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DATE 2022.08.28

10年経っても色褪せない、『モルタル+墨』の外壁の家

街を歩いていると、外観のデザインを見ただけで入ってみたくなる魅力的な建築に出会うことがあります。「外観探訪部」は、そんな気になる建物の外観にフォーカスし、家づくりのアイデアを学ぶ企画。思わず足を止めてしまう外観デザインから、その魅力の秘密を探ります。

年月が経つほど味わいが増す、仏像コレクションの似合う家

都会にいながらも豊かな自然を感じられる武蔵小金井の閑静な住宅街に、4人家族が住むコンパクトな住宅があります。12年前、家主の坂本さんは「家族4人でのんびりと過ごせる家を」と、土地選びから設計事務所にオーダーしました。
設計・施工を手がけたのは「ニコ設計室」代表の西久保さん。坂本さんがアジア各国の仏像をコレクションしていたことから、蓮の花や仏像などの仏教のモチーフからインスピレーションを得て、デザインに落とし込んだのだそう。アールの効いたモダンな雰囲気の坂本さん宅の外観から、デザインのヒントを探ります。

POINT1:蓮の花の形をイメージした円窓のある入り口

一見シンプルなように見えて、細部に工夫が施された坂本さん宅のファサード。なかでも目を引くのが、円い窓をあしらった特徴的な入り口です。仏教の美術でよく見られる蓮の花の丸い形からインスピレーションを得て、このようなデザインに辿り着いたのだとか。家の中にいても、この窓を通して外との繋がりを持つことができ、コンパクトな住宅でも窮屈さを感じないのだそう。敷石のアールとも繋がった、連続性のあるデザインになっているのも魅力です。

POINT2:『モルタル+墨』で経年変化を楽しめる外壁に

家を建てるとき、「年月が経ってもむしろそれが風合いになるような家を作りたい」とオーダーしたという坂本さん。施工から10年経った今でも色褪せることなく、味わい深い雰囲気さえ感じるのは、外壁に使用している特殊な素材のおかげ。
使用しているのは、モルタル外壁用の塗料「ジョリパット」の「水墨」というシリーズ。

「材料の中に墨の粒が入っていて、塗る過程でそれが潰れてランダムなムラを表現することができる素材です。こういう自然な質感の上にできる傷や経年変化も味わいとなり、坂本さんの仏像コレクションに似合うのではと思いました」と、西久保さんは言います。

POINT3:外壁の質感を活かしたデザインと機能美を両立した形

素材だけでなく、建物のハコの形も変わっている坂本さん宅。ボコっと飛び出したようなベランダや、庇(ひさし)の部分が傾斜になった珍しい形は「外壁材の自然な質感を全面に活かした雰囲気にしたかった」のだそう。その意図の通り、凹凸によって生まれる光や影が、外観にニュアンスのある表情を映し出しています。
また、雨風を凌ぎつつ外からの視線も程よくコントロールできるため、快適に生活するための機能美でもあるのです。

年月が経つにつれ、味わい深い表情を魅せる坂本さん宅の外観。坂本さん曰く、「10年経った今でも、家を出るときにふと振り返って家を眺めてみると、やっぱり“飽きないな”と感じる」のだとか。意匠としての美しさだけでなく、長く暮らすことを考えたデザインを、ぜひ家づくりの参考にしてみてください。

Photography/上原未嗣 Text/大倉詩穂(Roaster)