![圧倒的な広さと、厳選された素材とファニチャーで理想の暮らしを追求。](https://resumu-prod.s3.amazonaws.com/uploads/15/824d3eb0f9f8c9744ea8364288da3ff22cdf538d.jpg)
一度見たら憧れる、おしゃれでこだわりが詰まった家。でも、「そんな家ってどうやったらつくれるんだろう」「建築のプロじゃないとつくれないのでは」と感じている人もいるはず。“あの人の家づくり手帖”は、個性的な家をかたちにした経験者から具体的な家づくりアイデアを伺う企画です。
今回訪れたのは、インドアからアウトドアまで幅広い多趣を持つ稲田里樹さんの住まい。趣味と暮らしの両方にフォーカスした、住み良い家づくりの術に迫ります。
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- 家ができるまで
100㎡以上の中古マンションを自分好みにフルリノベーション。 - 家づくりアイデア①
開放的で重厚感のある、落ち着いたリビング。 - 家づくりアイデア②
ガシガシ使える、男前なキッチン。 - 家づくりアイデア③
自転車通勤しやすい、玄関横の土間デスク。
100㎡以上の中古マンションを自分好みにフルリノベーション。
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都心へのアクセスの良さと住みやすさからベッドタウンとしても注目される、神奈川県川崎市。都内のデザイン事務所に勤務する稲田さんの住まいは、そんな川崎エリアに構える築30年余りのマンションの一室にありました。引っ越してきたのは、2016年6月のこと。
「当初は一戸建ての購入も考えていましたが、都心でそれを探すとなると狭小住宅ばかりで、希望とする物件に出合うことができず……。いっそのこと広いマンションの方が理想の空間を作れるんじゃないかと」
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狭小住宅でも縦に長く空間を確保すれば十分な居住スペースを確保できますが、稲田さんが求めたのは横の広さ。そのため、物件選びには“専有面積100㎡以上”という条件がマストだったよう。
「ここは都内への通勤のしやすさはもちろん、周辺の住環境も気に入りました。そして何より、専有面積が116㎡と希望通り。部屋数の多い4LDKでしたが、間取りを変えれば広い空間を作れるじゃないかとワクワクしましたね」
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設計・デザインは、“自然との関わりを意識する、日々の暮らし”を提案するライフスタイルブランド<HAY hutte(ハイヒュッテ)>の安井秀行さんに、施工は“使う人が主役になる空間”をテーマに掲げるインテリアデザイン事務所<Hajikami(ハジカミ)>の谷脇周平さんに依頼。話によると、二人とは古くからの友人だそうで、「信頼しているからこそ色々とワガママも……」と、間取りの変更から使用する材、家具選びなど細部にまでこだわり、度重なる打ち合わせの末、理想の空間を完成させました。
では、元々あった既存空間をどのようにして理想の空間へと変えていったのでしょうか。稲田さんの家づくりにおけるこだわりを伺います。
家づくりアイデア①
開放的で重厚感のある、落ち着いたリビング。
≪キーワード≫
#リノベーション #LDK #開放感 #造作家具 #素材選び
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「間取りを変えれば広い空間を作れるじゃないか」。その言葉どおり、スケルトンリノベーションによって完成したのは、約38畳から成る開放感たっぷりのLDK。
「広いリビングにずっと憧れがありました。ここは元々4部屋あったのですが、空間を遮る壁を取っ払って空間をひとつなぎに。さらに躯体現しによって天井を30cmほど高くしたため、より開放的なスペースになりました」
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“広いリビング”を、より広く見せる工夫は躯体現しだけに非ず。造作家具も、その一翼を担います。
「家具を見繕うのって、結構大変じゃないですか。僕はそもそも備え付けの家具が好きというのもありますが、最初から同じトーンで揃えられた家具の方が良いなと思っていたので、だったら家具も<HAY hutte>の安井くんにオーダーしようと。壁に一体化するように、出っ張らないように作ってもらいました」
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休日になると、登山にクライミング、釣りなどアウトドアな趣味を満喫している稲田さんですが、一方で「家族でアニメ鑑賞することもしばしば」とインドアな一面も併せ持ちます。そうやって目を向けたテレビの奥には、印象的な石材が壁一面に。
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「空間をすっきりさせるために、内壁は基本的に白をベースにしていますが、少し変化をつけたくて。本来は庭など屋外で使用される天然の石ですが、無理を言って張ってもらいました」
材を切り替えたことで、開放的がゆえに閑散としがちな広いワンルームにメリハリが生まれ、表情豊かな空間になりました。
家づくりアイデア②
ガシガシ使える、男前なキッチン。
≪キーワード≫
#モルタル #タイル #料理好き #家族みんなで立つ台所 #オープン棚
