DATE 2025.02.20

色でオリジナル性を打ち出す、
DIYでペイントした、カラフルな新築一軒家。

一度見たら憧れる、おしゃれでこだわりが詰まった家。でも、「そんな家ってどうやったらつくれるんだろう」「建築のプロじゃないとつくれないのでは」と感じている人もいるのでは。そんな自分のこうしたいという想いをかたちにした経験者から具体的な家づくりアイデアを伺います。

東京・世田谷区の穏やかなエリア。のんびりとした街区の一角に新築の家を建てた、イラストレーター/ハンドメイドアーティストの津田蘭子さんと市民防犯インストラクターとして活躍する武田信彦さんの夫妻。外観はごく普通に見えますが、一歩なかに入ると、2人のセンスが炸裂したカラフルな空間に。そのひとつひとつについて紐解いていきます。

中古マンションのリノベーションから、
セミオーダーの新築戸建へとシフト

10年間住んだ古い賃貸マンションから、いざ自分たちの家を、と考えたのが3、4年前。当初は中古マンションを購入してリノベーションすることを考えていたといいます。

「けれど当時は猫が3匹いたので、分譲でもなかなか物件がなくて。戸建ては管理が大変だし、寒いという偏見があり、中古マンションのリノベのほうが安いしエコだと思っていたんです。でも、たまたまこの街区が空いていると不動産屋さんから紹介され、見に来たら環境がすごくよかった。更地の状態でしたが、箱ものと合わせても価格はマンションリノベとほぼ同じくらい。新築なら水回りなどの設備も新しいし、だったらここでいいのではないかと決めました」と、蘭子さん。

建築条件付きの土地で、設計会社は選べなかったが間取りはほぼ自由。仕様などゼロから探すのは大変なので、オプションを示されるのはありがたかったといいます。

「ここは目の前が公園だし、明るいし、本当に環境に一目惚れしました。マンションと違って上下階の音を気にしなくていいし、大通りから一本入った静かな街区なので居住者しか通らない。プライベートはしっかりと守られている感覚があります。また、まわりが農家なのでお野菜をいただけるのも嬉しいですね」と、信彦さん。

結果、マンションではなく、新築戸建てにして大正解。今はその選択に2人とも満足しているといいます。

家づくりアイデア①
壁や天井をカラフルにDIYペイントして、
シンプルな間取りに個性を打ち出す

≪キーワード≫
 #カラフル #DIY #壁紙

壁の色はマンションのイメージのまま発注したので、最初はライトグレーの壁紙で統一されていました。けれど、その色だと1階が暗くなってしまうことが、住んでから発覚。

「それでしばらく嘆いていたのですが、あるとき“暗いと不平を言うよりも、すすんであかりをつけましょう”というラジオ番組のキャッチコピーを思い出したんです。それであっと気づいて壁を塗ってみようと思い立ちました」と、蘭子さん。

信彦さんも実は高校生の頃から、実家の自室を自分の好きな色でペインティングしていた経験があり、このアイデアに賛成。今もペインティングのほとんどを担当しています。

最初に手がけたのはリビングのピンク。一面だけだったのが、どんどんハマって壁から天井まで、家全体に拡大していきました。

寝室の壁は紫色を基調に、天井はストライプ模様。優しい色味なので、落ち着いた空間に。

壁紙は主に蘭子さんの担当。階段など大きな面は業者に頼みましたが、キッチンなど狭い場所は自分たちで貼っています。

「壁紙は柄合わせがあるので、彼女のほうが得意なんです」と、信彦さん。防火基準をクリアしている〈サンゲツ〉製だが、デザインはベルギーの〈ARTE〉によるホワイト&ゴールドのボタニカル柄の壁紙。柄ものの壁紙を家に用いるのはなかなか勇気がいりますが、信彦さんいわく「この家は実験場という意識があるんです」とのこと。

日本だと木の質感を生かした家や、すっきりとミニマムな家に人気が偏りがちですが、お二人は東京発信の大人カラフルをめざしているそう。

「どこどこ風というのはまったく考えていません。自分たちの好きなように実験をしているだけ。ただ、日本でまだ誰もやっていないことを発信したいと思っています。Instagramのフォロワーも9割が海外の人なんです」

最近、Instagramにあげて評判がよかったのがパントリーの改装。扉を外した入り口を赤と白でペイントし、内側もオレンジとグリーンに塗り分けました。次は、廊下収納をブックシェルフにしようと思案中だといいます。

また、完璧に思える色や壁紙選びですが、実は何回か塗り直したり、貼り直したりしているそう。

「イメージじゃなかったら、また塗り直せばいいだけ。壁紙だって小さなサンプルだけでは想像つかないのは私たちも同じ。最初からパーフェクトに素敵にならなくても、気軽にチャレンジしていけば思います」と、心強いアドバイスをしてくれました。

