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三好良,ファッションディレクター,1LDK DATE 2022.10.21

ファッションディレクター三好良さんと振り返るカコイマミライHOUSE

“過去”が“今”をつくり、“今”が“未来”をつくる。
それは、暮らしについても同じこと。

ゲストが暮らしてきた家の記録を振り返りつつ、その人らしい未来の暮らし方を想像していくこの企画。
今回のゲストは、ファッションディレクター・三好良さん。洋服はもちろん、家具やインテリアなどのモノにこだわりを持つ三好さんは、どのような家で、どのような暮らしを送ってきたのでしょうか。

ライフステージとともに家も、モノも、変化していったカコHOUSE

専門学校への進学とともに上京した三好さん。上京後の初めての住まいは、お兄さんと2人で暮らした東京の郊外のアパートだったそう。そこから東京での暮らしがスタートしました。

「僕の専門学校がある駅と兄の大学がある駅、ふたつの中間地点で物件を探しましたね。ただ、そこで暮らしたのも2年ほど。専門学校を卒業後すぐに一人暮らしをはじめました。当時、原宿のレコードショップ『BIG LOVE』でアルバイトしていたので、借りたのは少し都心寄りのアパート。6畳一間、ユニットバスの安いアパートでした。ただ、狭い部屋なのに洋服とレコードがどんどん増えるから物でいっぱいになっちゃって。でも、若いからすぐに引っ越せるお金もない。そんな状況で、結局4,5年住んでいましたね」

当時住んでいた部屋で、鍋を同僚たちと囲んだときのお写真。

その後、引っ越したのは、10畳のアパート。より広い部屋に暮らすようになったことで、とある念願が叶ったといいます。
「部屋が広くなったので、『ソファが置ける!』と思って。当時欲しかったのは、雑材などを使ってユニークな家具を提案している『PIET HEIN EEK』。ただし、価格が高いのでなかなか手が出なくて。だから、イメージに近いものを自分で作ってしまおうと思ったんです。すぐにホームセンターに行って木材を買ってきてDIYしました」

広くなった部屋に、ついに取り入れることができたソファ。しかし、暮らすうちに徐々に使い方は変わっていったそう。
「木材で作ったソファの上に座布団を敷いて使っていたんですが、硬すぎて座り心地が良くなくて(笑)。だんだん人が座るためのソファから、物を置くベンチへと役割が変わっていきましたね」

住んでいたアパートの一室。HAYのラックに、アメリカの写真家ジム・ブリットによる写真のポスター。このときからすでにインテリアへのこだわりが垣間見える

そんな”ソファ問題”も、現在の奥様と暮らすようになってから解決したといいます。というのも、新たなマンションに引っ越すとともにイタリアのデザイナー、マリオ・マレンコのソファを奥様の実家から頂いたから。初めて奥様と暮らしたマンションについて、三好さんが振り返ります。

「築30年ほどの古いマンションだったんですけど、ベランダからの風景が気持ちよくて。内見に行ったあと即決でしたね」]

住んでいたマンションのベランダ。ソファやテーブルを置いて、ゆったりとしたひとときを楽しんでいたそう

「部屋も広くなったので、そこにやっと心地のいいソファを取り入れることもできました。そのマンションは、4階だったのにストックルームも付いていて、モノが増えてしまう僕にとって、とても都合がいい物件でした。今でも『良かったなぁ』と思える家です」

マリオ・マレンコのソファを家に置いたあとの一枚

異なる記憶を宿したモノたちを、
ひとつの空間でうまく調和させるイマHOUSE

現在、奥様との間にお子さんも生まれ、家族3人で暮らしている三好さん。今はどのような家に暮らしているのでしょうか。
「現在は3LDKのマンションに住んでいます。やはり僕にとって重要なのは収納力。ここにもストックルームがありますし、一部屋をまるまる洋服を収納するための空間として使っています」

それぞれのケースはイラスト付きのふせんで仕分けするのが三好さん流

そして、家の至るところに飾られているのは、お子さんとの思い出たち。
「子どもの姿は、自然と記録したくなりますよね。小さい頃の写真や知人からもらったプレゼントは大切にディスプレイしています。」

リビングにはイラストレーターのNoritakeさんからもらった手書きの色紙(写真左)や、アーティストの加賀美健さんからもらった帽子(写真右)をディスプレイ

そして、奥様と同棲をはじめたときから使っていた思い入れのあるマリオ・マレンコのソファは、この家でも大活躍しているのだそう。
「今の家に暮らすようになって、このソファで過ごす時間もだいぶ変わりました。もともとは一人で休むことも多かったんですが、今は子どもが横で飛んだり跳ねたり(笑)。休む場所だけではなくて、子どもと一緒に遊ぶ場所にもなりましたね」

