街を歩いていると、外観のデザインを見ただけで入ってみたくなる魅力的な建築に出会うことがあります。「外観探訪部」は、そんな気になる建物の外観にフォーカスし、家づくりのアイデアを学ぶ企画。思わず足を止めてしまう外観デザインから、その魅力の秘密を探ります。
自由が丘の案内所。街づくりから生まれたコーヒースタンド
自由が丘駅から程近い、石畳の路地にさまざまなお店が連なる「サンセットエリア」と呼ばれる地区。そこに、ビルの約一坪の物置をリノベーションして始めたコーヒースタンド「Sunset Coffee」があります。ビルのオーナーであり、自由が丘の街おこしプロジェクトを牽引する奥角さんは、「街おこしに携わる自分たちが、ここを物置にしていたらもったいない。約一坪の空間でも価値が生まれるはずだと思ったんです」と言います。
コンパクトな空間に素敵なアイデアがぎゅっと詰まった「Sunset Coffee」から、外観デザインのヒントを学びます。
POINT1:建具が庇(ひさし)に? 機能的なカウンターの組み方
「Sunset Coffee」の外観で特徴的なのが、可動式のカウンター。建具を上に持ち上げるとカウンター部分の庇(ひさし)になり、これが開店の合図になります。
お店のスタッフはどうやって中に入るのかと尋ねると、今度は下部の建具が手前に開き、くぐって通れる入り口が出現。
「本当に狭くて、スタッフは一人しか入れないんです」と奥角さん。約一坪のコンパクトな空間だからこそ生まれた、ユニークなアイデアです。
POINT2:杉板貼りの外壁は、木目や節を活かして表情豊かに
建物の顔となる外壁には、古材の杉板を使用しています。「閉店後、カウンターが閉じている状態も含めて街並みに馴染むように考えた」という外壁は、古材ならではの味わいのある節や木目を活かして貼られています。カウンターが閉じてフラットになった状態でも、ファサードに温かみのある表情を与えています。
POINT3:ファサードを邪魔しない骨組みだけのオーニング
もともとオーニングがついていたという、こちらのスチールパイプの骨組み。
「オーニングが古くなっていたから、本当はスチールパイプごと撤去しようと考えていたんだけど、やっぱり面白そうだから骨組みはそのまま残すことにしようって」。現在はお店のサインやストリングライトを飾っていて、ファサードのアクセントになっています。住宅では、グリーンを吊るしたり、冬にはイルミネーションを飾ったりして、季節に合わせた装飾も楽しめそうです。
「約一坪の空間でも、倉庫にしておくのはもったいない」という発想から始まった「Sunset Coffee」。今では、お店をきっかけに街の人とのコミュニティが広がり、街の案内所のような存在になっているんだとか。機能的なカウンターの組み方や、素材の活かし方など、素敵なアイデアが詰まった「Sunset Coffee」の外観からデザインのヒントを見つけてみてください。
Photography/中野理 Text/大倉詩穂(Roaster)