Dolive Doliveってなに?

awabi ware DATE 2023.04.11

Doliveが見つけたNIHONのイイモノ
〜 伝統的な器を、現代の食卓へ。新しい"和"を発信するモノ、淡路島編~

NIHON NOIE PROJECTとは?

CREATORS PROJECTでの対談をきっかけにスタートしたNIHON NOIE PROJECT。
日本が大切にしてきた“和”の魅力をノスタルジックにでなく、現代に合わせて自由に解釈して表現する、「新しい“和”」。NIHON NOIE PROJECTでは、「モノ」や「ヒト」「コト」を通じて、日本各地にある「新しい“和”」を見つけ、暮らしの中に“和”を取り入れるアイデアを紹介していきます。

NIHON NO IE PROJECTの連載企画「Doliveが見つけたNIHONのイイモノ」は、プロジェクトの根幹にある日本各地の「新しい“和”」を探し求め、紹介していく企画です。

今回訪れたのは、瀬戸内海最大の島、淡路島。そこで出合ったのは、かつて淡路島で栄えた伝統的な焼き物・珉平焼をベースに、現代の生活に寄り添うかたちでアップデートした器を作り出すブランド「Awabi ware」です。受け継ぐ器をコンセプトとした、日用食器をつくる、岡本純一さんにお話を伺いました。
Awabi ware(あわびウェア)

淡路島に工房とショップを構えるAwabi ware
〒656-2155 兵庫県淡路市大町上507-1あわびウェア工房
Instagram, HP

伝統的な焼き物を編集。
現代の民藝として日常的に使いたくなる器

瀬戸内海に浮かぶ最大の島、淡路島。豊富な海の幸から玉ねぎなどの野菜に至るまで食材に恵まれ、古来から「御食国(みつけくに)」と言われるほどの食の宝庫だそう。

元々、診療所だったという築90年ほどの建物に手を加えたショップ&ギャラリーと、隣に制作工房を構えるAwabi ware。平日にも関わらず、島外から来るお客さんでにぎわっています。

淡路島の美しさ『淡美』をブランドネームに冠したAwabi wareは、日用食器のブランド。江戸後期から明治期に栄えた珉平焼をベースに、現代の食卓に寄り添い、カラフルな色合いや使い勝手、なによりそのぬくもりで人気を博しています。

「これが珉平焼と言って、僕らが参考にしている淡路島の焼き物です。色味だったり形は珉平焼から影響を受けました」

カラフルな色味が特徴のひとつである珉平焼。Awabi wareは、そこに今の暮らしや料理と絡めて編集をすることで、伝統的な”和”の器でなく、現代の暮らしに寄り添った器をつくり出す。まさに、NIHON NOIE PROJECTが伝えたい「新しい“和”」そのものです。

花のような形の輪花皿は、ブランドスタート時につくった器。珉平焼のニュアンスを表現したトルコ青やマットな質感のアイボリーも最初にできた色合い

「若い頃に民藝と出会って、その時に今の時代こういった民藝がないなと思ったんです。作家物もあるし、大量生産の物もある。昔ながらの民藝のように自然とつながった、”当たり前のようにある器”がないなとなんとなく考えていたんです」

民藝をただ再現するのではなく、今の時代に合う民藝を目指し、岡本さんはAwabi wareを立ち上げました。

手仕事でつなぎ合わせる。 Awabi wareができるまで

そんなAwabi wareの器たちは、どのようにこの淡路島で作られているのでしょうか。

「ここは、僕が使っているアトリエで、大元になる器の形、原型を作る場所です。Awabi wareは型づくりなので、最初に原型があって、それを型取りして制作が始まるんです」と岡本さん。

分業制で器をつくっているため、そうして出来上がった原型を瀬戸や波佐見にいる職人さんに型取りを依頼をし、素焼きの状態で工房に戻って来るそう。

次に行われるのが、Awabi wareの特徴の一つであるカラフルな色合いを生み出す、釉薬を塗る作業。一点一点手仕事で、さまざまな色を生み出す釉薬を塗り分けていきます。

その後、釉薬が塗られた器を焼成します。焼かれることで、釉薬に含まれる鉄分が化学反応を起こし、釉薬の色味からは想像もできない鮮やかな色味となって器が出来上がります。
 

釉薬が塗られた器。中央にある、灰色に近い釉薬が塗られた器は、焼き上がると瑠璃色に変化する

さまざまな人の手作業を経て出来上がるAwabi wareの器たち。
「愛着を持ってもらえる器を目指しています」と岡本さんが言うように、人の手がつながってつくられたからこそ、自然と温かみが感じられる器になっているのかもしれません。

時代を否定せずに受け入れる。
愛着をもって受け継がれる器に

こうして出来上がったさまざまな器は、ショップで購入することができます。色の数は10色を超え、デザインのバリエーションも幅広く取り揃えられていますが、岡本さんはこう言います。

「僕の欲しいものや作りたいものを基本的には作ってない感覚で。今の食卓だったらこういうのが欲しい。使いやすいとか。お客さんにこういうものが欲しいと言われたら、できるだけ作るようにしているんです」

表現活動でなく、あくまでも使う人の日常に深く根付くように。岡本さんが影響を受けている民藝の考え方が垣間見えます。

「今の世の中の雰囲気とかに、川のように乗って漂っているような感じなんです。なんかポップなものを作ろうとか、かわいいものを作ろうっていうことじゃなくて、ただなんかこう。その時代を否定しないようにして作ろうとしています」

時代を否定せず、受け入れる。そうして生まれた伝統的な珉平焼から制作スタイルを学び、現代に解釈し直したAwabi wareの器は、NIHON NOIE PROJECTが考える「新しい“和”」の一つのカタチです。

この紫色は、個展を開催する際、ギャラリーの方との会話がきっかけで制作。食材が映えるので岡本さんのお気に入りでもあります

ここで買い物をされるお客さんは、器を手に抱きしめながらレジにきてくれる方が多いそう。

「物持ちに大事なのって愛着だと思っているんです。使いやすい・使いにくいより、まず自分が愛着を持てるかどうか。 愛着があれば、子供ができた時に、子ども用に同じものを揃えようという気持ちになると思うんです」

『受け継ぐ器』をコンセプトにしたAwabi wareの器を手にとると、そういった仕草をしてしまう。それは、Awabi wareが内に秘めた想いが、自然と伝わっているのかもしれません。

「将来的にAwabi wareは、この周辺ですべて一貫して制作ができる、”陶器の産地”になったらいいなと思います」と岡本さんは話します。そうなったらAwabi wareが目指す”親から子へと受け継がれる器”になった証とも言えそうです。

Photography/宮前一喜