Dolive Doliveってなに?

DATE 2022.08.13
「家は買わなくてもいいし、形だって、誰と住むのかだって自由」。暮らしのカタチが多様化している今、家の使い方自体を見直す人が増えてるみたい。そこであなたも、家との付き合い方、住み方、暮らし方を、もっと柔らかい頭で「シン解釈」してみるのはどうだろう? 誰かのユニークなライフスタイルをヒントに、あなたの「こんな暮らしもいいよね」を見つけてみませんか。

今回シン解釈するのは

アパートを一戸建てにリノベーションした、
オープンな家族の暮らし。

2Fの床の真ん中は吹き抜け。1Fからは2Fのほぼすべての部屋が見える

アパートを一戸建てにリノベ。立体空間に2Dの世界が広がる家

玄関を入った瞬間に広がる、カラフルな空間。このユニークな一戸建てに暮らすのは、4人家族の佐々木さん一家です。2階建てのこの建物には、約5.3メートルの大きな吹き抜けがある空間を中心に、6つの部屋が点在。夫・寛隆さんのご両親から譲り受けた木造二階建てのアパートを一戸建てへとリノベーションして、2014年頃に完成しました。

玄関からの景色

1Fダイニング

「当初はアパートを壊して新築を建てる計画でしたが、設計をお願いした建築家の河内一泰さんからのアドバイスを受け、アパートの骨組みを生かしてリノベーションすることになったんです。このアートのような内装も、河内さんからの提案でした」

1Fリビング

妻・映子さんの弟でもある河内さんは、住宅を中心にショップや集合住宅の設計を手がける建築家。「彼が今まで建ててきた住宅を見て、普通じゃない家ができるのでは?と想像してはいましたが……」と映子さんは笑います。

「アパートを取り壊す費用も節約できるので、200平米の広さがあったもとの建物を生かすことを提案しました。もとのアパートは2階建てで各階に4戸ずつ、計8戸という構成だったので、各部屋の間にある壁や天井に穴をあけていくように工事をして、ひとつながりの空間を作っていきました」(河内さん)。

1階ピアノ部屋と2階のベッドルーム以外はすべて吹き抜けに面しており、小さな三角窓から1階が見降ろせる

以前から子どもたちを連れて住宅展示場を巡るのが趣味だったという寛隆さん。多くの一般的な一戸建てを見てきたこともあり、この家の建築模型を見た際は斬新なデザインに驚いたそう。

「新築よりもコストが抑えられるという目的からはじまった計画でしたが、予想外のデザインにびっくりしましたね(笑)。同時に、ほかの住宅メーカーにはない構造に惹かれました」

内装のテーマは「パッチワーク」。2フロアをまたいで大きな四角形や三角形を作るように壁を切断し、それぞれを水色とピンク、ホワイトの3色で塗り分けています。ベースとなっているウッドを入れると計4色。壁の色を分けることで、3D空間がパッチワークのような2Dに見える視覚的なマジックが施されているのが、この家のおもしろさです。

「この造りはキュビズムの技法から発想しました。3Dの空間に色や形による視覚効果を施したら、2Dの平面に見えるという新しさが生まれました。一番分かりやすいのは、玄関を入った辺りからダイニングの方を向いたとき。壁の切断面をつなげてできた空間が額縁のような役割を果たし、その奥にあるスペースが一枚の絵のように見えるんです」(河内さん)

キュビズム

パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックが発案した絵画の技法。平面の絵に立体的な視点を加えることで絵を立体的に見せた美術史における革命。

1Fダイニング。立体的な壁の線が1枚の絵の額のように見える

色は、あえて日本の住宅ではあまり見られないカラーを選んだそう。観葉植物で取り入れることができるグリーンや、太陽光を彷彿とさせるイエローは除いて、ピンク・水色・ホワイトの3色に決まったといいます。内装がカラフルなぶん、外観やインテリアシンプルに。

「完成するまではどんな生活ができるのかな?と、期待と同時に不安もありました。でも実際に住んでみると、色があることで各部屋のキャラクターが出て楽しいんですよ。各部屋に統一感を出さないというのも一つのコンセプト。そのため全部屋、違うカーテンや照明器具を選びました」

