Dolive Doliveってなに?

夏目坂珈琲 DATE 2022.08.16
街を歩いていると、外観のデザインを見ただけで入ってみたくなる魅力的な建築に出会うことがあります。「外観探訪部」は、そんな気になる建物の外観にフォーカスし、家づくりのアイデアを学ぶ企画。思わず足を止めてしまう外観デザインから、その魅力の秘密を探ります。

築50年のビルをフルリノベーションした自社ビル&カフェ

夏目漱石生誕の地、早稲田・夏目坂の近くに佇むカフェ「夏目坂珈琲」。編集プロダクションを手がけるロースターという会社が、築50年の自社ビルをリノベーションし、1階にカフェをオープンしました。そこで働くスタッフだけでなく、地域住民も気軽に立ち寄れる雰囲気が外観から見てとれます。あたたかく、親しみやすい「夏目坂珈琲」の外観から、家づくりのヒントを探ってみましょう。

POINT1:縁側を取り入れて、日本と北欧の魅力をバランスよく表現

外観アイデアのインスピレーションの一つに、北欧を舞台に日本人がカフェを始める映画『かもめ食堂』があったというオーナーの大崎さん。

「再現するのではなく、今の時代の解釈で造ってみたかった。そこで大事にしたのが“日本と北欧の共通点と風通しの良さ”です」。

北欧らしい白木の扉や窓枠と同じ木材を使った縁側。ファサードに大きな窓を取り入れたことで生まれた開放感により、親しみやすい印象に仕上がっています。

「重くなりすぎたり、アメリカンな感じにならないように」と、木材の色味にもこだわりが。

仕事柄、異なるジャンルから面白いものを見つけてアイデアに落とし込むのが好きだという大崎さんならではのデザイン。既存の建物をそのまま模倣するのではなく、様々なアイデアの集大成が、「夏目坂珈琲」の外観の魅力に繋がっています。

POINT2:元からあるアールに素材を足して印象を変える

元々は宝石商だったというこの建物。夏目坂珈琲となる1階は、最初は何もなく、シャッター付きのただの駐車場だったそう。そんな空っぽの状態だった1階はリノベーションした自社ビルの中で最も変えた部分です。

建物の特徴でもあるアールの造りがあちこちに。リノベーションで軒天に縁側と同じ木材を貼り付けて、軒のアールをより際立てています。元々あったデザインに異なる素材をプラスすることで、雰囲気が変わるだけでなく、デザインの良さも引き立てることができます。

POINT3:街並みにも馴染むブルーの差し色は重ね塗りで調整

白地に絶妙なブルーの差し色は、「夏目坂珈琲」のテーマカラーとして印象付けるポイントに。この色になるまでに、試行錯誤を重ねられたそう。

「初めに塗ったグレーブルーに納得がいかず、淡いブルーを塗り直し、さらに今のブルーを重ねています。ポップになり過ぎず、かといって柔らかくもなり過ぎない絶妙なトーンを目指し、納得のいく今のカラーが完成しました」。

ロンドンの街中で見かける、著名人がかつて居住した建物を示す「ブループラーク」をモチーフにしているという看板。夏目漱石がかつての下宿先としていたイギリスに実際に残っていることから繋がりを感じ、モチーフとして取り入れたのだそう。

一つ一つのポイントに、アイデアを上手く取り入れた「夏目坂珈琲」の外観デザイン。元からあるデザインをどう活かすかで、ファサードの印象は大きく変わります。元々ある素材に、バランスよく足し算をすることでデザインの良さを引き立たせるヒントを是非家づくりの参考にしてみてください。

Photography/川村恵理 Text/松﨑明日海(Roaster)