Dolive 家をもっとカジュアルに楽しむメディア

DATE 2021.01.03
東京・蔵前。隅田川に隣接する古い玩具会社の倉庫を改装したホステルは、1階にカフェ・バーラウンジがあり、昼夜を問わずさまざまな人の憩いの場になっています。ふらりとお茶を飲みに来る常連客から、ホステルの宿泊者、蔵前散歩を楽しむ観光客まで。あらゆる人々を受け入れる空間には、そのための工夫が詰まっています。

バーラウンジの作りから、家をもっと楽しむためのヒントを、運営会社Backpackers’ Japanの石崎さんに教えてもらいました。
Nui. HOSTEL & BAR LOUNGE

東京都台東区蔵前2-14-13
tel.03-6240-9854
CAFE 10:00〜17:00、8:00〜18:00(土日祝)
BAR&DINING 18:00〜25:00(24:30LO)
不定休
HP

旅行者も近所の人も。人が集う空間。

創業300年弱という老舗玩具メーカーの倉庫ビルをリノベーションした「Nui. HOSTEL & BAR LOUNGE」。1階にはレセプションと誰でも利用できるカフェ・バーラウンジがあり、2階から上がドミトリー、個室などの客室に。キッチンとライブラリーが併設された共有スペースもあります。

広々と抜けた空間には木材やグリーンが多用されている。

今回は、特に1階のラウンジに注目。まず驚くのは床面積約170㎡、天井高4.5mという広さ。「この抜けた空間を最大限に生かすところからプランがスタートしました」というのは、Nui.を運営する株式会社Backpackers’ Japanの石崎さん。

内と外の境界をあいまいにするガラスのファサードは、すべて開くことができる。

そのプランのひとつが、ガラス扉のファサード。蛇腹に折り畳むことで全面開放でき、外と内が地続きでつながる仕様に。

「空間がそのまま外にもつながっていくような感覚。あらゆる境界線を越えて人々が集える場にしたい、というコンセプトにも通じる、内と外があいまいな空間作りを大事にしました」
年齢、性別、国籍、職業などに関係なく、等しく人々が集まれる空間。その理由のひとつは、この何でも受け入れてくれるようなあいまいさにあるのかもしれません。

IDEA 1 : 自然の中にいる雰囲気を作り出す

北海道ニセコを訪れて選定してきた、中央に位置するシンボルツリー。

開放的な作りとともに意識したのが、自然の中にいるような雰囲気を取り入れること。中央にあるシンボルツリーを始め、切り株のようなスツールや、有機的なフォルムのソファなど、自然から着想を得たディテールがあちらこちらに散りばめられています。

五角形のテーブルや切り株のようなスツールなど、家具はほぼオリジナルで製作。

「シンボルツリーやバーカウンターなどは北海道に実際に行って選んできた木を現場で加工しながら施工しました。普通は店で隣り合った人同士が話すのはなかなかハードルが高いですが、自然の中にいると見知らぬ人とも自然に会話が生まれたり、乾杯ができてしまう。そういうムードを作りたかったんです」

屋根がついている小屋はトイレに。ドアも木で、森の中にある小さな家といった趣き。

家でも、例えばグリーンや花など植物を置く。木の家具を取り入れる。もしくは、落ちていた木の枝や石を飾るだけでも、自然を身近に感じることができます。自然を室内に持ち込む。それによって張り詰めていた気持ちがゆっくりとほぐれ、居心地のいい空間へと変化します。

IDEA2:空間にゆるやかな仕切りをつける

階段を上がって右手はピアノも置かれ、ひとつの部屋のような造りに。

ファサードの正面に4段ほどの階段があり、登ると左右でゆるやかに空間が仕切られています。階段下と合わせて全体で4つのスペースに。どの位置に座ってもどことなく落ち着くのは、この仕切りのおかげ。しかも、壁や床の素材、わずかな段差などで区切られているため、視線をさえぎらず開放感はそのまま。

「階段を上がった右手は、ここだけ天井が弓形になっていて、飛行機の翼を象ったつくりになっています。床もヘリンボーンの木床で、壁の一部をレンガにして、部屋の中のようになっているんです。空間を閉じずにいくつかに分ける、というのはインテリアデザイナーの東野唯史さんの発想でした」

壁もまっすぐに分けるのではなく、曲線にすることで有機的な雰囲気に。

それもまた、自分の部屋にも生かせるアイデア。例えば、部屋のベッドを置くスペースと作業をするスペースで壁の色を変えてみたり、一部に壁紙を張ってみたり。ラグを敷くのもスペースを仕切る有効な手立てです。ひと続きのリビングダイニングも、リビングとダイニングで壁や床の素材を変えることで、間延びすることなく空間を生かせ、より機能的に使うことができます。

IDEA3:ちょっとした作業ができるスペースを設置

壁に取り付けられたカウンター。照明を置けば作業スペースとして活用できる。

家で仕事をすることが多くなっている今、作業スペースに悩むことも。
「連日やってきてはここで仕事をしていく方も多いのですが、毎日違った席に座って作業しているような印象があります。大人数が一緒に座れる大きなテーブルもあるし、立って飲めるハイテーブルやカウンター、ソファとさまざまな場所があるので、それぞれの目的や気分に合わせて選んでいただいているようです」

自宅のダイニングなどにある大きなテーブルも、資料を広げて仕事をするのにぴったり。

家でもデスクに縛られる必要はなし。主要な仕事はデスクで、ライトなリモート打ち合わせやメールの返信などは立って作業ができるカウンターで、などメリハリをつけることで仕事効率もアップ。壁際にパソコンが一台置ける程度の奥行きのユーティリティカウンターを設置するなど、ちょっとしたワークスペースを家のあちこちに設けることで、仕事のモチベーションが上がり、気分転換にもなります。

IDEA4:壁に窓をつける

壁にフレームのような窓をつけることで、圧迫感のない空間に。

共有スペースの壁には窓がついています。全面を壁で覆ってしまうと圧迫感が出てしまう場所にも窓をつけることで、閉じられつつも、つながりのある空間に。家族の共有スペースである、リビングやキッチンの壁にも生かせそうなアイデアです。

IDEA5:家具を造り付けにする

造り付けのソファの座面下は、収納にもできる。

バーラウンジで目をひくソファは、ここのスペースに合わせて作った造り付け。集成材によるもので、座面には革が張られている。
「自然がモチーフなので、カーブを描く有機的なフォルムで、人と視線を交わしやすい形にしました」

ライブラリー。ここにもベンチを造り付け。

市販の家具だと部屋の寸法と合わないことがありますが、造り付けにすることでその悩みを解決。部屋に合わせて家具を作る、というのも参考にしたいアイデアです。

右が石崎さん。左はNui.の広報担当の村野さん。

施主とデザイナー、10人以上の大工が寝泊まりしながら共にアイデアを出し合い、ジャズセッションのように作り出した「Nui.HOSTEL & BAR LOUNGE」。人々が集う場所には、それぞれが自分の居場所だと思える気持ちのいい遊び心が詰まっています。効率だけでなく、気持ちに作用するアイデアの数々、ぜひ参考にしてみてください。

Photograph/川村恵理 Text/三宅和歌子