エディットタウン」には、さまざまな仕掛けが、そこかしこに!思い思いに過ごせる街路、さまざまな個性をもつ違い棚、無造作に寝かされた本……。散りばめられた工夫ひとつひとつに触れることで、暮らしもゆたかになりそうです。

ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか?

Photography/野町修平 Text/髙阪正洋(CORNELL)