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DATE 2024.01.30

絵本のような三角屋根がのった、
東京の小さいおうち

街を歩いていると、外観のデザインを見ただけで入ってみたくなる魅力的な建築に出会うことがあります。「外観探訪部」は、そんな気になる建物の外観にフォーカスし、家づくりのアイデアを学ぶ企画。思わず足を止めてしまう外観デザインから、その魅力の秘密を探ります。

外観から街に開くことで、人が集まる家をつくる

東京・世田谷の緑豊かな住宅街。そこに絵本に出てくるような三角屋根の家があります。ライター・編集者の徳 瑠里香さんが夫と娘の3人で暮らす家のコンセプトは“実家2.0”。自分たちの実家からインスパイアされた進化した実家をイメージ。懐かしさも感じる三角屋根は、そのコンセプトの象徴でもあります。

POINT1:三角屋根のシンプルなカタチ

正面には大きな窓と玄関。そのシンプルさをより特徴づけているのが三角屋根です。今や新築では珍しい、家のアイコンのような屋根は、徳さんのたっての希望でもありました。

「隣地の日照確保のため北側斜線で屋根に傾斜をつけることがありますよね。でも、それは嫌だったんです。でしたら両側に傾斜をつけて三角にしたかった。延べ床面積76㎡ほどの小さな家なので、絵本『ちいさいおうち』が思い浮かんだんです」

裏手には果樹が多く植えられた老人ホームの庭があり、それにつられて小鳥も遊びにやってきます。東京なのに自然との距離も近い。そんなところも絵本のような家を彷彿とさせてくれます。

POINT2:濃淡のグラデーションが目を引く外壁

外壁に使われている塗材はジョリパット。これは建築家からの提案だったといいます。色やデザインのバリエーションが豊富で、色褪せにくく耐候性に優れている特性があります。

「色はショールームまで見に行き、夫とこれしかない、と即決しました。塗り方によっても風合いが変わるため、建築家の方が細かく指示を入れてくれました」

色の名前は水墨。濃淡のグラデーションが出る仕上げを施すことで、天候や光の当たり方、角度によってさまざまな表情に変化。フラットな黒一色ではないので、軽やかな印象もプラスされます。

POINT3:街に開く大きな窓

通りに向けて大きな窓をつける、というのはどうしてもやりたかったプラン。コンセプトである“実家2.0”には、人が集う場所になってほしいという思いも込められています。

「私も夫も賑やかな実家だったんです。ともに3人兄弟で親戚も近くにいる。それが原風景だったので、東京でも家に人がたくさんいて、子どもたちがわちゃわちゃ遊んでいるというのができたらいいよね、と話していたんです。なので、窓を大きく開けたのも街に開くというのもありますし、家族を開く、という意味合いもあります。近所の人や友人も含めた、みんなの実家になるといいなと思って」

カーテンを閉めていても人の気配は伝わるため、窓はいつでもオープンでいることの表明にもなっています。

三角屋根、ニュアンスのある外壁、外に向かった大きな窓。それらが意味するのは“家族だけで閉じこもらずに人とつながりながら暮らす”こと。それは実家を思わせる昔ながらの暮らし方でもあるとともに、つながりが希薄になってきた現代においては、先進的とすらいえるスタイルです。そのココロが、外観からも感じられます。

Text/三宅和歌子 Illustration/kozo