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岡本淳生, 岡本あつみ, 本棚のある家 DATE 2021.12.14

一家5人でフリーアドレス制の家。
整理収納アドバイザーが考える居心地の良い家づくり

リノベーションしたマンションの1室に一家5人で暮らす整理収納アドバイザー岡本淳生(あつみ)さん。社員が個々の席を持たず自由に場所を選ぶオフィススタイル=フリーアドレス制を、なんと個人邸に導入した岡本さんのお宅は、空間を最大限に生かすアイデアであふれています。

近隣では一番古いマンションだという物件の昔ながらの良きデザインは残しつつ、家主の「やりたい!」を詰め込んで、今も少しずつ変化を続けている家。機能的で住みやすく、色にあふれて楽しくなる岡本さん宅の家づくりを紐解いていきます。

家づくりの方程式
目的別の間取りと
フリーアドレス制
部屋ごとに”やりたい”を
叶えるインテリア
心地よさを作る
整理収納アドバイザー

エントランスからすでに昭和のレトロ感が漂うマンション。6年ほど前にリノベーションをして住み始めたという岡本さんのお宅は、駅近のこの物件の1室にあります。元からあった3LDKの間取りは大きく動かしてはいないものの、5人の家族が使いやすいように壁の位置を変え、すべての空間を最大限生かせるような工夫がされていました。

目的別の間取りとフリーアドレス制
 

方程式
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マスタード色の玄関扉を開けて入る岡本さん宅。いつか売りに出すことも意識した駅近物件の中で、レトロでかわいらしいディテールが気に入り選んだのだそう。「築40年ほどなんですが、建てられた当時は高級マンションだったみたいです。インテリアに真っ赤な絨毯や、今ではあまり見ないような壁紙があっておもしろくて」。

気に入ったディテールは残しつつ、家族みんなの使いやすさを考えて間取りを調整。「元からあった3LDKのリビングを大きくするために、今勉強部屋になっているスペースは極力小さくしました。廊下とリビングの間についていた扉やキッチンの壁も取ったんです」。

引越し前はメゾネット式の賃貸に住んでいたという岡本さん。「前の家は2階建てでしたが、みんな結局1階リビングに集まっていたので、この家ではリビングを広くしたくて。家族がどこで何をしているのかが、キッチンから見える間取りにしたかったんです。この方が配膳もしやすいですしね」。

キッチンでアイランドの役割を果たすのは食器棚。「転勤族だったので最初から持ち運びやすい背の低い家具しか持ってなくて。キッチンの台に使えるなって」。

前の家では2階がうまく活用できなかったから新しい家はワンフロアに、家族が一番使うであろうリビングは広めに……。岡本さん宅の物件選びや間取りの選択から感じられるのは「どの空間も無駄なくちゃんと使いたい」というマインド。それぞれの部屋を持ち主別ではなく、明確に“目的別”に分けることで、ありがちな「何に使っているかわからないスペース」が一切ない空間に仕上がりました。

“目的別”を突き詰めた結果、岡本さんがたどり着いたのは、なんとフリーアドレス制の採用。リビングからつながる勉強部屋と、その隣に位置する寝室は特定の場所の持ち主を決めず、それぞれの家族が使いたいときに使いたい場所を利用するシステムになっています。

「最初からフリーアドレス制にしたわけじゃないんです。勉強部屋も最初は子どもだけの部屋でした。子どもの成長に合わせて長女の部屋にしてみたり、3人の勉強部屋にしてみたり。その後コロナで大人も家で仕事するようになったのもあって、もう個人の机いらないなって思って(笑)。それで、今のフリーアドレス制に落ち着きました」。

暮らしながら試してみて、うまく空間が活用できなかったら別の使い方を考える。それが岡本さんの家づくりのスタイル。「そのときに最適な間取りや物を選ぶと暮らしやすいと思ってます」。

とは言っても、年頃のお子さんが3人暮らす岡本家。寝室まで家族全員でシェアして寝るスタイルが子どもたちにも受け入れられているのは驚きです。「もうみんな慣れてるから(笑)。全員で同じ部屋で寝るのは嫌じゃないみたいです。パパと子ども達も最近一緒にゲームする時間が増えたからか、ますます仲良しで」。

部屋ごとに”やりたい”を 叶えるインテリア
 

方程式
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家族がシェアをする寝室と勉強部屋、キッチン&リビング、そして、こちらも全員で共有しているWIC。目的別に分けられた空間が、それぞれ印象の異なるインテリアデザインでまとめられているのも岡本さん宅の特徴です。「インテリアは好きなものを並べただけ。ファッションでもそうなんですけど、いろんなテイストが好きで。どれかひとつを選ぶのが難しかったから全部やろうかって(笑)。部屋なんてドアを閉じれば見えないんだし、部屋ごとにテーマを変えても面白いと思いました」。

