DATE 2024.08.06

インダストリアルにナチュラル、レトロ。
フロアごとに異なるコンセプトのリノベ一軒家

一度見たら憧れる、おしゃれでこだわりが詰まった家。でも、「そんな家ってどうやったらつくれるんだろう」「建築のプロじゃないとつくれないのでは?」と感じている人もいるはず。“あの人の家づくり手帖”は、個性的な家をかたちにした経験者から具体的な家づくりアイデアを伺います。

今回は3フロアを異なるコンセプトでリノベーションした、リノブさんご夫妻の住まいにお邪魔しました。デザイン重視で計画をスタートし、施工過程で浮かんだアイデアをどんどん取り入れていったというお二人。完成した一軒家は、ガレージと一体になった土間玄関、ナチュラルテイストのリビング・ダイニング、遊び心あふれるディテールなど、随所にご夫妻のセンスが光ります。そんなご自宅から、家づくりのアイデアを紐解いていきましょう。

デザイン重視ではじめた、アップデートしながら進める家づくり。

リノブさんご夫妻が暮らす3階建ての一軒家は、築約30年になる鉄骨と木造建築の家屋。もとは奥さまのおばあさまが住んでいた家で、「数年前に祖母が亡くなったため、せっかくならリノベーションして住もうという話になったんです」と奥さま。

「リノベーション会社は、施工事例の見学会でキッチンのデザインに一目惚れした会社にお願いしました。2022年10月に着工して、完成したのは4ヶ月後」

ご夫妻にとって、初となるリノベーション。はじめは未知の世界だったそうですが、施工が進むにつれて「壁を壊したり棚を造作したり、家ってここまで自由につくれるんだ!」と、つくる楽しさが増してきました。いわく「工作しているような感覚だった」といいます。

家事動線や住みやすさよりもデザインを重視したいとの考えから、フロアごとにコンセプトを変えることに。インスタグラムや家具とインテリアの通販サイト、ルームクリップからイメージソースを収集し、リノベーション計画はスタートしました。

「無機質なデザインも好きですし、古材を取り入れたレトロな雰囲気も好きなんです。1フロアに詰め込むとごちゃっとするので、フロアによってコンセプトを設けるというアイデアに至りました。ガレージがある1階はインダストリアル、キッチンとLDKが中心の2階は、過ごす時間が長いのでウッドを取り入れた温かみのある空間に。趣味部屋にしている3階はレトロと、各フロアの用途に合わせてテーマを決めました」

リノブさんの家づくりにおけるもう一つのポイントは、すべてを決定せずに施工をスタートしたこと。譲れない3つのこだわりだけ決めて工事をスタートし、内装のイメージが具現化される過程で、造作棚やランプを設置するなど、デザインをアップデートしていったといいます。

「壁を極力なくして開放感を出したい、階段は3階まで吹き抜けになったオープン階段、キッチンは憧れのアイランドキッチンに。まずはその3つをリクエストしてデザインを出していただきました。主に私が中心になって決めていましたが、施工が進むうちに夫もリノベーションの楽しさに目覚めて(笑)。結果的に2人のアイデアや好きなものが詰まった家になって、嬉しかったです」

家づくりアイデア①
ガレージと一体になったインダストリアルな土間玄関
≪キーワード≫
 #ガレージ #土間玄関 #インダストリアル #タイル壁と洗面

常識にとらわれない間取りプランも、リノブさん宅ならではかもしれません。なかでもガレージと土間玄関、水回りが集まった1階は、一般的な一軒家ではあまり見かけないはず。空間のイメージは、アメリカの工場。旦那さまがDIYで使う工具を見せる収納に収めたり、鉄骨を剥き出しにするなど、インダストリアルな空間が広がります。

「もとはガレージと玄関の間に壁があったんです。その壁を取っ払うのは難しいと思ってダメ元でご相談したら……できますよ! とのお返事をいただいて」

これには、バイクが趣味の旦那さまも大喜び。「最初は駐車スペースがあるならバイクが置けるな、くらいに考えていましたが、まさか家のなかからバイクが眺められるようになるとは! 目に入る生活スペースに大好きなバイクがあって、毎日幸せです」と笑います。