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料理好きが伺える業務用冷蔵庫を備えたキッチンは、奥様はもちろん、稲田さんもよく立つ場所だからこそこだわりもたっぷり。
「海釣りが趣味なので、魚調理を作ることが多いですね。毎年5月には新潟に鯛釣り遠征に行ったり、最近は太刀魚を釣ってここで捌きました。太刀魚はシンプルに塩焼きしてもいいんですけど、釣ったその日は鮮度が良いのでそのまま刺身として、さらにしゃぶしゃぶとして食べたり、個人的にはパスタにするのもハマってます」
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キッチンのこだわりをズバリ聞くと、「やっぱりモルタルかな」と一言。完全オリジナルのモルタル仕上げのオーダーキッチンは、目地のないフラットな仕上がりで、インダストリアルなインテリアとも好相性。
「モルタルは耐火性にも優れているのでガシガシ使えますし、手入れもラク。子供と一緒に対面でも作業できるよう、少し広めの調理台にしてもらいました」
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コンロ側の壁面にはツヤのあるタイルを配置し、料理後の後片付けをラクに。床には水捌けの良いタイルを敷き詰め、衛生面もバッチリと対策。快適なキッチンづくりにおいて、作業しやすい動線も欠かせない要素ですが、稲田さんのように適材適所の素材をセレクトすればそれだけで機能面が格段とアップします。
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リビング同様、キッチン背面のオープン棚も造作のもの。<turk(ターク)>のフライパンや<STAUB(ストウブ)>の鋳物ホーロー鍋など、アウトドアなシーンでもお馴染みのキッチンギアが綺麗に収納されていました。
「妻から『要らないよね、もうあるよね?』ってツッコまれてしまうほど、調理道具に目がなく……(笑)。同じく、食器も増えてきて置き場に困っていたので、追加でインテリアに馴染むキャビネットを作ってもらい、ほとんどの食器はそっちに収納しています」
家づくりアイデア③
自転車通勤しやすい、玄関横の土間デスク。
≪キーワード≫
#仕事場 #趣味部屋 #アウトドアギア #収納 #土間玄関 #サイクリスト
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先述したとおり、稲田さんはデザイン事務所に勤務。仕事柄、家に持ち帰るタスクも多いため、帰宅後も作業できるスペースがマストでした。そんなデスク周りには「居住空間に趣味を持ち込みたくなかった」と趣味の道具がズラリ。
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「棚の右上には寝袋やテント。そのほかの小物系はボックスにまとめて保管していて、右下ハンガーラックにはアウトドア用のウェア、クライミングの装備は左下に。自分でカラーリングしたガンダムのプラモデルも、こっそりここに飾っています」
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趣味部屋兼デスクの壁と天井にはボルダリングのホールドが、一角にはDJスペースも。
「ホールドをつけたはいいものの、この空間にも開放感を持たせるべく中窓を設置しているので、ボルダリング中に落ちたらその窓を突き破りそうで……。なので、装飾的な部分が大きいです。DJは去年ぐらいからイベントでもプレイさせていただくようになり、とはいえまだ下手くそなのでここでよく練習を」
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好きなもので溢れる、稲田さんのデスク。趣味としてだけでなく、通勤手段としても頻繁に自転車に乗るため、玄関からそのままアプローチできる位置にデスクを設けました。
「いわゆる土間玄関なので、土足でここまで入ることが可能です。毎日ここから出勤して、帰宅後は元の位置に自転車を戻して。いつも、そんなサイクルです」
もっと知りたい、稲田さん宅のアイデア
この先も変化し続ける“理想の家”。可能ならば次こそ一軒家で。
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趣味と暮らしの両方にフォーカスした、理想のリノベーションハウスで生活を始めて早7年半。「もし今、改めて手を加えられるならどうしますか?」という質問に対し、「実は……」と重い口を開いた稲田さん。
「ここに引っ越してきた当時、娘はまだ5歳でした。広いリビングを嬉しそうに走りまわっていましたが、来年から中学生になるので子供部屋をどうしようかと。リビング一角に備えた作業スペースが、今は彼女の勉強机になっていますけど、自分の部屋が欲しいと言われるのは時間の問題ですし」と、ライフスタイルの変化によって一つの問題点が見えてきたようです。
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「これから部屋を追加するのも一つの手ですけど、じつはまた引っ越そうかなとも考えていまして。今度こそ一軒家に。家づくりは、やっぱり楽しいですから」
一瞬、顔を曇らせた稲田さんでしたが、一度は諦めた一軒家の暮らしを想像すると次第に表情は晴れやかに。「もし叶うのならば、今の拠点を残したまま地方にもう一つの家を」と妄想は膨らむばかり。
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photo/湯浅良介 text/伊藤千尋(GGGC)