WICは服を選ぶときに気分が上がるよう赤い壁でビビッドに、寝室は落ち着くトーンでフレンチ風に、洗面所はかわいいピンクに。扉を開けるごとにワクワクするほど印象が変わる岡本家ですが、「それがどんなテイストかまでは意識してなくて“こういう風が好き”くらいの感じで決めていった」のだそう。それくらいライトなスタンスで家づくりをしているから「ちょっと飽きてきたときには壁の色をすぐDIYで変えてしまう」と岡本さん。

「この6年間でもだいぶ変わりました。特に勉強部屋は原型がないです。当初はパパの意見を取り入れて茶色の壁に、黒っぽい家具だったんです。オールドアメリカンな雰囲気で。でも、その部屋を一番使うが子どもが嫌がった(笑)。だから、壁紙を貼りかえたり、ペンキを塗ったりして、今は北欧風に落ち着いています。ちょうど先週、柱の色を変えたところです」。

部屋ごとにデザインテーマが違う上に、「真っ白があまり好きじゃない」とほとんどの壁に色がついている岡本さん宅。にもかかわらず、家全体に一体感があるのが不思議です。

よく見るとリビングに3つ並べられたライトだったり、置かれたインテリアのディテールもさまざまなテイストのミックスに。「何かひとつが好きというよりは、これとこれの組み合わせが好き、ということが多いみたいです」。

心地よさを作る 整理収納アドバイザー
 

方程式
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”目的別”を意識したことで、自然と、生活動線にも合わせられた間取りと家具の配置。そういった「スムーズに生活する為の工夫」が、棚の中身まで考え抜かれているのが、整理収納アドバイザーである岡本さんならではです。「まず、この部屋はなんの部屋かを決める。で、ジャンルなどでざっくりとゾーンを分ける。分けたら、ここはかける場所、ケースに入れる場所…など収納方法で細かく場所を決めていきます。先に枠を決めて、そこに入るだけの物を持つようにします。結局、家にあって実際に使ってる物って一部なんですよね」。

旦那さんが一目惚れしたというリノベ前からあった本棚。家中の本はリビングのこのスペースに集められ、ジャンルごとにきれいに分類されている。

そんな岡本さん宅で大活躍しているのは自己流のDIY。棚と壁の隙間などにデッドスペースが生まれないよう工夫された収納はほとんどが自作です。しかも、材料は100円均一ショップで買ってきたものが多く、簡単に真似しやすいのが嬉しいところ。「マガジンラック、CDラック、テレビ下のDVD入れもDIYです。板を買ってきて、オイルステインを塗って仕上げてます。最近の100円均一はすごいですよ。DIYの材料がすごく充実してるんです」

棚の奥の列に並べられた本の背表紙が見えるよう底上げ棚をつくって置くなど、岡本さんのDIYは機能性UPにももちろん役に立っていますが、「カバーが気に入っている雑誌用ラック」を作ったり、そのままだと壁色に合わない金属のフックの色をペイントしたりと、見た目で楽しむことも忘れていません。整理収納アドバイザーとしても「好きなものは堂々と飾るのがおすすめです」と岡本さん。

「自分にとって大切なものがわかっているなら、そうじゃないものを減らせばいいんです。なんとなく持っているものは、なんとなくその辺に置いてしまいがちで、ごちゃごちゃ感や過ごしにくさをつくってしまいます」

間取りや家具の配置の配置を考える際は、この家で実際に暮らした時にどこでどんなことをするのか何度もシミュレーションしてみたのだそう。岡本さんに倣って、まずは自分が家でどういう生活をするのか具体的に考えてみるところから、家づくりをはじめてみるのはいかがでしょうか?

(方程式のまとめ)
なんとなく持っている物となんとなく使ってる空間......!
見直してみれば、無駄がなくて心地よい家に。

整理収納アドバイザーの知見をフル活用して、そこで過ごす人が心地よく過ごせる家を作り上げた岡本さん。過ごしやすさって家の機能ばかりに目が行きがちですが、ちゃんと自分の気分が上がる”好き”なデザインも詰め込んで暮らしているのが岡本さん宅の良いところ。どの場所にも意味があって生活しやすく、そこに居て気分が上がる家。岡本さんのアイデアをあなたの家づくりでも真似してみてください。「家族の成長に合わせてこれからも変わると思います。この先はどうなるかまだわからないですね」と笑う岡本さん宅から、素敵な家づくりのヒントを学ばせてもらいました。

岡本淳生 さん

整理収納アドバイザー、ルームスタイリスト、マクラメ講師。収納やインテリア、DIYなど、家づくりを楽しむコツを発信するインスタグラムが人気。

Photography/上原未嗣 Text/ 赤木百(Roaster) Illustration/谷水佑凪(Roaster)