時代に左右されない美しさを。
湖畔に建つ、ベルギー民家を踏襲した家
一度見たら憧れる、おしゃれでこだわりが詰まった家。でも、「そんな家ってどうやったらつくれるんだろう」「建築のプロじゃないとつくれないのでは」と感じている人もいるのでは。そんな自分のこうしたいという想いをかたちにした経験者から具体的な家づくりアイデアを伺います。
今回登場いただくのは、編集者の村松亮さん。長野県の駒ヶ根と東京の2拠点生活を続けたのち、3拠点目として長野県・御代田の湖のほとりに家を建てました。 ロケーションを活かしつつ、時を経るほどに美しさを纏っていくデザインを追求した家づくり術に迫ります。
- 家ができるまで
2拠点生活を経て、3拠点目に選んだのは湖畔の暮らし - 家づくりアイデア①
ベルギー民家の美しいフォーマットを活かす。 - 家づくりアイデア②
個別のアイテムから全体のデザインへと広げていく。 - 家づくりアイデア③
経年変化を楽しめる素材感を重視。 - 家づくりアイデア③
窓を活かした開放感と、死角を用いたパーソナル空間の併存
2拠点生活を経て、3拠点目に選んだのは湖畔の暮らし
“移動とライフスタイル”が、自身のテーマの1つでもあるという村松さん。現在の住まいを建てる前から東京と長野県の2拠点生活をしていたり、乗り物と人の関係性を考えるWebメディア「noru journal」を運営していました。
そんな中、1人目のお子さんの進学や2人目のお子さんを授かったことを機に「腰を据えて暮らせる場所がほしい」と3拠点目の住まいを検討。近年、クリエイターらの移住が増えている長野県の御代田に居を構えることにしました。
「御代田は、新幹線の駅が通っている軽井沢や佐久平どちらにも近い。都内との行き来もしやすいと思ったんです。それに、僕自身も『ミヨタデザイン部』という地域創生のプロジェクトに参加させてもらっていますが、クリエイティブな職能を持つ移住者が多く、ユニークな取り組みが増えています。町として完成しきっているというよりは、自分たちの手で暮らしをおもしろくできる余白が残っているエリアだと感じたんですよね」
ただ、村松さんがこの地を選んだ理由は、交通の便やコミュニティの存在だけではありません。
「目の前に湖畔の風景が広がる素敵な土地が見つかったんです。この抜けのある景色が確約された暮らしって、とても豊かだなと」
その後、木の質感を活かした家づくりに定評のある地元の工務店とともに二人三脚で家づくりを開始。理想の空間イメージを厳選し、スライド資料にまとめて共有しながら、こだわりをかたちにしていきました。
そして、完成したのが、湖畔の風景と調和する、まるでヨーロッパ郊外にあるような佇まいの家でした。
家づくりアイデア①
ベルギー民家の美しいフォーマットを活かす。
≪キーワード≫
#ベルギー民家 #ティンバーフレーム #栗
「実は土地を見つけたものの、どんな家を建てたらいいのか、当初は全くイメージが湧いていなかった」と語る村松さん。 そんな中、工務店の代表の自邸を訪れたことで強烈なインスピレーションを受けたのだそう。
「その方は昔ながらのベルギー民家のスタイルで建てた家に暮らしていたんです。ベルギー民家は、太い丸太で柱や梁などの骨格を組み上げるティンバーフレームという工法や、在来工法では敬遠されがちな曲がりのある栗の木材を使用した独特のカーブなどが特徴で。そのユニークな佇まいに一気に惹かれて『ベルギー民家しかない』と直感しました」
また、ベルギー民家は、天井の高さや家の幅などのフォーマットが決まっている中で、土地柄や家族の人数、ライフスタイルなどに合わせてアレンジしていくスタイル。佇まいはもちろん、そうした設計思想も含め、時代を超えて人を惹きつける建築デザインも惹かれたポイントのひとつだったといいます。
インスピレーションを受けた工務店の代表の自邸では、床材のカラーは黒だったそうですが、ベージュのモルタル調の素材をチョイスして穏やかなイメージにしました。
家づくりアイデア②
個別のアイテムから全体のデザインへと広げていく。
≪キーワード≫
#建具 #ドア #インテリア #アンティーク
村松さん宅で使われているリビングのドアは、現在の住まいを建てることが決まる前から持っていたもの。
「アンティークショップに行って『いいな』と思ったものは、たとえ実際に使う予定がなくても買って、家の中に置いていたんですよね」
家づくりの際には、そうしたコレクションが、デザインのベースになっているのだといいます。
「家づくりを始める前に、工務店の代表の方がそれまで住んでいた家に遊びに来てくれて。そこで使っている家具を写真に収めて、デザインの着想にしてくれたんです。ほかにも、僕たち自身でドアや照明、蛇口などの建具や設備を先にセレクトして購入しておいた上で『これらのアイテムを使いたいです』と伝えたり。僕と妻がリクエストしたアイテムを活かしたデザインに仕上げてもらっています」
家づくりアイデア③
経年変化を楽しめる素材感を重視。
≪キーワード≫
#漆喰 #レンガ #デコリエ #古材 #アイアン #錆び
床材や壁材、コレクションするアイテム……これらをセレクトする基準になっているのは「長く使えるかどうか」という視点です。
「3拠点目ということもあり、さすがに僕たち一家が建てる最後の家になるだろうと思っています。だからこそ、素材やアイテムをセレクトする際には、長く使うことができて、使い古すほどに雰囲気が醸し出される質感を重視しました」
壁には漆喰やレンガ、床材には汚れや傷が“味”となって残るモルタル調のデコリエを採用。またキッチンの棚板には古材を使用し、階段の手すりはアイアンに「錆びを入れてほしい」とオーダーしたのだそう。
家づくりアイデア④
窓を活かした開放感と、死角を用いたパーソナル空間の併存
≪キーワード≫
#大開口 #借景 #シームレスなウッドデッキ #死角 #薪ストーブ
この地に家を建てるきっかけにもなった湖畔のロケーション。その風景を最大限楽しむため、リビングには大開口を設けました。
「地面とのレベルを近くしたり、ウッドデッキとリビングの段差を設けなかったり、外と中をシームレスに行き来できることをかなり意識しました。室内と屋外の境界線をなるべく作りたくなかったので」と村松さん。そうすることで、まるで風景と一体化するような感覚を味わうことができます。
その一方で、リビングの一角には、レンガで囲まれており、外からは死角になるスペースが配置されています。
「ここは、薪ストーブが置かれている、通称“火の間” 。この家は、陽の光を取り入れようと窓が多く採用した分、こうした奥まったスペースを設けて、こもれる環境もつくりたいと思ったんです」
冬は薪ストーブを焚いて、暖まりながら寝てしまうこともよくあるそう。
時の経過を家族で楽しみながら
村松さんにとって、家は「つくってもらうもの」ではなく、自分たちの手で「つくっていくもの」。自らアイテムをセレクトしながら工務店とともにディティールをつくりこむ。地域の仲間に協力してもらいながらウッドデッキをかたちにし、そしてお子さんが庭の石拾いを手伝いながら芝生を養生する……いろんな人と一緒につくった、この家で楽しく日々を過ごしているのだといいます。
開放感のある湖のほとりで、時の経過を楽しみながら一家で暮らす。そんな風景が、ここには広がっていました。
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