Dolive Doliveってなに?

DATE 2024.04.23

壁もキッチンもOSB合板に。
廊下をなくした、暮らしやすさと遊び心のある家づくり術

一度見たら憧れる、おしゃれでこだわりが詰まった家。でも、「そんな家ってどうやったらつくれるんだろう」「建築のプロじゃないとつくれないのでは」と感じている人もいるのでは。“あの人の家づくり手帖”は、個性的な家をかたちにした経験者から具体的な家づくりアイデアを伺う企画です。

今回は建築デザインのアドバイザーとして活躍する、佐藤陽亮さんのご自宅にお邪魔しました。家族が増えことをきっかけにマンションを購入し、フルリノベーションを施した佐藤さん。壁やキッチンにはOSB合板を使用し、遊び心と実用性を兼ね備えた雰囲気に。家族の関わりと暮らしやすさをかなえる、空間を大胆に使った家づくりのアイデアについて伺います。

リノベーションしやすい、おもしろ味のある間取りを求めて。

家族が増えことをきっかけに、マンションの購入を決めた佐藤さん一家。リノベーションを前提に物件探しをはじめ、両端に窓がある横長の間取りが気に入って、この物件に決めたそう。

「物件選びで重視したのは、リノベーションのしやすさとプランのおもしろさ。ここは築39年経っていますが、鉄筋コンクリート構造であれば如何ようにもできるので、築年数や資産性にはこだわりませんでした。もう一つの決め手は、風通しのよさ。内見したときに両端の窓を開けたら、すごく気持ちよくて。70㎡と広さも十分ですし、直感的に住みやすそうだと感じたんです」

前職で7年半、賃貸マンションのリノベーションなどに携わっていた佐藤さん。家づくりにあたっては信頼するデザイナーと内見しながら、部屋のイメージを膨らませていったそう。

「家事導線については夫婦で話し合いましたが、デザインに関しては任せてくれたので、全体の雰囲気は僕が担当しました。工事は、2ヶ月くらいかけてじっくりと設計プランを詰めてからスタート」

こうして着々と進んでいった佐藤さん宅のリノベーション。築39年、元3LDKの部屋はいかにして生まれ変わったのでしょうか。

佐藤さん宅から紐解く、家づくりアイデア

家づくりアイデア①
廊下を設けず、家の中心をフリースペースに。
≪キーワード≫
 #フリースペース #廊下がない家 #6mの長テーブル

はじめに決めたコンセプトは「廊下がない家」。2人の子供たちが一人で出かける年齢になったときに、共有スペースを経由して自室に行く造りを考えた結果、そうした発想に至ったといいます。

「玄関から自室に直行できる造りだと、家族同士がいつ帰ってきたか分かりにくいですし、『ただいま』『おかえり』といったコミュニケーションって些細なんですけど、すごく大切だと思うので。廊下がなければ、無駄なスペースも省けますしね。なのでまずは、家の中心部にある廊下スペースをどう活用するかデザイナーと話し合いました」

目指したのは、スペースを無駄にせず、暮らしにおいても効率のいい使い方。試行錯誤を重ねて浮かんだのが「家族みんなが使える多目的スペースにする」というアイデアでした。家の中心に6メートルもの長テーブルを据え、結果的にそこが家族の集まるスペースになったそう。

「長テーブルは、杉をプレスした構造用合板を使って造作したもの。真ん中に置くことで、ビジュアルとしてもおもしろ味が出ましたね。このテーブルで仕事をしたり、子供たちと一緒に趣味の工作をしたりと、結果的に自然と家族が集まる場所になって。テーブル上のラックスペースに家族でつくった工作物やフィギュアを飾ったりして “何かをする場所”兼、家族の個性が見える“見せる収納”という役割も担っているんです」

多目的スペースは、寝室の扉を閉めることで、暮らしの場からパブリックな雰囲気に早変わりするのもおもしろいところ。

「寝室の扉を閉めると、ぐっと雰囲気が変わりますよね。ちなみに寝室は、ゆくゆく子供部屋にする想定でプランを考えました。子供部屋に再度リノベーションするときは、隣り合っているストレージと合体させて、夫婦の部屋と子供たちそれぞれの部屋との3部屋にできたらと考えています。場合によっては、このリビングを夫婦の寝室にしちゃってもいいですし。壁を設けない1LDKにしたことによって、ライフステージに応じたアレンジをしやすくなりました」

家づくりアイデア②
素材は空間をアップデートしやすいOSB合板を中心に。
≪キーワード≫
  #OSB合板 #DIY #キッチン

間取りだけではなく、素材使いにも注目です。メインで使っている素材はOSB合板。「ビスを打っても目立たないため、日々小さなアップデートをしやすいのが魅力です」と佐藤さんは続けます。

