DATE 2024.01.09

ユニークなワンルームプランで、
遊具を思わせるカラフルな一軒家

グラフィックデザイナーの柴田ユウスケさんとタキ加奈子さん夫妻が子ども2人と暮らす神奈川・川崎市の家は、平屋の屋上にオレンジ色の箱がのっかったような佇まい。建築家に依頼し、緑豊かな公園に隣接した立地を生かしながら、家族みんなが楽しく暮らせる空間を実現しました。将来的には屋上に子どもたちの小屋も新設するという、未来への夢も託した一軒家の方程式を紐解いていきます。
柴田ユウスケさん、タキ加奈子さん

ともに東京造形大学卒業。2009年に2人で「soda design」として活動を開始。2013年には「株式会社ソーダ」を設立。雑誌・書籍を中心としたグラフィックデザインを手掛ける。事務所は東京・青山にあり、お二人ともはほぼ毎日、電車で通っている。

家づくりの方程式
広々ワンルームに家族4人の暮らしを集約
カラフルな空間が個性を引き立たせる
屋上に子ども部屋を増築予定
ライフスタイルに適する暮らし

柴田さんとタキさんが、この家を建てたのは2022年のこと。それまでは賃貸マンション暮らしをしていましたが、長男の小学校入学を機に引っ越すことに。ただし、当初は家を建てるとは考えてもいなかったそう。それが、適当なマンションが見つからなかったことや、柴田さんの実家が家を建てたのをきっかけに、意外とありなのでは、と新築一軒家が選択肢に加わったといいます。

この土地に決めた理由は2つ。まず、公園に隣接していること。家の庭の延長のように公園の敷地がつながっています。もう一つは2階の窓から富士山が一望できること。それらに一目惚れして、他の土地を探すことなく即決したそう。そして、家の設計はずっと頼みたかったという建築家の山田紗子さんに依頼。彼女の感性を存分に生かして欲しいとおまかせした結果、柴田さんたちのライフスタイルにぴったりなユニークなプランができあがりました。

広々ワンルームに家族4人の暮らしを集約

方程式
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シルバーのガルバリウム貼り外壁の平屋に、オレンジ色の箱が乗ったような外観デザインもさることながら、この家の一番の特徴は生活のすべてがワンルームに収まっていること。
「扉は浴室とトイレ、あとは小さな物置の3つしかありません。個室になっているのはそこだけです」と、柴田さん。

浴室をぐるりと囲む形でキッチン、リビング、寝室が回廊式に連なるという一筆書きのようなつくり。玄関を入ってすぐは柴田さんと長男・燈弥くんが共有するデスクがあり、壁付けキッチンを通って奥は庭に出られる窓があるリビングダイニングになっています。そこから右手へ回ると寝室になり、寝室を抜けると玄関に戻る、というのが全体のフロアプラン。

「設計をお願いした山田紗子さんの好きなように作って欲しいと思っていたので、特に僕たちから要望は出しませんでしたが、唯一、子どもとなるべく近い距離でいたいとリクエスト。それでワンルームというアイデアが出てきたのだと思います」

広々としたワンルーム空間で大切な役割を果たすのが、寝室から浴室までを囲う曲線を描くカーテン。このカーテンは、子どもたちが眠った後に仕事をしても、寝室に明かりが漏れないようにするため。そして浴室がダイレクトに見えないようにするためと、ワンルームで家族が一体となりながら、暮らしやすさを考えた仕様になっています。

一つ疑問に思ったのが、小さな物置以外、収納場所がないこと。不便を感じることはないか聞いてみたところ、画期的な収納の仕方を教えてくれました。

「それは“吊るす”“掛ける”という方法です。トイレのシルバーの壁やキッチンの壁はマグネットがつくようになっています。キッチンの壁にはマグネット式の棚をつけて調味料を置いています。あとはフックが大活躍。歯磨きチューブや洗顔料などもフック付きのピンチに挟んで掛けています。アンティークショップで購入した植物の皮が巻かれたパーティションも空間を仕切る役目を果たしながら、フックを使ってリュックなど、子どもが日常に出掛けるときのものをまとめています。あとは昔から持っている無印良品のスチールユニットやアンティークの食器棚など収納家具も活用しています」

