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LANDABOUT TOKYO,ランダバウト DATE 2022.03.31

人と街が重なり合う、異国感溢れるホテル。
LANDABOUT TOKYOの空間のアイデア

徳川将軍家の菩提寺があり、谷根千や浅草、上野公園も徒歩圏内。駅の東側にはラブホテル街が並ぶ鶯谷は、江戸時代より栄え、さまざまな人が交差する場所でもありました。そこに2020年1月に誕生したのが、多様な楽しみを提供してくれるライフスタイルホテル「ランダバウト東京」です。鶯谷駅南口から徒歩3分。街とつながるホテルの、空間のアイデアを探っていきます。

地域に還元する、街とつながる場所をつくる

1階にはカフェラウンジ『LANDABOUT Table』があり、朝食からディナーまで宿泊者だけでなく一般の人も利用可能。ふらりとコーヒーを飲みに立ち寄ったり、自分の好きな食材を組み合わせて作る世界に一つだけの朝食を目当てに訪れる客など、1日中にぎわっているパブリックスペースです。

「ホテルのカフェというと入りづらいイメージがありますが、月に1度マルシェを開いたり、ライブを計画したりなど、宿泊客以外の方にも親しんでもらえるイベントを開催しています」と話すのは、マネージャーの濵田光紀さん。

色や意匠も街を想起させるものに。レセプションがある2階の手すりや壁など要所要所に使われているウグイス色は、駅からホテルへ向かう途中にある、JR線路をまたぐ凌雲橋のフェンスと同じ色。エントランスの吹き抜けにある環状のネオンサインは、ラブホテル街の雰囲気を連想させ、艶やかな色気を感じさせてくれます。

ちなみに書かれている文字は「A LITTLE BIRD TOLD ME(風のうわさで聞いた)」で、旅人の心情を表しているかのよう。ほかにも近隣にある古い喫茶店やスナックをイメージした総柄のソファや、クラシカルなサイン計画など、建物内にいながら街の温度が感じられ、旅のワクワク感を増幅してくれます。

ホテル名の「ランダバウト」とは、環状交差点「ラウンドアバウト」をモチーフにした造語。ネオンサインやロゴなどにも、環状交差点をイメージした円形が使われ、世界各地からやって来たゲストがひと時ここに集まり、またそれぞれの目的地へと出発する。そんな人や文化が行き交う交差点を想起させてくれます。

IDEA1:さまざまなカラーをミックスする

ウグイス色をキーカラーにさまざまな色が混在しているのも、このホテルの特徴です。エレベーターのドアはライトブルーとピンク。客室フロアの廊下にはピンクのカーペットが敷かれています。それでも甘くなりすぎないのは、グレーを混ぜたようなスモーキーな色調でまとめているから。

インテリアを考えるとき、大事なことのひとつが色のトーンを揃えること。色数が多くても、キーカラーの色調に合わせた家具やファブリックを選ぶと全体がまとまり、失敗することがありません。また、カーペットやカーテンなど面の大きい場所の色をちょっと遊んでみるのもおすすめ。白やベージュといった無難なカラーにしてしまいがちですが、トーンを抑えることでピンクやライトブルーなどの明るめの色でも、意外にシックにまとめることができます。

IDEA2:コンパクトでも快適に過ごせる工夫

部屋数は169室で、もっとも小さい部屋は11㎡。それでも閉塞感がないよう、部屋の中には多くの工夫が凝らされています。第一は、ベッド代わりのマットレスをソファと兼用できる仕様にしたこと。背の高い家具がなくなることで、空間を広く見せることができます。

さらに、上り框に関節照明を入れることで、浮遊感をもたせて圧迫感を軽減しています。壁をぐるりと腰壁が囲んでいるのも、ゲストの目線の高さを落とし、包まれているような心地よさを演出するため。部屋に入るとほっと寛げるのは、そんなディテールの積み重ねがあるからこそなのです。

ベッドサイドのペンダント照明は、極限まで低く吊り下がっているオリジナルの特注品。これも室内での目線を誘導する役目を果たしています。ヘラ削りをした無垢のスチールプレートにクリア塗装を施し、ジョイント部分は無塗装の真鍮の金具を使用。日本のものづくりへのこだわりが照明にも凝縮されています。

窓は小さいながら、壁一面にカーテンをまわすことで、形状をあいまいにしています。定石では窓の大きさに合わせたカーテンをつけますが、あえて壁一面にすることで、窓や部屋を広く感じさせています。

家具の配置などで目線を下方に集中させて天井を実際よりも高く感じさせたり、カーテンで開口部を広くイメージさせたり。通常の考え方にとらわれない転換した発想が、小さな部屋でも狭さを感じさせない工夫を作り出しています。

IDEA3:壁の仕上げにも自由な発想を。

建物の基本は床、壁、天井。その面をどう仕上げるかによっても、部屋の雰囲気は大きく変わります。エントランスを入って左手にあるラウンジには、金継ぎ柄のカーペットが床からそのまま壁につながっているという、ちょっと面白いアイデアを採用。既成概念を取り払った、カーペット張りの壁は、手触りも気持ちよく、空間に柔らかさをもたらしています。

また、廊下の壁と天井も、色を微妙に変えるという細かなこだわりが。同じホワイトグレー系ですが、彩度を変えることで、空間に奥行きが生まれます。

どちらも住宅に応用できるアイデアなので、こうあるべき、という思考を一度柔軟にしてみては。それもまた、家づくりの喜びにつながるはずです。

さまざまな色を取り入れて空間にリズムを加えたり、小さなスペースでも圧迫感なく、心地よく過ごせたり。それは、既成概念にとらわれない自由な発想から生まれるもの。大胆に思われがちですが、やってみれば意外にしっくりくる。そんな細かいアイデアが、「ランダバウト東京」には散りばめられています。
LANDABOUT TOKYO

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Photo / 川村恵理 Text / 三宅和歌子