Dolive Doliveってなに?

DATE 2022.02.11

Doliveが見つけたNIHONのイイモノ
~ 温泉だけじゃない魅力溢れる街・由布院編 ~ #1

NIHON NOIE PROJECTとは?

CREATORS PROJECTでの対談をきっかけにスタートしたNIHON NOIE PROJECT。
日本が大切にしてきた“和”の魅力をノスタルジックにでなく、現代に合わせて自由に解釈して表現する、「新しい“和”」。NIHON NOIE PROJECTでは、「モノ」や「ヒト」「コト」を通じて、日本各地にある「新しい“和”」を見つけ、暮らしの中に“和”を取り入れるアイデアを紹介していきます。

NIHON NO IE PROJECTの連載企画「Doliveが見つけたNIHONのイイモノ」は、プロジェクトの根幹にある日本各地の「新しい“和”」を探し求め、紹介していく連載企画。初回となる今回取り上げるのは「NIHON NOIE PROJECT by SOU・SOU」のモデルハウスが建つ由布院です。

温泉だけじゃない!由布院の魅力的な名建築たち

大分県出身の建築家・磯崎新氏が手掛けたJR由布院駅

大分県のほぼ中央に位置し、伝統ある温泉地として知られる由布院には、昔から続く温泉旅館や老舗の飲食店が数多く残っていて、メインストリート「湯の坪街道」からもこうした古き良き空気を感じることができます。

一方で、由布院駅に併設する形で2018年にオープンした「由布市ツーリストインフォメーションセンター」や2017年開館の現代美術館「COMICO ART MUSEUM YUFUIN」など、新たに生まれた名所も多く、うまく「新しさ」と「伝統」が街のなかに共存しています。

今回は、そんな「新しさ」と「伝統」の混ざり合う由布院の3つの建築から、「新しい“和”」を感じる魅力を深掘りしてみたいと思います。

黒い外観からもアートを感じる現代美術館
隈研吾設計の「COMICO ART MUSEUM YUFUIN」

最初に紹介するのは「COMICO ART MUSEUM YUFUIN」です。
設計を手掛けた隈研吾氏は、日本古来の「ムラ」という概念から着想を得て、由布院の街並みに溶け込む建築を目指したそう。

特徴的な外壁は、西日本で伝統的に使われてきた黒い「焼杉」という素材を使用。目立つことなく風景に溶け込みつつも、木材の質感や温もりを感じられます。また、軒を深くすることで陰影が生まれ、ランダムに小端立てた外壁と相まって建物を立体的に見せる工夫も。

枯山水の庭があることや、自然との関係性を紡ぐために木や土、和紙、水といった素材を積極的に活用するなど、日本らしさを感じる建築ディテールが随所に用いられています。

この施設のもう一つの特徴が、美術館に併設された「COMICO ART HOUSE YUFUIN」。2021年10月にプレオープンしたばかりの“和モダン”な簡易宿所は、1棟貸しで1日1組限定なのでゆったりとした時間を満喫できます。

2つの棟があり、それぞれのモチーフは「土」と「竹」。粘土質の土に藁スサを混ぜて塗り込んだ土壁や杉の枌板の網代張り天井など、素材を生かした空間が大きな特徴です。吹き抜けの住宅が増えるなかであえて日本らしい天井の低さを取り入れたり、リビングの床を畳にするなど、伝統的な和風家屋の良さを残しつつ、デザインには現代らしさが反映されています。

太宰治が過ごした部屋が由布院に?!
「ゆふいん文学の森」

2つ目は、少し趣向を変えて「ゆふいん文学の森」という施設をご紹介。ここは文豪・太宰治が暮らしたことで知られる東京・荻窪の下宿「碧雲荘」を移築・改装したブックカフェ。木造2階建の和洋折衷様式で、代表作「人間失格」の原型になったと言われる小説「HUMAN LOST」が執筆された部屋もあります。

建築自体はほとんど当時のままを維持していて、1階に7室、2階に5室の個室があります。これらは各貸切利用できる読書室として一部屋ずつ開放されています。ディテールに目を向けると、玄関脇に八角形の飾り窓とステンドグラスがあったり、レトロな家具を設置していたり。

和洋折衷を感じさせる玄関脇のステンドグラス。

読書スペースから見える中庭。右奥の石灯篭は、芸人の又吉さんが移築をサポート。

高い天井と明かりとり小窓、和室の欄間、象徴的な2つの玄関なども、見ていて飽きない造りです。ちなみに、庭にある石灯篭(灯籠)や庭の桜の木などは保全活動に参加した芸人の又吉さんが自費で碧雲荘から移築したそう。

高い天井とともに取り付けられた明かりとり小窓

これまで複数の伝統家屋の移築をしてきた橋本さんが、知人から「太宰の下宿荘が壊されてしまうから移転させてくれないか」という相談をもらい、小説家で芸人の又吉直樹さんらが中心となって保全活動も行われているということを知って、購入・移転を決意。

釘一つ使っていないにもかかわらず、震災の時にも伝統家屋は全く崩れず、その強さにも驚いたといいます。しかも、風通しがよく湿度も保たれる。そんな話を聞くと、伝統的な日本家屋こそ実は現代の生活にもマッチしているのではないかと感じてしまいます。時代を超えて今も輝き続ける日本家屋はもはや「新しい“和”」なのかもしれません。

玄関が二つあるのが印象的な「ゆふいん文学の森」の入り口

由布院駅に隣接した、木々が集まったような空間
「由布市ツーリストインフォメーションセンター」

最後に紹介するのは、磯崎新氏設計のJR由布院駅舎の隣に生まれた「由布市ツーリストインフォメーションセンター」。由布院の象徴的存在となるこの総合案内施設には、観光情報案内スペースや荷物の預け入れ場所、旅図書館、展望デッキなどがあります。

設計を手掛けたのは坂茂氏。由布院駅の特徴に呼応するように、天井や柱には曲線に加工した集成材を採用。たくさんの木材をありのまま用いたY字型の柱が立ち並ぶ空間からは、日本らしい建築のあり方を感じます。また、全面をガラス張りとすることで、落ち着きと開放感を演出をしています。

「ゆったりとした時間の中で過ごしていただきたい」という考え方が、由布院のまちづくりでこれまで大切にしてきたこと。今回の施設でも“ゆったり、ゆっくり”と過ごせるような体験を作るため、「融和と調和」というキーワードを意識しているそう。古き良き由布院駅や地域の風景と「調和」する新しい建築が歴史を引き立てるというのも、「新しい“和”」のあり方の一つのような気がします。

今回は、「伝統」と「新しさ」をあわせ持つ由布院の3つの建築を紹介しました。伝統技法を用いながら現代らしいデザインを採用したり、現存する施設に呼応する形で新しい建物を作ったり。

「新しい“和”」の正解はひとつではないのかも。伝統ある日本の“和”の思想を取り入れながら、現代を快適に心地よく暮らしていく。その方法を自分なりに生活の中で探してみてはいかがでしょうか。

Photo/麻生和也 Text/角田貴広