1階だけが鉄骨づくりのため、壁を壊して出てきた鉄骨はそのまま活かし、鉄骨躯体あらわし仕上げに。黒く塗装した鉄骨に、インパクトのあるガード付き蛍光灯が映えます。

「鉄骨を塗装して、空間に締まりを出しました。黒色が引き立つよう、天井は明るいグレーに塗っています。鉄骨を剥き出しにしたら天井が高くなり、開放感が増したのも嬉しい誤算でした」

2階にあった水回りを1階に移したのも、このリノベーションにおける大きな変更点。玄関を開けたら目の前に洗面があるというのは、なかなか斬新です。

「2階のLDKを拡張したかったので、スペースにゆとりがある1階に水回りを移動しました。配管を剥き出しにした洗面台が、フロアのいいアクセントになっていますよね。シンクはTOTOの実験台シンク、タイルはタイル専門店のタイルパークと名古屋モザイクからいくつか取り寄せて、タイルパークのホワイトシリーズを選びました」

トタン壁に取り付けた針葉樹合板製のバーンドアの中は、WIC(ウォークインクローゼット)とバスルーム。

「このトタン壁やバーンドアは、ルームクリップで見つけた事例が素敵だったので、ほぼそのまま再現してもらいました。WICの手前に取り付けたアイアンバーは、お客さんの上着などをかけられるスペースになっています」

WICの内部は、脱衣所とランドリーも兼ねたスペース。湿気が不安だったため、WICにも換気扇を設置、棚は造作の金網棚にするなど通気性をよくする工夫がなされています。

計画当初からリクエストしていたオープン階段は、3階までの吹き抜けに。約14坪ながら広々と感じる空間において、この階段の存在が一役買っています。

「ちなみに1階の床材は、フローリング風のフロアタイル。コストカットできますし違和感もないので、リノベーションを計画している方にはおすすめしたいです」

家づくりアイデア②
壁を取りはらってスペースを有効活用。
キッチンとつながるリビングダイニング

≪キーワード≫
  #アイランドキッチン #ワークスペース #造作棚 #ナチュラルテイスト

2階は壁をなくして、LDKを拡張。リビングダイニングとアイランドキッチン、ワークスペースが一体になった開放的な造りになっています。

「水回りを1階に移したので、スペースがとても広くなりました。キッチンとリビングダイニングが横並びになっていると、お客さまが来たときに話しながら料理できるのもいいですね。くわえて、全体的に壁を極力なくしたのは大正解でした。昔住んでいたときは狭い印象がありましたが、各所の壁を取ったら思いのほか居心地がよくて、こんなに住みやすい家だったんだ! と驚いています」

「夢だったオールステンレスのキッチンは、デザインが気に入ったもの。造作した3段のカップボードとのバランスも最高じゃありませんか? 器を集めるのが趣味なので、あえて見せる収納棚にしています」

キッチンとの間にLDKを挟んで、端にはワークスペースが。

「デスク前の壁面は、夫のリクエストで黒板塗料仕上げにしてもらいました。下地に鉄板を入れたので、マグネットも張り付く仕様なんです。こうした遊びが入れられるのも、リノベーションの楽しさですよね」

「ワークスペース側からLDKを見ると、このような感じ。ダイニングテーブルは、もともとあった柱やフローリングとマッチする〈DULTON(ダルトン)〉のテーブルです。左奥に見える木製扉はトイレ。実は、ここもかなりこだわっているんですよ!」

家づくりアイデア③
トイレから本棚まで。毎日わくわくさせてくれる遊び心
≪キーワード≫
 #趣味部屋 #インナーバルコニー #古家具

「トイレは外から見えないしスペースも小さいので、カラフルにして遊んでみようかなと。そこでデザイナーさんに提案いただいた壁紙が、とても素敵だったんです。純喫茶のような壁紙だったので、トイレのコンセプトは喫茶店に決定しました」

この壁紙を主役に、空間にぴったりな照明を探したそう。かわいらしいグリーンの照明に合わせて、ドアのフローラガラスもグリーンに。

「トイレットペーパーがぴったり収まるニッチ棚とドアは造作です。鍵付きのドアノブは本来玄関ドアに使うものなんですが、壁紙の雰囲気にぴったりだったので採用しました」

「トイレのドア横にあるスイッチプレートは、このフロアの間取りがデザインされているんですよ。見学をした家に同じ仕様のスイッチがあって、照明とスイッチの位置が連動しているなんておもしろいと思い、リクエストしました。トグルスイッチの触り心地がなかなかクセになります(笑)」