「ちょっとしたフックや、マグネットで子供作の絵なんかを貼れるスチール版を付けたりと、完成後もプチDIYを楽しんでいます。長く暮らしていると壁などの傷が気になりがちですが、OSB合板であればほとんど目立ちません」

キッチンや食洗機も、既製品に4ミリの同じOSB合板を張ってDIY。 「キッチンは造作する選択肢もありましたが、やはりメーカー品のほうが性能も安心だと判断しました。油や水はねが気になる場所なのもあってで、OSB合板を採用する家庭は珍しいんですよ。我が家ではコンロをIHにするかつ、OSB合板全体に厚めのウレタン塗装を施すことで、劣化しないようケアしています」

「天井はコンクリートを剥き出しに。鉄筋コンクリート構造のマンションなので、せっかくなら天井を剥き出しにして見せたいなと。窓辺などの外気に触れるところは結露の問題があるので、そのあたりのみ下地に断熱材を入れ、ボードを塗装仕上げしています」

家づくりアイデア③
時短をかなえる間取りと、デッドスペースを活用した収納アイデア。
≪キーワード≫
 #家事動線 #DIY家具 #ウォークインクローゼット

「リノベーションにおいては、時短と収納がテーマでもありました」と佐藤さん。夫婦2人ともフルタイムで働きながら子育てをしているため、いかに効率よく生活できる家にするかというのも課題でした。

「洗濯機のそばにウォークインクローゼットを設けたり、食洗機の上によく使う食器を置く棚をつくったのは妻のアイデア。スタメンの食器は出し入れがしやすい表の棚に、来客用の食器類は引き出しの中にしまっています」

「洗濯機とウォークインクローゼットを隣り合わせるアイデアは、なるほど!と思いましたね。同じ空間で洗濯と衣服の収納が完結するので、すごく便利なんですよ。くわえてウォークインクローゼットに関しては、内部もひと工夫しました。リビングと同じ温かな電球色だと外に出たときに色の見えかたが違ってくるので、ここだけ中の照明を太陽光に近い白色LEDにしたんです。コーディネートして外出したときにギャップを感じることがあるのは、服選びするスペースの照明が関係していたりするんですよね」

リビングの床をはじめとするデッドスペースを徹底活用した収納や、自らDIYした収納付きのダイニングテーブルもこだわりです。実用的でありながら遊び心もある、工作好きな佐藤さんらしいアイデア。

「ダイニングテーブルは2000円くらいで買った穴の空いている天板に、元々持っていたサイクロンテーブルの脚を付けました。天板のDIYは、僕が。ウレタンを塗ってやすりをかける作業を5回くらい繰り返しました」

もっと知りたい、佐藤さん宅のアイデア
「子供たちが大きくなっていまの寝室が子供部屋になったら、リビングを夫婦の寝室にしてもいいかな」と佐藤さん
右側の扉だけ回転扉にすることで、右隣にあるストレージの扉に当たらないかつ大きく開ける工夫がなされています
洗面台は、OSB合板を黒く塗装することで、雰囲気が変わり空間にメリハリが。ミラーをラウンド型にしたのは大工さんのアイデアだそう

空間を自然に区切って、より暮らしやすく。

廊下がなく玄関からひと続きの空間だからこそ、リビングを小上がりにしてメリハリをつけました。

「そのままフラットにしてもよかったんですが、共有スペースやキッチンとリラックスするリビングとを分けたくて。壁を設けると圧迫感が出るため、高さで自然と空間分けをしたんです。子供たちが腰掛けるにはちょうどいい高さなので、いまは縁側のように楽しめているところもあります」

高低だけでなく空間を分ける技、家全体にもさり気なくほどこされています。

「実は共有スペースの壁面は、数ブロックに分かれているんです。ワンブロックごとにOSB合板を30ミリ突出させて、キッチンと冷蔵庫、シェルフなどを区切っています。設計する前に入れる家具をすべて決めたので、こうした造りにすることができました。ぱっと見ただけでは分かりませんが、こうしたさり気ないメリハリがこの家の暮らしやすさを担っているところがあるかも」

「家族みんなで工作したり、僕らが仕事している横で子供たちが絵を描いていたり。自然と家族の関わりが生まれて実用性もある、そんな理想の暮らしが実現して毎日がすごく楽しいですね」と佐藤さん。

スペースを大胆に使いながら、素材や収納を工夫して利便性も兼ね備えた佐藤さんの家。そんな家づくりアイデアは、さまざまな暮らしに応用できそうです。

Doliveアプリには、あなたのこだわりを助けてくれるアイデアがたくさん。 気になった記事に「いいね!」を押して保存すると、後から見返すことができるあなただけのアイデア帖に。さらに理想の外観・内観をシミュレーションできる機能も搭載。具体的な仕様まで検討できるので、実際に家づくりを行う際のイメージとして活用できます。

気になった方は、ぜひダウンロードしてみてはいかがでしょうか。

photo/宮前一喜 text/金城和子 illustration/kozo