THE BELLWOOD
東京都渋谷区宇田川町41-31
TEL : 03-6452-5077
営業時間 : 18:00〜2:00
無休
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バーを中心に国内外で飲食店を企画する会社で5年間、マネージャーを努めていたオーナーバーテンダーの鈴木敦さんが、満を持してここをオープンしたのが2020年6月のこと。約15坪とスペースは決して広くありませんが、さまざまな仕掛けが用意され、その世界観には大きな広がりがあります。エントランスを入ってすぐのオープンな客席の奥にガラス張りの小部屋があり、そこで特別な食を楽しむことができるという二重構造や、バーには珍しいオープンキッチンも用意。日常とつながりながら、非日常感を楽しめる。そんなユニークさに満ちています。
木の質感と赤を基調としたオープンな空間では、お酒以外のドリンクや軽食をとることも可能。さらに小部屋では、予約制で火曜と水曜にはカクテル6種と6種のアテのマリアージュを楽しめるカクテル会席、その他の曜日では寿司とカクテルを合わせた夜寿司を提供。バーという範疇におさまらない喜びを堪能できます。
モダンボーイ、モダンガールが街を闊歩していた大正時代。「THE BELLWOOD」には、その当時を思わせるモチーフがあちらこちらに施されています。それは鈴木さんのバーに対する思いを込めたものでもあります。
「クラシックカクテルが好きになったのをきっかけにそもそも日本のバーの始まりってなんだろうと調べていたら、この時代が外せないことに気づいたんです。バーはアメリカ発祥の文化。それが日本に登場したのが大正時代だったんです。この頃って、新しいものやカルチャーが次々と入ってきて、進取の気性に富み、自由な風潮が高まっていました。そういう力強さを自分の店にも取り込みたいと思ったんです」
また、インテリアデザインを担当した「WHOLEDESIGN」の杉山敦彦さんはこう言います。
「かつて満州鉄道総裁の家が広尾にありました。伝統的な日本の建物に洋の要素を加えた和洋折衷なのですが、和の要素が強めで、それが格好良かった。ここを作るときも単なる和洋折衷ではないものにしたかったんです。僕らはリアルに大正時代を体験したわけではないので、とことん架空の世界でそれらしさを出そうと思いました」
その一つがヨーロッパの壁紙を張った壁。
「実際にはこういう壁紙は使っていなかったと思います。でも当時、ヨーロッパから輸入したものなのかな?とか、もっと古い時代にシルクロードから流れてきて京都の古物商のところにあったものなのかな?など、これを見るだけで想像がふくらんでいきます。そういうストーリーを感じさせる装飾を取り入れるよう意識しました」と、杉山さん。
オリジナルで制作したステンドグラスも同様で、当時のものをそのまま写すのではなく、一捻り加えることで、架空だけどリアルという独自の世界観を作り出しています。
内装の中心となる素材は木ですが、これらはアンティークやヴィンテージではなく、現代のものにエイジング加工を施したものがほとんど。
カウンターに使われた幾何学模様のパネルも現行品の中から選んだもの。流行とは関係なく、自分の好きな時代やデザインを突き詰め、それに合ディテールを組み込んでいくことで、唯一無二のスタイルが生まれる。この店は、その好例でもあります。
決して広いとはいえないスペースに、いろいろなステージがあるのもこの店の特徴です。
入り口を入ってすぐはカウンターとテーブル席のあるオープンなスペース。テーブル席も壁際や窓際などあらゆる方向に設置されているので、それぞれにお気に入りのコーナーを見つけることができます。さらに簡単なキッチンもついた特別な小部屋は、鈴木さんがぜひ、作りたかった空間だといいます。
「この作りは駄菓子屋さんからのアイデア。僕は葛飾の柴又で生まれ育ったのですが、子どもの頃、駄菓子屋さんに行くと手前にお菓子売り場があって、奥に店主の住まいでもある、もんじゃ焼きなどが食べられる座敷がありました。一つの空間にまったく違う2つの遊び場があるんです。奥の部屋には毎回、入れるわけではないのですが、入れたときはどことなく誇らしい気持ちになりました。それをこのバーでもやりたかったんです」
このルーム・イン・ルームも、家づくりの参考になる発想。子どもの遊び場や書斎、ペットの部屋といった、ちょっとスペシャル感のある目的を引き受ける空間として活躍してくれそうです。
15坪の広さに動線や客席数、居心地の良さを考えて家具を配置する上で、もっとも気を配ったのがサイズ感だといいます。そこには、内装設計をした杉山さんならではの絶妙な計算があります。
「テーブルの奥行きは通常より狭いと思います。でも、飲み物と軽食を置くには十分。大きくしたからといって盛り上がるバーができるわけではない、というのが僕の考えなんです。おもてなしにはゆったり優雅に、というのもあるけれど、人生で一番盛り上がった飲み会を思い出すと、ほとんどの人は友人たちと席を詰め合いながら飲んだときなんじゃないかと思うんです。人の密度と記憶は比例すると思っていて、ここは賑わってほしい店なので、人との距離が詰まっていながら心地よいと思える家具のサイズやレイアウトになるよう、すごく気を使いました」
自分の体型に合った服を選ぶように、空間に合った家具を選ぶのも大切なこと。サイズと空間のバランスがぴったり合うと、ちぐはぐ感がなくなりスタイリッシュさもアップします。
東京都渋谷区宇田川町41-31
TEL : 03-6452-5077
営業時間 : 18:00〜2:00
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Photo / 川村恵理 Text / 三宅和歌子