くわえて生活用品をなるべく見えないように収納していることも、空間がごちゃっとした印象にならい工夫です。

キッチン

「生活スペースにモノをたくさん置きたくなかったので、階段下のデッドスペースにパントリーを作り収納を工夫しています。生活必需品だけは見せているので、自然と無駄な買い物が減りました。それによってゆとりがある雰囲気が生まれているのかもしれません」

1F洗面所

各部屋とリビングがつながった、オープンな家族の暮らし

壁や床を四角形や三角形に切断しているため、一見奇抜な空間に見える佐々木家。ですが実は、間取りは6LDK。一般的な一戸建て住宅とさほど変わりません。1階の玄関を入るとリビングダイニングがあり、その奥にキッチンとバス。そして2階にご夫妻と子どもたちの部屋、書斎、インナーバルコニーを配置した造りになっています。

設計を依頼したときのリクエストは「廊下を作らずにリビングを広く取ること、リビングを通って各部屋に行ける造りにすること、グランドピアノが置ける専用の部屋と大きな食卓を作ってほしい」という、4つだったそう。

広々としたダイニング

専用のピアノ部屋

「もとのアパートが200平米あったため、吹き抜けを大胆に作っても2階の床面積が狭くならなかったことはリノベーションならではの利点でした」

前に住んでいた家での生活は、家族4人が一部屋で寝て、同じ空間で食事もするスタイル。そのころと同じような「家族がつながっている空気感」があるところも、佐々木さん一家は気に入っているといいます。

1Fから見える2F書斎

「引っ越して家自体は広くなりましたが、以前の暮らしと変わらず、どこにいても家族の気配が感じられる安心感があるんですよね」

例えば、1階にある勉強部屋。ここの三角窓はリビングから大人が覗き込める高さにありますが、室内で座って過ごす人の視点では高い位置に作られているため、室内と外にいる人との間にほどよい距離が取られています。

1F勉強部屋の三角窓

「家族の温もりを感じつつプライバシーも保たれている。絶妙なさじ加減が居心地のよさに繋がっていると思いますね。家を建てるときは建築家やデザイナーにある程度希望を伝えて、あとは委ねると、思いもよらない暮らしの提案が返ってくるんだなと実感しています。この家については、子どもたちが小さいころは遊び場としても機能していましたし、大きくなったいまは成長期でもコミュニケーションが取りやすい安心できる空間になっています」

1Fに居ても2Fの人の気配が感じられる

「子ども部屋の三角窓は小さめなので、室内は完全には見えません。ですが、食事ができたときなどにリビングから声をかければきちんと声が届く距離感なんです。三角窓から声が通って、それぞれがコミュニケーションが取れるのもこの家のよさですね」

子ども部屋間の廊下

2Fインナーバルコニー

ライフスタイルに合わせて変わる、家の使い方

「2階のインナーバルコニーで本を読んだり1階の勉強部屋でまったりするなど、各部屋で好きな過ごし方ができるのが楽しい」と佐々木さん一家。なかでも1階にある勉強部屋は、子供たちの成長によって使い方を変えているのだとか。

「友達が遊びに来たときに寝る部屋にしたり、受験期は子ども部屋から机を移動して勉強部屋にするなど、そのときどきで変えています。視覚的なおもしろみがあるので風変わりな家に感じますが、各部屋の広さが四畳半〜六畳間なので、ライフスタイルの変化に応じて部屋の役割を変化させやすいんですよ」

「これから子どもたちが巣立っていったら、家以外の使い方もできそうだなと考えています。趣味仲間などの集会所やレンタルスペースとしても出せそうですよね。3家族くらいは泊まれる広さがあるので、何かしら人が集まる場所になれば嬉しいです。我が家がどう変化していくかはもちろん、よりオープンな家にすることによってたくさんの人に愛される空間になることを楽しみにしています」

家の中での家族のつながり方をシン解釈した、ユニークでオープンな家。珍しいカラフルな空間ですが、各部屋の広さや間取りを工夫することで、ワクワクと居心地の良さが同居しています。ゆずれないポイントは押さつつ、プロの建築家に解釈を委ねてみると、思わぬライフスタイルが導き出されるかもしれません。

佐々木さん一家
寛隆さん、映子さん、萌さん、花さん

8年前から、ほかにないアーティスティックな一戸建てに暮らす仲良し一家。花さんと萌さんが巣立ったあとは、さまざまな形で家をシェアすることを計画中。

Photography/安川結子 Text/ 金城和子 Illustration/蔵元あかり(Roaster)