Dolive Doliveってなに?

DATE 2023.12.12

木とコンクリートで造られた、内外の境界線が曖昧な平屋。
数十年先をも見据えた家づくり術。

一度見たら憧れる、おしゃれでこだわりが詰まった家。でも、「そんな家ってどうやったらつくれるんだろう」「建築のプロじゃないとつくれないのでは」と感じている人もいるのでは。“あの人の家づくり手帖”は、個性的な家をかたちにした経験者から具体的な家づくりアイデアを伺う企画です。

今回登場いただくのは、静岡にあるのどかな住宅地に一軒家を建てた牧田さん一家。「azmaya house(あずまや はうす)」と名付けられたこの平屋には、夫婦のこだわりやライフステージの変化を見据えたさまざまなアイデアが込められていました。

ひとめぼれした家から、依頼する設計士を決定

牧田さん一家は、幸二さんのご両親が所有する90坪ほどの土地を譲り受けたのを機に、夢だった一軒家を建てることになりました。夫婦で家づくりについて話し合うなかで、デザインにこだわりたいという奥さま・知里さんの思いから、設計士とともに一から家づくりをすることが決定。

「もともと平屋に憧れていたのと土地の広さにゆとりがあったので、平屋にするのは決めていました。よくあるスタンダードな家ではなく、人とはちょっと違うデザインにしたかったので、設計士さんに依頼することにしたんです」(知里さん)

たまたま手に取った雑誌で見つけた平屋に一目ぼれし、設計したmA-style architectsの川本まゆみさんに依頼することを即決したといいます。そこから1年半にわたって、牧田さん一家の家づくりがはじまりました。

「見つけた平屋は庭を広く取ったコンクリート造りの平屋だったんですが、私の好みと建築予定だった土地の雰囲気にぴったりで。すぐ川本さんに連絡して、土地を見ていただいてから私たちのこだわりをヒアリングしていただきました。それからはほぼお任せでしたね」(知里さん)

完成した家は、公園にある東屋をイメージして「azmaya house」と名付けられました。そこには土間リビングや庭と対面したキッチンなど、室内にいながら外を感じられるさまざまな工夫が。夫婦の理想が形にした、多彩なアイデアを覗いてみましょう。

家づくりアイデア①
木とコンクリートで構成された、内外の境界線が曖昧な開放感のある空間。
≪キーワード≫
#夫婦での家づくり #素材選び #コンクリート #ラーチ合板

設計士・川本さんとのヒアリングでは、どんなことが好きか、どんな暮らしがしたいかなど、感覚的なことを話すところからスタート。くわえて夫婦のこだわりたいポイントを伝えたといいます。「好みのデザインや収納に関しては、妻とまったく意見が合わなくて(笑)」と、幸二さんは振り返ります。

「僕は木を使った温かみのあるテイストが好きなんですが、妻はコンクリートを主としたモダンな雰囲気が好みで。収納についても、僕はモノを見せたかったんですが、妻はできるだけ隠したい派。結果的に、上手くバランスを取っていただきながらこの家が完成しました」

基礎となるコンクリート&本来は石膏ボードやクロス下の構造となるラーチ合板を生かすことで、コスト面も抑えられたそう。

「ラーチ合板は傷が目立たないのもよかったです。写真やカレンダーを画鋲で留めたり、釘を打ってカウンターをつくるときにも気を使わなくていいですから」(幸二さん)

リビングは玄関からひと続きの土間にし、外と中の境界線を曖昧に。

「土間リビングは床がコンクリートなので、温水式の床暖房を完備。周りをガラス張りにしたことで自然光もよく入り、暮らしながら中と外が調和しているのを体感します」(幸二さん)

家づくりアイデア②
ライフステージに合わせて自由に変えられる、
家の中心に水回りを集めたドーナツ型の間取り

≪キーワード≫
#開放感 #家の中心に水回り #間取り

のどかな住宅地というロケーション、ゆとりのある土地、アウトドア好きな一家のライフスタイルを踏まえ、「東屋」をコンセプトにつくられた牧田邸。

「提案いただいたのは、公園のなかにある東屋のような、内外をシャットアウトせずに繋がりを持たせる家。水回りを家の中心部に据え、その周りをぐるっと一周できるドーナツ型の構造になりました。真ん中にある水回りのスペースを支柱として、その上に屋根をすとんと載せたような設計になっているんです」(幸二さん)

