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DATE 2024.05.21

古いアメリカのスタイルとクラシカルなイギリスが同居。
趣味が詰まった、ワンダーランドのような家

一度見たら憧れる、おしゃれでこだわりが詰まった家。でも、「そんな家ってどうやったらつくれるんだろう」「建築のプロじゃないとつくれないのでは」と感じている人もいるのでは。“あの人の家づくり手帖”は、個性的な家をかたちにした経験者から具体的な家づくりアイデアを伺う企画です。

東京と神奈川を結ぶ私鉄沿線の駅から徒歩3分。三角形のビルに鈴木鉄平さんの家があります。躯体現しの物件をリノベーションして、ここに引っ越したのは2022年のこと。それまで住んでいた注文住宅を売却し、新たにアメリカとヨーロッパのテイストがミックスした、唯一無二の空間を作り上げました。大好きなディテールがふんだんに盛り込まれた部屋には、鈴木さん独自のスタイルが詰まっています。

リノベーションを前提に、躯体現しの空間を探す。

「この部屋は2022年4月に購入して、12月に引っ越し。前の家を売却し、次は?と考えたとき、自分の好きだったアメリカの古着屋のような雰囲気にしたいと思い、SHUKEN Reさんと一緒に躯体現しの物件を探しました。そうしたら、たまたま前の家の近所で見つかったんです。しかも、躯体現しはなかなか市場に出ないので、即購入を決めました」

天井スラブ、床スラブ、梁、柱、配管などが壁などで覆われず、すべて見えている状態のことを躯体現しといいます。

「高さを出すために天井を抜いたとして、出てきた配管があまり格好よくないという可能性もある。だったら、最初から見えているほうがいいと思ったんです」

内装のイメージは物件を購入する前から考えていたそう。
「実は本業をしながら、インテリアコーディネーターの学校に通っていました。そこでいろいろ学んでいくうちに、理想の部屋を作ってみたいと思ったんです」

そして、出来上がったのは空間ごとにテーマが異なるワンダーランド感満載の2LDK。細かいところまで手を抜かない、そのこだわりにフォーカスします。

鈴木さん宅から紐解く、家づくりアイデア

家づくりアイデア①
石、レンガ、木、ひとつの空間にさまざまな素材をミックスする。
≪キーワード≫
 #乱形石 #レンガ #壁紙 #タイル

タイル張りの玄関を入ると、すぐ右側に絵を描いたり、ギターを練習する遊び部屋があります。そことリビングは扉でつながり、奥にいくにつれダイニングキッチンになり、その裏側はバスルームなどサニタリースペースに。そして、三角形の頂点に当たる一番奥には寝室を設置。家全体が趣味の部屋といった、ワンダーランドのような内装が続きます。

絵を描いたり、ギターを練習する遊び部屋

タイルや壁紙で色鮮やかに飾られたサニタリースペース

そんなふうに空間にユニークさを与えている理由のひとつが、さまざまな素材をミックスしていること。遊び部屋の壁の一角には本物のレンガ。リビングにつながる扉を開けた右側の壁には、天然石をランダムに組み合わせた乱形石を。リビングの造作棚にはグッチの壁紙が家具の一部のように張られ、床にはアメリカから輸入したメキシコ産のタイルが敷かれています。

「床のフローリングもリビングはヘリンボーンに、寝室はパーケットに分けています。壁紙も各部屋に使っているのですが、遊び部屋はイギリスのアーツアンドクラフト運動のデザイナー、ウィリアム・モリスがデザインした『バチェラーズボタン』を。リビングの造作家具の背面と寝室のベッド上は、アレッサンドロ・ミケーレ時代の〈グッチ〉の壁紙を張り、サニタリーはおばあちゃんの家のような温かみを加えたくて、モリスの『フルーツ』をあしらいました」

ベッド上の〈グッチ〉の壁紙は額縁におさめ、壁全体ではなくポイント使いすることで、アートを飾るような効果をもたらしています。

家づくりアイデア②
部屋ごとにテーマを決めて、色相環で全体に統一感をもたせる。
≪キーワード≫
  #色壁 #照明 #キッチン

さまざまな素材を使いながらも統一感があるのは、部屋全体が色相環でまとめられているから。色相環とは色合いを輪状に配置したもので、色を体系化する際に用いられる方法の一つ。空間を移動するたびに次の色相へと移り、視覚的な流れが無意識につながりを感じさせてくれます。