続いては、ご夫妻それぞれのやりたいことを盛り込んだという3階へ。趣味のスペースとインナーテラス、寝室がある同フロアにも、さまざまな遊びが込められています。

「ここはもともと一部屋だったんです。古材の建具で間仕切りして、片側は本棚が主役の客間、窓側はくつろげるインナーテラスを新設しました」

奥さまがこだわったインナーテラスは、自然光が気持ちいい癒やしの場所。古い食器をリメイクしたランプシェードが、レトロな空間によく合います。

「同じ空間にあるとはいえ、客間とインナーテラスは明確に分けたかったので、床材をフローリングと石調のタイルとで使い分け、空間にメリハリをつけました」

造作本棚は、壁紙の柄と相まってユニークなデザインです。こちらには、旦那さまが愛読する漫画がずらり。ランダムな本棚にしてほしいとオーダーしたところ、木枠を組み上げたこちらが完成したそう。

「背面のスクエア柄は、輸入壁紙がそろう〈WALPA(ワルパ)〉の壁紙。インナーテラスとはまた違ったレトロさがありますが、意外とケンカすることなく馴染んでいますよね。理想通りに仕上がって気に入っています」と旦那さま。 「好きなものに囲まれた暮らしって、ほんとうに楽しいんです。そうした毎日を実現できるのもリノベーションの醍醐味だと実感しています」と話します。

もっと知りたい、リノブさん宅のアイデア
玄関タイルなど、もとの素材を生かした箇所も。「床タイルを剥がしたらいい感じの模様の下地が出てきたので、そのまま使いました」
3階は、夕方になるにつれてFIX窓からのぼんやりとした灯りが映えます。「ここは施工途中で加えた箇所です。建具は古道具などを扱う、つむぎ商會で。灯りがいい具合に入るように計算して、外側にある階段にランプを取り付けました」
ガレージの棚は旦那さまによるDIY。「鉄鋼ボードと棚を、あとから自分で取り付けました。DIYしやすいよう、ガレージの壁はOSB合板にしてもらったんです」

好きなものが自然と目に入る、心踊る暮らし

随所に設置された造作棚も、参考にしたいアイデアの一つ。食器やCDなど、大切にしている持ち物が多いからこそ、それらが生きる見せる収納を多く取り入れたといいます。

「できるだけ部屋に馴染む造作家具にしたいと話し合って。造作家具は予算がかかるので避けられがちですが、良心的な価格のリノベーション会社さんだったので、ドアや棚などはほぼオーダーしました」

CDがぴったり収まるワークスペースとキッチンの造作棚は、棚受けを壁のなかに仕込むことですっきりさせたというこだわりも。

建てながらつくり込んでいった、お二人の家づくり。最後にこれからアップデートしたいところ聞くと「いつか階段に手すりを付けたい。いまはこのデザインを気に入っていますが、年を重ねたら必要になってくると思うので」と旦那さまは話します。

「年齢に応じて変えていけたらいいね」と、奥さまも続きます。「生活の中心は2階、寝室は3階、お風呂は1階と、1日のなかで移動が多いというのは今後の課題になりそう。そのときの自分たちに合わせて、アップデートを楽しみながら暮らしていきたいですね」

「家のどこにいても好きなものが目に入るから、暮らしていてわくわくするんですよ。デザインを重視し、“好き”であふれた空間にして間違いありませんでした」

好きなものを自由に盛り込んでいった結果、よりわくわくした生活が送れているというリノブさんご夫妻。家事導線や機能性も重要ですが「暮らしながら心が踊るか」という視点も、家づくりには欠かせないかもしれません。

好きなことをなんでも表現できて、大切なヒトと思う存分くつろげる。Doliveの「THE HOUSE GARAGE PROJECT」は、家まるごとガレージの新空間。
「自分らしさ」を詰め込んで、家族との時間も、自分の時間も目一杯楽しめる、今の時代に合ったガレージライフを楽しめる家であなたならどう暮らしたい?

Photo/櫛ビキチエ  Text/金城和子 illustration/kozo

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