
猫とニンゲンが二人三脚で働く!新しい本屋のかたち
−Cat’s Meow Books【前編】−
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たわし こにゃちは!ボク、Doliveの看板猫たわし。いろんな先輩にゃんこの暮らしを見学して、猫にとって居心地のいい家やライフスタイルを勉強しているんだ。
第8回目の訪問先は、猫が店員として働く本屋、「Cat’s Meow Books(キャッツミャウブックス)」。店主の安村正也さんは、ご自宅兼店舗として、築32年の一軒家をフルリノベーション。「猫と本屋が助け合う」をコンセプトに、2017年、5匹の猫と共にご夫婦でお店をオープンしました。現在お店では、そのうちの3匹が活躍中。猫の本(猫が登場する本も含む)ばかりがズラリと並ぶ本屋が、どのように猫と“助け合って”いるのか、見ていきましょう!


Cat’s Meow Booksは、東京・三軒茶屋駅から徒歩圏内。世田谷の住宅地にあり、隠れ家的な雰囲気を持つ。左上の、猫が本を広げる看板がトレードマーク
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チョボ六さん うちと、さつきが保護されたのは、大阪やねん。その後、東京の保護猫カフェに移動して、そこでお父さんとお母さんに出会ったんや。
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さつきさん 大阪では、もう〜死にそうにお腹が空くことも多くって。今は猫店員しながら毎日ゴハン食べられて、めっちゃ幸せ!
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読太さん 私も同じ保護猫カフェから迎えられたけど、茨城県出身よ。お店で可愛がってくれるお客さんに出会えて嬉しい!

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たわし みんな元保護猫なんだね。看板猫じゃなくて、猫店員さんって呼ばれるのはなぜ?
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チョボ六さん そりゃ、ゴハン代をしっかり稼いでるからや!うちらが来る前からお父さん達と暮らしてた「三郎」さん(今年4月に逝去)は、2階でゆっくりされてたけど、うちらは毎日1階のお店で働いてるで。そこんとこ、今日はしっかり見てってや!

〈今日のテーマ〉
猫と本屋は、どうやって助け合う?
●受け皿の少ない猫を迎える
本屋の構想を練る段階から、お店に保護猫を迎えると決めていた、安村さん。引き取り手の少ない猫を希望したところ、保護猫団体から勧められたのは「りんご猫」と呼ばれる、猫エイズにかかった猫達でした。猫エイズは人にうつらず、発症しなければ猫エイズキャリア(ウィルスを保持した状態)のまま天寿を全うできることも。しかし、家に迎えるのをためらう人が多いのが現状です。

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さつきさん うちらがおった保護猫カフェは、日本でも珍しく、りんご猫だけ集まるお店やってん。うちはチョボ六とずっと一緒で、読太ともそこで仲良くなったんや。
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読太さん 私は、出身地も年も同じ「鈴」と仲良しだったの。だから、お父さん達は4匹みんな一緒にって、ほぼ同時にお店に迎えてくれたのよ。
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たわし 三郎さんも含め、お父さん達は一気に5匹の猫を育てることになったんだね。本屋の猫店員って役割をもって、りんご猫のみんなに居場所を作ってあげられたんだ。

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読太さん そうなの。安心できる居場所があって、私達は本当に幸せ者よ。鈴は今年の8月に病気で急に亡くなってしまったけど、一緒にお父さんとお母さんにところへ来られて良かったと思っているわ。
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たわし そうだったんだ…。それは寂しいね。
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読太さん うん、本当に寂しい…。でも、お父さんとお母さん、それにお店のお客さんにたっぷり愛情をもらって幸せだったと思うの。私、鈴の分まで頑張らなくちゃ!

姉妹ではないが、読太とよく似ていた鈴(右イラスト)。2匹は動物愛護センターで、殺処分寸前だったところを保護された
●ファンを増やし売り上げに貢献
3匹の猫店員は、気が向くとお客さんを出迎え、体を撫でさせたりお腹を出して甘えることも!本棚で寝ているだけでも、その愛らしさが人々を和ませ、普通の本屋にはない魅力になっています。店内でドリンクの注文もできるので、腰を据えて本を選びながら、猫店員と交流をはかる常連客も増えているとか。


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たわし ボクだったら、緊張しちゃうな…。「いらっしゃいませ〜」って、上手に言えないかも。
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チョボ六さん 普段通りに過ごすだけや。構ったろって思ったら、お客さんの足元にスリスリ〜ッてな。

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さつきさん うちはな、お客さんが座ろうとした椅子をあえて横取りしてウケを狙ってみたりもするで。
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読太さん 私は店内でイベントがあると張り切っちゃう!お客さんの真ん中に立って「見て見て!」って。お客さん達、みんな喜んでくれるから。
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たわし お客さんと仲良くなってお店に通ってもらうことが増えれば、売り上げにつながるよね!ゴハン代を稼ぐって、こういうことか〜!

店内で寝て過ごすこともあるが、「猫は寝るのが仕事だから」と、お客も慣れっこ。猫カフェではないので、猫店員が寝ている時は、そっとしてあげるのがマナー
●お客さんも保護猫団体を支援
猫を助ける手立てとして、Cat’s Meow Booksはお店の売り上げの10%を、複数の保護猫団体に寄付しています。そのため、お客さんは本やドリンクを購入するだけで、自動的に保護猫団体を支援できることに。「うちのような本屋に限らず、利用客が気軽に支援活動に参加できるお店が増えるといいですね」と、安村さんは語ります。

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さつきさん お店がオープンした頃は、「保護猫って何?」って聞く人も多かったらしいで。でも、最近はほとんど聞かれなくなったんやって。
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たわし それだけ「保護猫」って呼び方が定着して、支援活動に興味を持つ人が増えたってことだね。

保護猫活動を行う一般社団法人「LOVE & Co.(通称ラブコ)」も、寄付先の1つ。ラブコの活動資金源となるコーヒー豆も、店内で販売。パッケージには、里親募集中の猫の顔のプリントが
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チョボ六さん そうやね。うちの左耳の先がカットされてるのも「さくら耳」って呼ばれて、保護猫の証らしいで。

さくら耳は、ノラ猫が保護猫団体を通じ、避妊去勢手術済みであることを示すもの。カットされた耳の形が桜の花びらに似ているため、さくら耳と呼ばれる
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たわし へー!そうだったんだ。「りんご猫」に「さくら耳」。保護猫にまつわる言葉や意味が広く知られていくことも、これから大切なのかも。たくさんの猫が幸せになれる社会になるといいなあ。
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読太さん 本当にそうね。お父さんは「うちは本屋だから、猫の飼い方や病気の本をそろえて、お客さんにすぐ提供できることも大事」って言っているわ。猫の情報をお客さんに届けることも、猫を助けることにつながるわよね!
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たわし 確かにそうだね!欲しい猫の本が買えて、元保護猫の猫店員と触れ合えて、保護猫団体も支援できて。うーん…、なんて猫への愛に満ちたお店なんだろう!

【まとめ】
猫と本屋は、どうやって助け合う?
- 受け皿の少ない猫を迎える
- ファンを増やし売り上げに貢献
- お客さんも保護猫団体を支援
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たわし Cat’s Meow Booksは、猫エイズキャリアの猫達に本屋という居場所を提供する。猫店員は、接客して本を売り、ゴハン代を稼ぐ。持ちつ持たれつの関係で助け合っているんだね。それに、お客さんも支援活動に参加できるシステムは画期的だと思ったよ!猫の幸せについて、とことん考えたお店なんだ。
photography/黒坂明美 text/橘川なおこ