「まず遊び部屋は、角のシャンデリアを象徴に、1960年代の古着屋にありそうな雰囲気で空間を作りました。小物類でアメリカ文化を漂わつつ、イギリスのクラシカルさも共存させるイメージに。空間をつなげるため、遊び部屋はコンクリートの壁をむき出しのままにして、作りかけのようなデザインにしています」

リビングの、自身でデザインした作り付けの棚はネイビーカラーに。そこからダイニングキッチンに移るにつれ、色相はブルーになっていきます。そして寝室のグリーン、サニタリーのイエローまで、色相が循環。色に規則性をもたせること。それが、たくさんの色を使っても乱雑にならないコツでもあります。

そんな鈴木さんにとって、リビングから寝室を眺めるビューはもっともお気に入り。
「リビングから一直線に奥の寝室が見えるよう、室内窓をつけて、扉は設えていません。ふつう寝室は隠すものだけど僕はあえて見せたい。色相の変化も一望できるこの眺めは、ほかにはないオリジナルのアイデアだと自負しています」

そのイメージのソースとなったのが、超お気に入りだというダイニングテーブルの上のペンダント照明。内側にリバティプリントをあしらった複数色のシェードが連なる、ドイツ・ミュンヘンのブランド〈KARE〉による『サルーンフラワーペンダント』です。

「この照明が吊るせるように、床のレベルを上げずに天井高を確保しました。こんなふうに色数のある家を作りたいと思った、原点となる照明です」

家づくりアイデア③
ディテールに至るまで世界観をくずさない。
≪キーワード≫
 #腰壁 #モールディング #ウォークインクローゼット

素材と色彩のほかにも、この家を特徴づけているのがディテールの精密さ。ひとつひとつを積み重ねることで、唯一無二感が増しています。

ひとつは腰壁やモールディング。
「腰壁やモールディングを作るというのもマストのアイデアでした。メルヘンチックになりがちなところ、ブラックやブルーにすることで、ファンシーさが払拭されてヨーロッパのクラシカルな家具のような雰囲気になる。これはぜひおすすめしたいディテールです」

キッチンは、カスタムメイドのキッチンブランド〈クチーナ〉のもの。
「予算的にはオーバーだったのですが、面材が気に入って見た瞬間にもうこれしかない、と。冷蔵庫はイタリアの〈スメッグ〉のもの。これもこの家にはこれしか置きたくないと思える、レトロ感のあるデザインに惹かれました」

全体的にアメリカやヨーロッパの伝統的な意匠が取り入れられているものの、実は、乱形石に埋め込まれた壁掛け式暖炉といった最新機器も導入しているのが、鈴木さんならではのポイント。

「古い家に暖炉は必須だけど、そのまま置くわけにはいかないし、置いたら置いたでいかにも、という感じになってしまいます。これはガスで火が付く、煙突や配管不要のガスストーブ。暖房器具としても優秀だし、炎が美しく見えてインテリアにもなる。とても気に入っています」

もっと知りたい、鈴木さん宅のアイデア
柔らかなグリーンの色味が目を引く寝室。クローゼットも塗装し、統一感のある空間に
愛猫のコクオウくんが縦横無尽に動き回れるキャットウォークも設置。「ただ、猫がいなくても飾り棚として使えるようさりげないデザインにしています。目立たないけれど、ちゃんと機能する。そういう細工には気を配りました」
タイルの床に、ネイビーの棚。上部にはキャットウォークもあり、玄関からこだわりが詰まった空間に。

限界突破する気持ちで、思い切りよく空間を楽しむ。

内装だけでなく、設備機器や家具、雑貨までこれしかないとこだわる半面「実はそれほどこだわりはないんです」と正反対な発言も。「時代は移り変わっていくので、こうでなければいけないと思い込むと先に進めない。頑なすぎると自分の限界を作る気がします。ここは今の自分にとっての理想。次は平屋の一軒家を作りたいと思っていて、そこはもっとシンプルになるかもしれません」

一貫して心が躍るのは映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でタイムスリップする1950年代のアメリカの街並みや、ドラマ『ウォーキング・デッド』に出てくる家だという鈴木さん。
家は暮らす場所であり、自分の趣味を反映するおもちゃ箱のようなものでもあります。やり過ぎなのでは?と躊躇せず、中途半端に終わらないよう “好き”を追求して、思い切り空間を楽しむ。それが、居心地のいい家づくりの秘訣なのかもしれません。

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Text/三宅和歌子 Illustration/kozo