カラフルな空間が個性を引き立たせる

方程式
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また、目を引くのが赤、青、黄色、紫など色に溢れているところ。
「素材や色に関しても、こちらからは何も言っていないのですが、私たちのデザイン作品は、けっこうカラフルなものが多いので、そういう仕事を見てインスピレーションを得てくれたのかもしれません」

色選びも建築家からの提案だが、相談は受けたといいます。
「色に関しては僕たちもプロなので、山田さんも相談をしたいと言ってくれ、カーテンの色選びなどは一緒にしました。でも、あまりこれがいい、あれがいいと注文すると中途半端なものに仕上がってしまうので、基本的にはすべておまかせしました」

家具はもともと持っていたものもありますが、この家に合わせてペイントしたものも。
「テレビ台は無印良品のものですが、余ったペンキで扉部分を塗りました。ダイニングのベンチも同様。他にもアンティークの食器棚もそのままだと浮いてしまうので、ペインティングでこの家らしくカスタマイズして使っています」

壁色はツートーンになっていますが、実は、色の境目が隣の公園の地面の高さになっているという隠れた技も。土地に高低差があり、低いほうに合わせて整地して家を建てたため、公園の地面より、床面がちょっと低くなっているそう。そのおかげで公園に来る人と目線が合わないという利点も。

床の光沢のあるスカイブルーも天井が低めなので、空と一体感が出るように、また水面のように反射することで空間が広く見えるという効果もあり、この色にしたとか。

「窓の額縁部分にも色が塗られていたり、けっこう細かい部分にもこだわっているんです。それは最初の打ち合わせの時に僕が言った何気ない一言からヒントを得たそうです。僕らがデザインする上でいいな、と思っているのは、人があまり気にしないところにどれだけ遊び心を込められるかで、そういう部分を大切にしていると、何気なく山田さんに言ったらしいんです。僕は記憶が曖昧なのですが、それを覚えてくれていたのは嬉しいですね」

屋上に子ども部屋を増築予定、
ライフスタイルに適する暮らし

方程式
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さらに、奇妙に思うのが、ワンルームのなかに階段が3つあること。1つは2階の小部屋を通って屋上へと上がれるもの。あとの2つは上がるとガラス天窓に突き当たってしまいます。実はこれ、息子の階段、娘の階段と呼ばれ、彼らが大きくなったら屋上に箱形の個室を設置する予定で、そこにつながるための階段なのです。

「小さい頃はなるべく近くで一緒に生活したいのですが、思春期になったら独立した部屋がほしくなると思うんです。なので、いずれ増築することを考え、とりあえずは階段だけつけました」

現在、2階はオレンジ色の外観を持つ箱型の一部屋のみ。持ち運びのできるプロジェクターでシアタールームになったり、ゲストルームになったりとフレキシブルに使われています。そこから屋上に出られ、すべり台もある屋上は、さらながらプレイエリア。

「夏にはここでプール遊びもします。敷地内に枇杷の木が植っていて、実がなると手を伸ばして収穫することができます」

子どもたちそれぞれの階段は、今は行き止まりという不思議なつくりをしていますが、いずれは部屋に通じ、家も成長していいのだという考えを表しています。竣工時が完成ではなく、ライフスタイルに合わせて家の形も変わっていく。そんな自由な発想が、この家をワンアンドオンリーなものにしています。

(方程式まとめ)
自由で遊び場のような家は、
自分たちの暮らしにもぴったりと調和

バスルームを中心にぐるりと回ることのできる広いワンルーム、そこに3つある階段。カラフルに彩られた空間は、家全体が遊び場でもあるよう。小学生の息子さんの友達がやってくると、走り回って大騒ぎになるというのもうなづけます。家族みんなが一つの空間を共有しながら、思い思いの場所でくつろぐ。そして、将来的には子どもたちはそれぞれの場所を持ち、自立していく。延べ床面積100㎡のなかには、家族のあり方さえも組み込まれた斬新かつクレバーなアイデアが詰まっています。

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Text/三宅和歌子 Illustration/kozo

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