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No.00,ナンバーゼロ,だいどこ道具ツチキリ,土切敬子 DATE 2022.12.20

00(ゼロ)でどう暮らす?
#2 自宅を改装して作った、使いやすくて美しい生活道具の店「だいどこ道具ツチキリ」

誰と、どこで、どう暮らす? この組み合わせ次第で暮らし方は無限大。自由な組み合わせを選んでいる人の暮らしを覗いて、これからのライフスタイルのヒントにしてみるのはどうだろう。Doliveの新しい家「No.00(ナンバーゼロ)」を想像のベースに、さらに新しい暮らしのアイデアをインタビュー。もしあなたが「No.00」に住むのなら、誰と、どこで、どう暮らす?
Doliveの新しい家「No.00(ナンバーゼロ)」って?

暮らしへの自由な想像の邪魔をしない、プレーンでノンデザインな家。オリジナルのままでもカッコイイし、そこから自由にアレンジしてももちろんOK。「No.00」に自分らしいライフスタイルを味付けして楽しもう。

自宅の1階を改装して作った、吉祥寺の台所道具屋さん

吉祥寺・井の頭公園駅から徒歩10分。井の頭公園通り沿いの住宅街に、台所の道具を中心に扱う「だいどこ道具ツチキリ」はあります。オーナーの土切敬子さんが2017年に自宅の一部を改装して作った小さなお店で、土切さんが実際に試して使い心地が良く、見た目も納得がいく道具たちを並べています。

「昔から台所の道具が好きで、ケトルなんて10個以上使ったと思います。カトラリーも散々いろいろ使っては、これはダメだ、これもダメだって次々試しました。美大生で、プロダクトデザイン専攻だったんですけど、大学の友達にも『日常の道具をそんなに変える必要ある?』って言われたくらい(笑)。だから今この店にあるものは、若い頃から色々試して、これだなって思ったアイテムがベースになっています」

大学卒業後はテキスタイルや食品パッケージなどのデザイナーとして会社に勤めていたそうですが、誰かからオーダーされたものを作るのではなく、自分の目で選んだものを人に提案したいと思うようになり一念発起。最初は家族から大反対を受けたそうですが、自宅1Fのリビングの床を抜いて土間に変え、お客さん用の玄関を新たにつけて、店舗にするための改装をしました。

お店用の改装の前に、一度リノベーションで天井を高くしていたので、一面に商品が並べられていても窮屈さを感じない空間に

「吉祥寺駅に向かう道路沿いに入り口を作ったので周辺の方も自転車で立ち寄ってくれますし、本を出した後は、それを見て遠くからもお客さんが来てくれるようになりました。2021年に『ほぼ日』のWeb支店が始まり、実際に商品を手にとってみたいというお客様が増えました。『ほぼ日』では扱っていない商品や特別にセット組みしているものとか、そういう品揃えを意識しています」

使いやすさ重視のセレクトの中には、本来、台所道具ではないものも

ずっと使いたい道具にこだわる土切さんですが、セレクトしてみて自分の店には合わなかったと思うものもたくさんあるといいます。

「ストウブの重い鍋とか野田琺瑯のホワイトシリーズとかね。皆さんが既に持っているものも置いた方がいいかなと思ったけれど、ここでは人気がない。デパートで手に入るものは、ここではあまり需要がなかった。手軽で、そんなに高くなくって、見栄えが良いものがやっぱり人気ですね。せいろとかも日本製だとすごく高いから、中国製でリーズナブルなものも並べています。せいろは焦げちゃったりするから消耗品なんです。リーズナブルなものを持った方がいいじゃないですか。そういう提案をしながらセレクトするようにしています」

日々の道具の実験現場「台所」があるお店

「だいどこ道具ツチキリ」の特徴は、店舗スペースの横に改装前からあった家のキッチンをそのまま残してあるところ。現在も家族の台所としても使っていて、昼ご飯と夕飯の時間には店内においしい香りが広がるのだそう。

「コロナで難しくなっちゃいましたけど、以前はこのキッチンでお店の商品を試してもらったりしていました。実際に私が使って良いと思ったものを商品として選んでいるので、店とキッチンが並んでいると、時間が経つとこういう見た目になりますよとか、こうやって使っていますっていうのが説明しやすいんです」

「カゴやザルなど自然素材のいいものは若い頃に買っておくといいですよね。経年変化でいい味が出るので、それを見越して若いうちに買っておくのがおすすめです」

土切さんにとって台所は、生活者として試行錯誤をする実験場。お店を始める以前から、時間とお金を一番かけて作った場所だったといいます。

「台所って道具として使っておもしろいものが一番たくさんある場所ですよね。うちの台所には使ってみたけどダメだなと思ったものもいっぱいあります。台所を作ったときに、自分が持っている鍋の数に合わせて棚をオーダーしたんですけど、それも失敗でしたね。鍋ひとつとっても、使ってみなきゃ分かんないから、試すうちにどんどん増えちゃって。一生使おうと思って買った鍋が、使ううちに、こんな重いの使いたくないって思ったりして(笑)」

