街を歩いていると、外観のデザインを見ただけで入ってみたくなる魅力的な建築に出会うことがあります。「外観探訪部」は、そんな気になる建物の外観にフォーカスし、家づくりのアイデアを学ぶ企画。思わず足を止めてしまう外観デザインから、その魅力の秘密を探ります。
街角のタバコ屋?!書店をリノベーションしたコーヒースタンド
京都御所沿いの交差点近くにある、コーヒースタンド『MAMEBACO』。同じく京都に本店を構える「珈琲焙煎所 旅の音」の2号店として、昔のタバコ屋をモチーフにデザインされたお店です。
なぜタバコ屋なのか?それは店主が街中に佇むタバコ屋を見て「もしもここがコーヒースタンドだったら」と想像したことがきっかけなのだそう。誰もが気軽に立ち寄れるちょっとレトロな『MAMEBACO』から外観デザインのヒントを学びます。
POINT1:昔のタバコ屋を模したレトロなデザイン
コーヒー豆の「豆」とタバコの「箱」をかけ合わせた『MAMEBACO』。さまざまな産地のコーヒー豆が入った、色とりどりの豆箱がまるでタバコのよう。交差点に面したショーケースにずらりと並んでいると、行き交う人も思わず目を留めてしまいます。
ショーケースや棚などにあしらったフレームやモザイクタイルの色味には、敢えて錆びれた茶色を使用。レトロさを演出することで、まるでここに昔からあったかのような、街並みに馴染む外観の佇まいとなっています。
POINT2:レールに乗って前後に動く、可動式のカウンター
ドリップをするカウンターはレールに乗っていて前後に動かせる仕組みに。営業中は引き出して店内でドリップをできるスペースを確保。奥に収納すると前面がフラットになり、閉店時にシャッターを閉めることができます。このアイデアはコンパクトな空間だから活躍するだけでなく、住宅でも活用できそうです。たとえば、外壁に可動式のベンチを設置したりと、自由な発想を楽しんでみるのも良いのかもしれません。
POINT3:たった一坪というスペースを活かした造り
気軽にふらっと立ち寄れるようなオープンな外観の『MAMEBACO』。外からカウンターの中がすべて見渡せる店内は、実はたった一坪なんです。一坪の中には、ストック物をふわっと布で目隠しした収納や、壁にフックを付け物を取りやすくした機能性と効率性を兼ね揃えた工夫が。開口が広い一坪店舗だからこそ、見える部分には隙なくこだわることで外観デザインの一部になっています。
たった一坪のスペースを活かし、気軽に立ち寄れるコーヒースタンドとして街の人から愛される『MAMEBACO』。「『MAMEBACO』の何気ない日常が人と人を繋いでくれる」、そんな場所となることを願い、昔のタバコ屋を模したオープンなお店となりました。モチーフの取り入れ方やスペースの使い方など、ぜひ外観デザインのヒントにしてみてください。
Photography/安川結子 Text/中村ちひろ(Roaster)