「あと、同じソファでも家や周りのアイテムが変わるとそこから見える景色や感じるイメージがガラリと変わるのもおもしろい。特に今の家に住むようになってからは、パッと視界が開けた気がしています。それは、部屋が広くなったのはもちろん、高さのあるマガジンラックから背の低いテレビボードへ、アイテムを入れ代えたのも大きいですね。この家に住んでから一番最初に買ったアイテムも、この『USMハラー』のテレビボードでした」

ちなみにもともと使っていたマガジンラックは、デンマークのインテリアブランド『HAY』のもの。現在は三好さんの部屋で本棚として活躍中だといいます。

ソファにマガジンラック、テレビボード……それぞれの家での記憶を宿しながら徐々に増えていったこだわりの家具。現在、それらのアイテムが家の中で見事に調和しています。アイテムが増えても、統一感のある空間をつくることができているわけを聞きました。

「アパレルブランドがつくるちょっと変わったデザインのインテリアが昔から好きで。僕の部屋にあるファッションブランド『BLESS』の延長コードも気に入っているアイテムのひとつ。その好みは今も変わらないですね。そんな中でも、普段からよく使うテーブルなどはシンプルなもので統一することは意識しています。クセのあるアイテムだけで空間を統一してしまうと騒々しくなってしまって落ち着かないですから」

『BLESS』の延長コードは、さまざまなウッドが連なった独特なデザイン

もともと国立競技場で使われていた椅子の座面に脚を取り付けたチェアは、三好さんのお気に入りアイテムのひとつ

数あるアイテムの中でもお気に入りだと教えてくれたのが、ヒップホップグループ舐達麻のクッション。上質なマリオ・マレンコのソファとの意外性ある組み合わせが三好さんのツボにハマるのだとか。

「みんな同じようなブランドでびしっと揃えてしまうのが、個人的にあまり好きじゃなくて。イームズチェアが流行ったらイームズチェアで揃えたり、ミッドセンチュリーに極端に寄せていったり。そのように流行りやジャンルに縛られることなく、純粋に自分が好きなものを集めていきたいという想いは今も変わりません。その点、このクッションとソファの組み合わせは、自分らしさが出ていてお気に入りですね」

シンプルな家具をベースに、自身の好きなアイテムを蓄積していく……その到達点が、現在の家なのかもしれません。

家族それぞれの時間を大切にしたいミライHOUSE

ワンルームの一人暮らしから、家族とともに暮らすマンションへ。約18年間、洋服や家具、インテリアなどこだわりのアイテムとともにさまざまな家を経験してきた三好さん。これから先のミライで、どんなモノと暮らす家づくりをしたいのか聞いてみました。

「昔はアニメキャラクターのガーフィールドなどをコレクションしていたんですけど、今はさっぱり興味が薄れてきてしまって。小さなグッズを細かく集めていくよりも、家具などの大きめのアイテムをじっくり時間をかけて選ぶことにこだわりたくなっていますね。それは、今後も変わらないと思います」

そして、ミライの家を考える上で大切にしたいのは、家族それぞれの時間だといいます。

「よく家族が顔を合わせやすくするために、リビングを通らないと自分の部屋に行けない設計の家もありますよね。でも、もしこれから新たな家で暮らすとしたら、そのような間取りじゃない方がいいなと。というのも、僕自身が子どものとき、まさにそのような家に暮らしていたんです。思春期のときは、外に出かけるたびに家族に顔を合わせるのがイヤで、窓から壁伝いに外に出ていたくらい(笑)。息子には、そんな経験をさせなくてもいいと思っています。自分で篭もりたければ篭もればいい。それは僕自身も一緒。一人で考え事をしたいときもありますから。家族それぞれが自分の時間を大切にできる部屋がある家もいいなと思っています」

20代前半を過ごした6畳一間での一人暮らし、奥様と内見をして出会ったお気に入りのマンションでの二人暮らし、そしてお子さんとの記憶が積み重なっていく家族三人での暮らし……これまで暮らしてきた家の思い出と、これから思い描く家のかたちを話してくれた三好さん。
家の中に置かれている洋服、家具、インテリアなどのアイテムも、モノを愛する三好さんの暮らしの軌跡を物語っているようでした。

これまでの暮らしを振り返り、これからの暮らしを見つめていく。未来の自分らしい家づくりを叶えるヒントは、過去、そして今の暮らしに隠れているのかもしれません。

三好良 さん

株式会社 三好事務所代表 / Fashion Director
2009年 1LDKに参加。2016年から2021年11月まで、1LDKのCreative Directorを務め、2018年 ショップとHOSTELの複合型ショップ SO SHOP & HOSTEL NAKAMEGUROを立ち上げる。
2022年8月で1LDK擁するI.D LAND COMPANYとの契約を終了し、11月 東京都目黒区祐天寺にアポイント制のショップをオープン予定。
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Photography/安川結子 Text/小林拓水