家づくりアイデア②
ヴィンテージの家具や小物を使って、
無国籍なミックスインテリアをつくる

≪キーワード≫
  #インテリア #ヴィンテージ家具 #リメイク

また、2人の共通の趣味は中古家具店やリサイクルショップを巡ること。この家の周辺にもリサイクルショップがたくさんあり、引っ越してくる前からよく通っていたそう。そこで掘り出し物を見つけるのが、何よりの楽しみだといいます。

例えばリビングのソファはイタリアのブランド〈カッシーナ〉のものだし、その前に置かれたガラステーブルはドイツ〈ロルフベンツ〉のもの。キャビネットの上に置かれている白黒ボーダーのコンポート器は萬古焼で、ギターの隣にあるのは九谷焼の照明と、値段や国や年代にかかわらず、2人のお眼鏡に適ったものが選ばれています。

飾っている絵もリサイクルショップで購入したもので、蘭子さんのアトリエに飾っているトロフィー形の50年前の木彫りの熊は、2,000円で購入したものを青くペイント。
「見切り品みたいなワゴンから、これはいい!と思うものを見つけるのが大好きなんです」と、蘭子さん。

目利きなのはもちろんですが、洋服から靴、バッグまで100%手作りをしている蘭子さんの手先の器用さや培われたテクニックも、それらを生かすのに役立っています。

「カッシーナのソファも中身はしっかりしていたのですが、生地は、これでは誰も買わないだろうな、と思うくらい汚れていた。なのでそれをはずして自分でカバーを縫いました」

そういった、こうすれば素敵になるのでは、と想像できる力、実際にリメイクできる技術力も、家具や小物選びの助けになっています。

ここでも共通している思いは、どこどこ風と形にはまらないこと。オリジナルのアイデアを大切に、ひとつのテイストにまとめないミックスインテリアを作り出しています。

家づくりアイデア③
狭いスペースでも緑を配して、心に余裕をもたらす
≪キーワード≫
 #グリーン #防犯 #間接照明

もうひとつ、セキュリティが万全なのもこの家の特徴。市民防犯インストラクターという肩書きを持つ信彦さんの知識を総動員して、防犯対策が随所に施されています。
けれども、いかにも人を寄せ付けません、という排他的な雰囲気は出さず、おしゃれを諦めない防犯をしたい、というのも信彦さんの考え。

通りに面した蘭子さんのアトリエの窓にはシャッターではなくデザイン性の高い格子を設置し、侵入できないようになっていますが、それだけでは息苦しくなってしまいます。そこで考えたのが、緑を配すこと。

「地植えができるスペースがないので、長尺のプランターにトネリコなど強い植物を植えて、窓の外に置くようにしました」と、信彦さん。

これには蘭子さんも感激。
「この緑があるかないかで、気持ちはだいぶ変わります。木漏れ日が家のなかにも入ってくるので、すごく心地いいんです」

また、リビングの窓も防犯対策のためフィックス窓になっていますが、そのリビングと隣の家とのわずかな隙間にも植栽がされています。

「隣の家と隔てるフェンスまで1mもないのですが、樹を植えたら圧迫感がなくなり、奥行きが感じられるようになりました。葉っぱがゆらいでいるのを見るだけでリフレッシュできるので、緑の力ってすごいなって思います」と、蘭子さん。

さらには家のなかにも緑を多く取り入れ、寝室に面した2階のテラスにもプランターに植樹をしている。

また、夜になると間接照明の灯りを外に向けるというのも、この家の独自性だと信彦さんは言います。
「単純に街区に灯りがあると安心できるし、自分も出張などから帰ってきて灯りがともされているのを見るとほっとする。防犯だけでなく、心にもよい作用をもたらしていると思います」

堅牢なつくりながら、リラックスもできる。防犯対策までは難しくても、緑を取り入れたり、灯りを外に向けるのは、今すぐにでも真似ができそうなアイデアです。

信彦さんのワークスペース。イエローとターコイズブルーを斜めで切り替えた唯一無二の雰囲気に。
波を打ったようなエキゾチックな柄の壁紙のバスルーム。洗面エリアには市松模様のタイルを。
大胆なボタニカル柄が印象的なキッチン。ミントグリーンにペイントされた壁面も爽やかな印象を。

大人が本気で遊びながらつくる、 現在進行形の家づくり

カラフルだと落ち着かないのでは、と心配する人もいるかもしれませんが、そんなことはない、と2人は言います。

「昼は明るくて気持ちいいのに、夜になると不思議と落ち着く。また、寝室を紫にしたのは大正解。この色にしてからぐっすりと眠れるようになりました」と信彦さん。

2人とも家で仕事をするため、毎日過ごす空間を楽しくしたいと始めたカラフルなペイント。

「昭和ポップなカラフルやガーリーなカラフルを実践している人たちはいるのですが、僕らのような大人のカラフルな家は、珍しいと思います。今後は和のものをもう少し増やして、東京ならではのインテリアを作っていけるといいな、と思っています」

日々、実験だという2人の家づくりは終わることなく、まだまだ続いていきそうです。

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Text/三宅和歌子

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