そういう生活者目線の経験があるからこそ、お店での土切さんの提案はとても柔軟です。

「使う人の年齢や生活環境で、必要な道具って変わるんですよね。一人暮らしのときは小さい鍋を買って、家族ができると子どもが増えるから大きいのが必要になったりして、年を取るとまた家族が減って、体力も落ちるから重いのは嫌だし.......って変わってくるじゃないですか。だから、お店で私がおすすめするものがその人の生活には合わないっていう方ももちろんいらっしゃると思うんです。私は小さい道具が好きなので商品も小さいものが多いですけど、大家族の方には『こんな鍋じゃ全然足らないよ』って言われちゃう(笑)」

コロナ前は土間から台所に上がる階段に座って、お茶を飲みながらお客さんと道具の話をすることも多かったそう。必要な道具は人それぞれだけど、このお店での提案が小さな暮らしのヒントになることが土切さんの願いだといいます。

「最近は、男性のお客さんも増えてるんですよ。ここだと道具の使い方とか暮らしの小さなことが聞きやすいのかもしれないですね。『出汁を取ってみたくて、鰹節を削るやつを買ったんだけど、うまくできない』って、おじさんに相談されたりするんです。『鰹節がすごく細かくなっちゃうんだけど、もっと透き通った出汁を作るにはどうればいいか』って聞かれて、う〜んってー緒に悩んであげる。やっぱりサラシが必要ですかねえ、とか。そういう会話をするのは結構楽しいですね」

2号店「お茶道具ツチキリ」としての「No.00」

本来の用途とは違う道具を台所用として探すのがおもしろい、と土切さん。「廃盤になっちゃった道具に何か別のものを合わせて、お茶のセットを作ってみたり。喫茶全般の道具も好きだから、次に何か別のお店をやるとしたら、『お茶道具ツチキリ』とか楽しいだろうな」。次のお店への想像がふくらむ土切さんに、もし「No.00」で暮らすとしたら、どんな家と暮らしがいいのか、聞いてみました。

「No.00は今のお店と同じように入り口が土間だから、1Fの土間スペースはやっぱりお店にしたいですね。お茶道具のお店にしたいから、店内でお茶やコーヒーを飲んだり、お菓子を食べられるようにしたいです。今のように、キッチンも並べてつけて」

(1Fのイラスト)基本プランの左の部屋は壁をとっぱらって「お茶道具ツチキリ」の商品スペース&キッチンに。右の部屋は土切さんの作業部屋&愛犬ルーム

「内装は、今と同じ感じで白にウッドの落ち着いたイメージにしたいです。でも、空間が変わると、ちょっとセレクトの感じは変わるかもしれませんね。『だいどこ道具ツチキリ』でセレクトしたものは、やっぱりここの空間に合うものを選んでいるので、No.00になると変わる気がします」

1Fは理想の2号店「お茶道具ツチキリ」になりました。2Fはというと「家族のくつろぎの場所にしたいですね」と土切さん。「2Fに家族のリビングと寝室を作ることになるけど、あえて壁でスペースを区切らないで、布でほわっと仕切るくらいがいいかも」

(2Fのイラスト)2Fの大きな空間は韓国のポジャギのような透ける布で緩やかに仕切り、キッチン&ダイニングと寝室に。

「今の家がシンプルなので次に住むとしたら柄を多用したいんですよ。北欧で使われるような派手な生地のカーテンをかけたいですね。これだけ広ければ、柄が派手でも圧迫しないんじゃないですかね」

パソコンに保存された「お気に入りのインテリア」の写真を見ながら、モスグリーンのソファを置いたり、ビンテージのマットをひいたりと土切さんの「No.00」は少しずつ具体的に。今の「だいどこ道具ツチキリ」よりも広く、柄や色の遊び心も足してはいますが、基本的には変わらない土切さんの好みが反映されています。「いろんなジャンルのミックス感が好きだから、北欧っぽい!とか、ひとつに偏らない方が好きです。お店も住居スペースも古いものと今のものとが混在してる感じにしたいですね」

基本プランはあるもののスペースの用途を決めすぎず、自由に間取りも変えられるNo.00での暮らしは2号店「お茶道具ツチキリ」にぴったりかもしれません。数年後に本当に建っているような気さえしてきます。
土切敬子さん

台所道具・キッチン雑貨を扱う「だいどこ道具 ツチキリ」店主。テキスタイルの企画デザイン、食品関連のアートディレクターを経て、2017年5月にオープン。2021年には、「ほぼ日刊イトイ新聞」Webサイトにて「だいどこ道具ツチキリ ほぼ日支店」もオープンさせる。著書に『おしゃべりな台所道具―話しだすと止まらなくなる、道具のおいしい話』(オレンジページ)がある。
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Photography/宮前一喜 Text/ 赤木百(Roaster) Illustration/谷水佑凪(Roaster)