Dolive Doliveってなに?

DATE 2022.05.24

目黒でヴィンテージショップ「POINT NO.39」を営む杉村聡さんが妻と犬2匹と暮らすのは、フルリノベーションした古いビルの4階。

1階にあるショップと同じく、自宅も古いものに囲まれています。古いビルで、ヴィンテージの家具とともに暮らす、杉村さんの家づくりの方程式を紐解いていきます。

家づくりの方程式
築50年のビルの一室を
リノベーション
あえて床を剥がしたままに
仕上げたリビング
国、年代、サイズもバラバラな家具を合わせる

目黒区の築50年以上のビルにある杉村さんの自宅は寝室、リビング、キッチンにわかれた約69㎡。リノベーションの際に床と天井を抜いているので、空間に高さがあり、実際の面積よりもかなり広く感じられます。

部屋の中には造作家具からヴィンテージの家具や雑貨まで、杉村さんの好みを生かしたインテリアが気持ちよくミックスされています。

築50年のビルの一室をリノベーション
 

方程式
1

このヴィンテージマンションとの出合いは12年前。「それまで別の場所で小さい店をやっていたのですが、目黒通り沿いにショップを構えたくて。半年くらい探して、このマンションの2階を見つけました。それから3年後、近所にもう1店舗をオープンさせ、さらに2年後、1階が空いたので、2階から店を移しました」

そのタイミングでビル自体のオーナーが変わり、倉庫になっていた4階に入居してくれないかと打診されたそう。そこで、好きにリノベーションしていいという条件で住み始めることに。

「もともとは田の字形に和室が並ぶつくりでした。間仕切りをすべて取り払い、寝室、リビング、キッチンとシンプルに3つの空間にしました」

間取りは大きく変えましたが、築50年のマンションらしいヴィンテージ感のある要素はそのまま再利用。例えば、キッチンは、もともとあったガラスブロックはそのまま残しているそう。

「窓のフェンスも装飾がかわいいのでそのまま残しました」。入居時にオーナーがつけてくれたという寝室へと続く鉄扉とも雰囲気があっています。

あえて床を剥がしたままに 仕上げたリビング
 

方程式
2

リノベーションの際に部屋ごとの壁を取り払った後、床と天井も抜くことにしたそう。もともとの床の高さは、玄関を入ってすぐのフローリング部分。それを抜くことで15cmほどレベルがダウンしました。さらに天井板を抜いたことで天井も20cmほどアップ。上下の高さを広げることで、空間がより大きく感じられるようになりました。

床を抜いて出てきたのはデコボコしたコンクリートの床。「想像よりデコボコしていたので、最初は住めるかな?と心配した」そうですが、あえてきれいに整えずそのままの味を生かすことに。

実は杉村さんはアウトドア好き。以前、住んでいたマンションには部屋よりも広いテラスがついていて、そこでお茶を飲んだり、植物を育てたり、屋外生活を思い切り楽しんでいたといいます。

「今の家はテラスがないのがちょっと難点だったのですが、床を抜いてデコボコをそのままにしたら外っぽくなった。そこで植物を置いて、部屋の中でも外を感じるアウトドアリビングをテーマにしました」

国、年代、サイズもバラバラな家具を合わせる
 

方程式
3

アンティークショップのオーナーならではのこだわりは、時代やデザイナー、国や年代に関係なく、良いと思った家具を取り入れること。

リビングに置かれた家具も、国や年代はさまざまです。「ソファはアメリカの1960年代のもので、もともと布張りだったのを革に張り替えました。テーブルは40年代のフランス製」

「ダイニングのオーク材のテーブルと椅子は、60年代のアメリカのものです」

「ダイニングの家具に合わせて、リビングのシェルフはオークを使って自分で作りました。棚板と板のまわりの縁はホームセンターに売っていたものをペイント。真鍮のパイプはうちの店のオリジナルで販売している照明のパーツを利用しました」

「ひとつの部屋にいろいろな要素が混ざっていますが、それは、僕が一方向のスタイルにまとめるのがあまり好きではないから。家具も高さや奥行きを合わせるのではなく、わざとデコボコさせるほうがワクワクします」

「ベッドは大きければ大きいほどいいと思って、アメリカでフレームだけ探してきました。台のスノコは日本のマットレスのサイズに合うよう自作。2台ありますが、あえて違うものにしています。このミックスする感覚は、店の品揃えとも共通していると思います」

杉村さんのショップの品揃えは、一言でいえば1920年代のニューヨークをイメージしているとのこと。

「ジャンルとしては“イクレクティック”と呼ばれるもので“雑多な”というような意味。そのおかげで買い付けが広範囲にわたって大変なことになっているのですが、やっぱりそれが好きなんですよね(笑)」

年代も国も異なるものをうまく組み合わせるコツは「つながりをもたせること」と、杉村さん。オークや真鍮のように、家具で使われている材質を揃えたり、意匠を近いものにしたり。また、国の位置が近いものから順に、地図を広げるようにつなげていくのもひとつの方法。

また、アンティーク家具の良さは「キズすら味になること」だと言います。

「新しいものやモダンなものだときれいにしていないと落ち着かないし、キズがつくと台無しになってしまう。けれど、古いものはキズも味になる」

今では、まっさらなものより修理した痕があるものにグッとくるのだそう。

「昔から手を動かすことが得意で、車も家具も修理するのが好きなんです。だから修理痕があると、つい見入ってしまう癖があります。美しく丁寧に修理されていたり、下手でも愛情を持って直していたりすると、たまらなくいいなあ、と思ってしまうんです」

そういった家具を買い付けで見つけると、自宅に持って帰って愛でる対象に。それもまた、ヴィンテージショップをやっているからこその密かな楽しみのようです。

(方程式のまとめ)
ヴィンテージの雑多さも経年変化も丸ごと楽しむ

古いビルを自由にリノベーションしたアウトドア感のある空間には、自身が営むショップでも扱うヴィンテージ家具が、年代、国、サイズを問わず置かれています。さらには経年によるキズや修理痕さえ愛おしさの対象に。杉村さんの家を構成する3つの方程式を掛け合わせると、古いものや空間の持つ魅力をさらに素敵にするコツが見えてきます。

杉村聡さん

インテリア好きが高じて、家具業界へ。目黒にて1920〜70年代のヴィンテージ家具や自転車などを扱うショップ「POINT NO.39」を主宰。オリジナル照明も製作し、近所には照明専門店「POINT NO.38」もある。

Photography/上原未嗣 Text/ 三宅和歌子  Illustration/谷水佑凪(Roaster)