日本の家は梁と柱で家を支える在来工法が一般的ですが、牧田邸は細い材料で屋根をワッフル状に組み、垂直面をつなぐ支えとなる柱(筋交い)を窓に沿って斜めに組んだ「ワッフルワイドスラブ工法」を採用。筋交いが梁の役割を果たしてくれるため、室内スペースに梁や柱を設ける必要がなくなり、天井も高く取れて空間を最大限に広く使えるようになりました。

「無駄なスペースがほぼないので、とても開放的なんです。この筋交いは構造上必要なものではありますが、どこかデザイン性があっておしゃれですよね」と、牧田さん夫妻。

部屋ごとの仕切りをほぼつくらずに、4畳半のグリットを連続させる形で間取りが設計されているのも特徴。空間ごとに区切ってリビング、寝室などと各部屋の役割を決めるのではなく、ライフステージに応じて変更できる自由自在な造りとなりました。

「仕切りがないので風通しもよく、過ごしやすいんですよ。そして建てたときの家族構成ありきではなく、変化に対応できるという発想にはなるほど! と思いましたね。子供が巣立ったら子供部屋を寝室にしたり、ワークスペースを収納にするなど、いかようにも変化させることができるんです。仕切りを設けないことで建具費もカットできました」(知里さん)

家づくりアイデア③
アウトドア気分が味わえるテラスに面したキッチン&
空間にゆとりを持たせる造作カウンター

≪キーワード≫
#キッチン #リビング #収納 #土間

キッチンや収納にも、牧田さん夫妻のこだわりが反映されています。キッチンは料理好きな幸二さんのリクエストのもと、シンクに面して庭側にカウンターをつくり、外とつながりを持たせた仕様に。

「キッチンの外にバーベキューができるテラスがあるんですが、シンクに面した窓から出きたての料理を出したり、洗い物を受け取ったりできるようになっています。冷たいビールも温かいものもすぐに出せるなんて、最高ですよね。いずれ、ここでカフェを開くのもいいんじゃない? なんて妻と話をしています(笑)」(幸二さん)

「キッチンのカウンターは5.4メートル。一般的な住宅のキッチンの約2倍あるので、本当に料理好きとしては嬉しい限りです。食洗機やガスオーブンも設置し、シンクはフライパンを2つ並べて置けるサイズをリクエストしました。こうした細かな部分に関して理想を詰め込めるのも、家づくりの醍醐味ですよね」(幸二さん)

棚を使った見せる収納も、幸二さんの希望でした。

「妻はなるべく生活感を出したくないと言っていたので、僕のこだわりが詰まったキッチン周りに関しては、見せる収納をつくっていただきました」

そして室内の各所に窓側を向いた作り付けのカウンターを設けることで、仕事や作業中も常に外を感じながら暮らせるようになっています。 「カウンターは基礎と同じコンクリートの天板。デスクや作業台としてはもちろん、椅子を持ってくればテーブルとしても機能するので、なかなか便利です。下は収納にもなりますしね」(幸二さん)

「このカウンターがあれば余計なテーブルを置かずに済むので、我が家にはダイニングにしかテーブルがないんですよ。室内がより広く感じますし、のびのびと過ごせていますね。既製品や新たに何かを造るのではなく、限られた材料のなかで何ができるかを考えてくださった設計士さんには、感謝しかありません」(幸二さん)

もっと知りたい、牧田さん宅のアイデア
もみじの木を中心に、芝生を張り巡らせた庭。山から採ってきた木を用いることで、“東屋”にマッチする自然な表情のある庭に。
異種素材を接合させるホームコネクター工法。木の温かみとスタイリッシュなコンクリートを合わせたデザインが実現。家の基礎に当たるコンクリートを地上まで立ち上げ、内壁は構造のラーチ合板を見せるという工夫がなされています。
「つくれるものはなるべく造作した」という牧田邸。トイレのなかも、壁面の板を利用したユニークな見せる収納になっています。
各所のスイッチには、壁の素材に合わせたカバーを。ラーチ合板の部分は同じ板をくり抜いた造作、コンクリートの面についているものはすべてシルバーで統一されています。

