Awabi ware(あわびウェア)
淡路島に工房とショップを構えるAwabi ware
〒656-2155 兵庫県淡路市大町上507-1あわびウェア工房
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CREATORS PROJECTでの対談をきっかけにスタートしたNIHON NOIE PROJECT。
日本が大切にしてきた“和”の魅力をノスタルジックにでなく、現代に合わせて自由に解釈して表現する、「新しい“和”」。NIHON NOIE PROJECTでは、「モノ」や「ヒト」「コト」を通じて、日本各地にある「新しい“和”」を見つけ、暮らしの中に“和”を取り入れるアイデアを紹介していきます。
瀬戸内海に浮かぶ最大の島、淡路島。豊富な海の幸から玉ねぎなどの野菜に至るまで食材に恵まれ、古来から「御食国(みつけくに)」と言われるほどの食の宝庫だそう。
元々、診療所だったという築90年ほどの建物に手を加えたショップ&ギャラリーと、隣に制作工房を構えるAwabi ware。平日にも関わらず、島外から来るお客さんでにぎわっています。
淡路島の美しさ『淡美』をブランドネームに冠したAwabi wareは、日用食器のブランド。江戸後期から明治期に栄えた珉平焼をベースに、現代の食卓に寄り添い、カラフルな色合いや使い勝手、なによりそのぬくもりで人気を博しています。
「これが珉平焼と言って、僕らが参考にしている淡路島の焼き物です。色味だったり形は珉平焼から影響を受けました」
カラフルな色味が特徴のひとつである珉平焼。Awabi wareは、そこに今の暮らしや料理と絡めて編集をすることで、伝統的な”和”の器でなく、現代の暮らしに寄り添った器をつくり出す。まさに、NIHON NOIE PROJECTが伝えたい「新しい“和”」そのものです。
「若い頃に民藝と出会って、その時に今の時代こういった民藝がないなと思ったんです。作家物もあるし、大量生産の物もある。昔ながらの民藝のように自然とつながった、”当たり前のようにある器”がないなとなんとなく考えていたんです」
民藝をただ再現するのではなく、今の時代に合う民藝を目指し、岡本さんはAwabi wareを立ち上げました。
そんなAwabi wareの器たちは、どのようにこの淡路島で作られているのでしょうか。
「ここは、僕が使っているアトリエで、大元になる器の形、原型を作る場所です。Awabi wareは型づくりなので、最初に原型があって、それを型取りして制作が始まるんです」と岡本さん。
分業制で器をつくっているため、そうして出来上がった原型を瀬戸や波佐見にいる職人さんに型取りを依頼をし、素焼きの状態で工房に戻って来るそう。
次に行われるのが、Awabi wareの特徴の一つであるカラフルな色合いを生み出す、釉薬を塗る作業。一点一点手仕事で、さまざまな色を生み出す釉薬を塗り分けていきます。
その後、釉薬が塗られた器を焼成します。焼かれることで、釉薬に含まれる鉄分が化学反応を起こし、釉薬の色味からは想像もできない鮮やかな色味となって器が出来上がります。
さまざまな人の手作業を経て出来上がるAwabi wareの器たち。
「愛着を持ってもらえる器を目指しています」と岡本さんが言うように、人の手がつながってつくられたからこそ、自然と温かみが感じられる器になっているのかもしれません。
こうして出来上がったさまざまな器は、ショップで購入することができます。色の数は10色を超え、デザインのバリエーションも幅広く取り揃えられていますが、岡本さんはこう言います。
「僕の欲しいものや作りたいものを基本的には作ってない感覚で。今の食卓だったらこういうのが欲しい。使いやすいとか。お客さんにこういうものが欲しいと言われたら、できるだけ作るようにしているんです」
表現活動でなく、あくまでも使う人の日常に深く根付くように。岡本さんが影響を受けている民藝の考え方が垣間見えます。
「今の世の中の雰囲気とかに、川のように乗って漂っているような感じなんです。なんかポップなものを作ろうとか、かわいいものを作ろうっていうことじゃなくて、ただなんかこう。その時代を否定しないようにして作ろうとしています」
時代を否定せず、受け入れる。そうして生まれた伝統的な珉平焼から制作スタイルを学び、現代に解釈し直したAwabi wareの器は、NIHON NOIE PROJECTが考える「新しい“和”」の一つのカタチです。
ここで買い物をされるお客さんは、器を手に抱きしめながらレジにきてくれる方が多いそう。
「物持ちに大事なのって愛着だと思っているんです。使いやすい・使いにくいより、まず自分が愛着を持てるかどうか。 愛着があれば、子供ができた時に、子ども用に同じものを揃えようという気持ちになると思うんです」
『受け継ぐ器』をコンセプトにしたAwabi wareの器を手にとると、そういった仕草をしてしまう。それは、Awabi wareが内に秘めた想いが、自然と伝わっているのかもしれません。
Photography/宮前一喜