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定食あさひ DATE 2022.02.24
街を歩いていると、外観のデザインを見ただけで入ってみたくなる魅力的な建築に出会うことがあります。「外観探訪部」は、そんな気になる建物の外観にフォーカスし、家づくりのアイデアを学ぶ企画。思わず足を止めてしまう外観デザインから、その魅力の秘密を探ります。

夫婦で始めた定食屋は、偶然見つけた築約40年の不思議な古民家だった

東京都三鷹駅から徒歩15分の場所に佇む「定食あさひ」。築約40年の古民家をリノベーションした定食屋で、1階入り口と2階ベランダを囲むユニークなアールのファサードが目印です。店主の日野さん夫婦がこの物件を見つけたときにはすでにこのファサードだったそうで、なぜこういうデザインなのかは謎に包まれているのだとか。そんな「定食あさひ」の、親しみやすい和モダンな外観から家づくりのヒントを探してみましょう。

POINT1: 元々あった良デザインはそのまま採用

「今はシリコンバレーに住んでいる90歳くらいのおばあさんが大家なんです。いつ、なぜこういうカーブのついた外観になったのかは分かりませんが、もしかしたら海外の建築デザインを参考にしたのかもしれません」と日野さん。日本の古民家らしからぬこのデザインは、リノベーションの際もそのまま生かし、「定食あさひ」の求める親しみやすく懐かしい雰囲気とうまく調整をしています。

元々あったデザインをどう生かすかを考えるのもリノベーションの醍醐味。古き良き雰囲気は残しつつリデザインすると新しい発見があるかもしれません。

POINT2: 街並みに溶けこむ暗い壁色をあえて選ぶ

物件が決まった後は知り合いの建築デザイナーにプランニングを頼んだ日野さん。「最初は映画『かもめ食堂』みたいな、爽やかなイメージだったんです。でもデザイナーさんが『夜にポッと灯りが光っていて、通りがかりの人が吸い込まれていくような定食屋』というコンセプトを考えてくれて、それもいいな、と」。

まわりの街並みに馴染むような外観を目指して、壁の色は深い緑に塗り替えたのだそう。日野さんが最初にイメージしていたより暗い壁色に仕上がりましたが、この地域の人が店に入りやすいデザインになりました。フライパンで作った看板も目を引きます。

外観の大事な要素である壁の色は、店舗ではなくても、「住む人がどうしたいのか」に加えて「家が立つ地域との関係をどうしたいのか」を考えてみるのが良さそうです。

POINT3: 日本の古い引き戸を入り口に。ガラスにもこだわる

「定食あさひ」の外観でいっそう懐かしさ、親しみやすさを感じさせるのは、入り口に使われている古い引き戸。デザイナーがここに取り付けるために探して見つけてきてくれたそうで、近所の人たちが気軽に入りやすい、あたたかい雰囲気をつくっています。扉を開けるとすぐ目に入る古い学校の椅子や食器棚も、見るだけでほっこり。「客層は本当にバラバラで、子どもも多いです」と言うのも頷けます。

この引き戸、実ははめこんだガラスにも秘密があるそうで、全体は美しい葉模様のすりガラスが使われていますが、店内の雰囲気が外からも分かるよう、真ん中だけ透明なタイプに差し替えています。このように、アンティークの建具を使うときは、好みのデザインや目的に合わせて細部を調整するとバランスがとりやすいようです。

地域の人に愛される「定食あさひ」の外観デザイン。モスグリーンという少し重たい印象の壁色にもかかわらず、入り口にはめた古い扉と、店内から漏れる灯りで優しい雰囲気に。元々あったというアールのファサードもうまくこの雰囲気になじみ、お店の個性として生かされています。「定食あさひ」の壁色や建具の選び方を、ぜひ家づくりのヒントにしてみてください。

Photography/上原未嗣 Text/赤木百(Roaster) Composition/大倉詩穂(Roaster)