「家を建ててから、あまり出かけなくなったんですよ。室内に外とのつながりをつくったことで暮らしの余白ができたのと、料理や日常大工を思う存分楽しめるようになったからだと思います」と幸二さん。家という場所に対する価値観も変わったといいます。

「アパート暮らしのときは家でくつろぐという感覚がなく、ご飯を食べたり寝る場所という位置付けでした。それがここに来てから“暮らし”に変わったというか。ちょっとした惣菜を買ってきてテラスで食べたり、庭いじりをしたり、自然とここで何かしようという気持ちになって、おのずと過ごす時間が長くなったんです」(幸二さん)

「空間の自由度が高いぶん、この家でどう暮らしていくか考える楽しみもできました。先ほども話しましたが、子供が巣立ったらカフェにしてみようか? なんて。コンクリートやラーチ合板は年月が経つほど味わい深さも出ますし、完成したときがゴールではないんだと、家づくりを進めながら実感しましたね」

理想の暮らしと夫妻のこだわりが一つになった牧田さん邸は、これからどんな歩みをしていくのでしょうか。

シミュレーション
Doliveアプリで二軒目どうですか?

充実した暮らしをおくる牧田さん一家ですが、もしセカンドハウスをつくるとしたらどんな家になるのでしょう?
自由自在に家づくりが楽しめるDoliveアプリで、理想のセカンドハウスをシュミレーションしてもらいました。

まずは家を建てるロケーションをビーチ、マウンテン、シティの3つからチョイス。アウトドア好きの牧田さん一家らしく、迷わずマウンテンスタイルに決まりました。

「キャンプに行くのが好きなので、緑があふれる自然のなかというシュチュエーションには憧れますね。あと最近、犬を迎えたいねと家族でたびたび話しているので、わんちゃんも一緒に暮らすことを考えてもマウンテンがいいかな。庭いじりやモノづくりも楽しめそうなので」

ベースとなるのは、片流れになった屋根が特徴的な「NIHON NOIE PROJECT by SOU・SOU」

ベースとなる躯体は、知里さんのセンスで黒い三角屋根がシンボリックな「NIHON NOIE PROJECT by SOU・SOU」に。「ダークな屋根がかっこいい」、「2階建てだし、ベランダも追加しよう」と、家族3人で話しながら家づくりは進みます。

「ガレージとつながっているアプローチがいいなと思い、屋根はガレージ付きの屋根に変更しました。外壁は汚れも目立たなそうな、ダークブラウンの木を縦張りに。それに合わせて、窓枠も木製にしました。クラシカルで男前な家になってきましたね」と、幸二さん。「いつかうちにも、作業場として使えるようなガレージを増築したいなぁ」と、セカンドハウスを考えるうちに「azmaya house」の増築プランまで浮かんできたようです。

「庭のテラスから雨に濡れないような通路を延ばして、ガレージがつくれないかな……。壁に日曜大工用の工具をぶら下げたり、アウトドア用品を置いたりしたいですね」(幸二さん)

「アプリの操作性も簡単!」と話すのは知里さん。

「家のイメージが具体的に沸いてきます。高いところに窓があって自然光が入るのもいいな、こうした素材の組み合わせもありなんだな、とか。室内のイメージはかっこいい一択で、床と階段の踏み板はモルタルに。壁の素材が2種類になっているのもおもしろそうなので、左側はオーク色をした縦張りの木、右側はモルタルとも相性のよさそうなグレーの壁紙にしてみました」(知里さん)

こうしてできあがったのは、温かみとモダンな雰囲気が融合したセカンドハウス。「思うままにつくっていきましたが、いま住んでいる家との共通点がたくさんありますね」と夫妻は笑います。我が家への愛しい気持ちが反映された一軒となりました。

今回シミュレーションで使ったDoliveアプリ。理想の家を具体的にシミュレーションできるほか、いろいろな人の家づくりや暮らしのヒントに触れることができます。あなたも一度使ってみてはいかがでしょうか。

photo/川村恵理 text/金城和子