Dolive Doliveってなに?

DATE 2022.07.27

実家として住んでいたビルの一室をリノベーションした、会社員でクリエイターの田辺美那子さん。ポップな色や有機的なフォルムの家具が集まる部屋は、奇抜ではありますが、統一感があり、ひとつの世界観を作り出しています。

そして、そこにはちゃんとルールも。好きなものだけに囲まれた田辺さんの家づくりの方程式を紐解いていきます。

家づくりの方程式
ビルの一室を家具に
合わせてリノベーション
基本色と差し色、
色数を決めて統一感を出す
アバンギャルドな
個性派コレクション

オフィスビルが立ち並ぶ東京の中心地。その一角にある築40年のビルの最上階が田辺さんの実家です。2021年3月に家族で住んでいた広い部屋から、ひとりで住むための別の部屋へと移動。そして、自分だけの好みを生かした空間へとリノベーションしました。好きなものを妥協せずに集めた、理想の家の完成です。

​​ビルの一室を家具に合わせてリノベーション
 

方程式
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どっしりした構えのビルの最上階。もとの部屋の内装は白い壁とフローリングにカーペットを敷いた、ごく普通の造りだったそう。

「曽祖父の代からこの土地に住んでいて、ビルは曽祖父が亡くなる前に建てたもの。昨年、両親と暮らしていた部屋から隣の部屋にひとりで引っ越しました。その際に、間取りは変えずに床、壁、天井を張り直し、トイレやお風呂といった水回りも一新しました」

壁と天井を張り替えた玄関

この部屋のイメージはリノベーションをし始める頃にはすでに固まっていたそう。この部屋で目を引くミッドセンチュリー期の家具やポストモダンな小物たちに合わせて、床の素材や壁の色を決めていったと言います。

ミッドセンチュリー

第二次世界大戦後、新たな技術や素材が次々と誕生した1940〜60年代に出てきたデザイン。アメリカで活躍したエーロ・サーリネンやジョージ・ネルソン、チャールズ&レイ・イームズのほか、デンマークのヴェルナー・パントンらのデザインが有名。

ポストモダン

1970〜80年代に合理的なモダニズムに対する反動として生まれたポストモダン。イタリアを中心に活動したデザイン集団「メンフィス」を中心に、装飾をふんだんに用いた個性的なデザインが花開いた。メンバーにエットーレ・ソットサス、倉俣史朗らがいた。

「リモートワークを機にインテリアに興味を持つようになり、雑誌の家特集などをよく眺めていました。2020年の年末に発売された『POPEYE』にイタリアの男の子の家が掲載されていたのですが、それがすごくかわいかったんです。ミッドセンチュリー期の家具が置かれていて、スペーシーな雰囲気もある。自分が好きなのはこういうテイストなのだと確信しました。そこからいろいろリサーチをして、家具もこの部屋のために買い揃えました」

スペーシー

アポロ計画など人類が宇宙に夢を馳せていた1950〜70年代のスペースエイジを彷彿とさせるデザイン。金属やプラスチックなどの素材、抽象的なモチーフや幾何学的なフォルムが用いられ、ワクワクするようなテクノロジー感が満載。

家具を引き立てるため、床は黒と白の市松模様になったタイル張りに。「ちょっと光沢のある大理石風なものを選びました。そして、壁と天井の色はミントグリーンに。雑誌に載っていたイタリアの男の子の家をそのまま真似したわけではないけれど、イメージはかなり近いと思います」

基本色と差し色、
色数を決めて統一感を出す

方程式
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田辺さんの家に溢れるミッドセンチュリーの家具。エーロ・サーリネンの一本脚の丸いダイニングテーブルと『チューリップチェア』、ヴェルナー・パントンがデザインした完全一体成形の『パントンチェア』、チャールズ&レイ・イームズのハンガーラックなどが置かれています。

「ミッドセンチュリーや1970〜80年代に盛り上がったポストモダンといわれる時代のデザインが大好きなんです。この頃のものって、デザイナーたちが楽しんで作っていたんだろうな、と思うワクワク感があって、そこに惹かれるのかも」

パントン風のラグをオーダーメイド

チャールズ&レイ・イームズのハンガーラック

ただし、ひとつひとつが個性的で主張が強いのも特徴。それらをミックスさせてまとめるコツを、田辺さんはこう教えてくれます。

「まずは色。白、黒、シルバーをベースに差し色として赤を入れています。色をたくさん使うとどうしてもゴチャついてしまうので、赤と決めたらなるべく赤で揃える。また、1個ではなく、できるだけ複数集めると馴染んできます。たくさんあるとそれなりに見えてくるんです」

そして、集めたら「恥ずかしがらず、ぎゅうぎゅうに飾る」というのもポイントだそう。

アバンギャルドな個性派コレクション
 

方程式
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田辺さんのコレクション。棚中央には〈エモー・ドゥ・ロンウィ〉の目玉が描かれた花瓶。その右横には酒井智也の生き物のような陶器オブジェ、瀧下和之の鬼のオブジェがあります。奥は倉俣史朗のワイングラス形照明『SAMBA-M』、岡本太郎の『太陽の塔』ミニチュアなど。

田辺さんの部屋を特徴づける膨大なコレクションには、20世紀デザインのものだけでなく現代作家のものもあり、そのテイストも一貫しています。

「中学・高校の頃からシュールレアリズムやロシアアバンギャルド、横尾忠則さんの絵などにキュンとなっていました。当時から、こういうシュールだったり、非現実感のあるもの、アバンギャルドなものに惹かれる素地があったのかもしれません」

食器も古伊万里や、ジオ・ポンティの〈リチャード・ジノリ〉、〈セレッティー〉と〈トイレットペーパー〉のコラボ皿など、絵柄に特徴のあるものが揃っています。

高校生までは美術部に所属して絵に没頭していたという田辺さん。大学は薬学部へ進んだものの、やはりアートやファッションが好きな気持ちを抑えられず、百貨店に入社。趣味で続けていた絵は、アトリエ専用の部屋をつくったことで本格化したそう。仕事をしながら油絵を描き、個展も開催しています。好きなものを諦めない。その気概が部屋にも表れているといえそうです。

(方程式のまとめ)
空間全体でひとつの世界観をつくる

アートもインテリアも自分の好きをとことん深堀りする。そして、インテリアが引き立つよう、壁や床の色を変えてリノベーション。田辺さんなりの家づくりの方程式を掛け合わせることで、カラフルだけど落ち着ける、ひとつひとつのものは個性的だけど全体的にはまとまっている、自分の世界に没頭できる空間になりました。

田辺美那子さん

百貨店勤務。中学生の頃から美術部に所属。今も絵を描き続けている。部屋の中には同時代作家の都築まゆ美、金山藍、ワタベカズらの絵が飾られている。

Photography/上原未嗣 Text/ 三宅和歌子  Illustration/谷水佑凪(Roaster)