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みつまともこ,ディスプレイデザイナー DATE 2018.06.18

ディスプレイデザイナー・みつまともこさんに学ぶ、心地よい空間づくり

ご主人と小学生の娘さんと3人で暮らす、ディスプレイデザイナーのみつまともこさん。お住まいは、緑豊かな環境に恵まれた東京都心にあるコーポラティブハウスです。家族全員が心地よく暮らすため、ゼロからの家づくりにあたって、みつまさんは以前から温めていたアイデアを随所に取り入れたのだそう。今回はみつまさんの家で見つけた、心地よい暮らしを実現するためのヒントをご紹介していきます。

みつまともこ/ディスプレイデザイナー・スタイリスト

(株)サザビーでディスプレイの仕事に携わり、その後、フリーランスとしてディスプレイデザインやスタイリングを手掛ける。 ディスプレイの楽しさを身近に感じてほしいという思いから、さまざまな媒体を通して季節のデコレーション、 自宅でのディスプレイ方法、いろいろな手作りアイデアなどを紹介している。雑誌「オレンジページ」にて「しまう・飾る」についての連載を担当。インスタグラム(@mitsumatomoko)でも暮らしを楽しむアイデアを更新中。
http://www.mitsumatomoko.com

いつでも家族の存在を感じる、ワンフロアの家に住みたくて。

「新しく住む家は、なるべく広い空間で、お互いの存在を感じながら、家族みんなが思い思いに過ごす。そんなイメージがありました」

みつまさんが暮らす“コーポラティブハウス”とは、入居希望者が共同で土地を購入し、それぞれの要望を盛り込みながら建築する集合住宅のこと。分譲マンションのように完成した住宅ではないため、モデルルームはなく、見学に訪れたときはまだまっさらな土地だけの状態だったといいます。

「最初に決まっていたのは、約100平米のフロアの中に、自由に間取りをつくれるということだけ。「それまでワンフロアのリノベーション物件や一軒家を探していたのですが、都心ではなかなか条件に合う物件が見つからなくて。知人が住むコーポラティブハウスを訪れてイメージが膨らんでいたこともあり、ひと続きの空間で広いリビングダイニングが持てることを魅力に感じて、思い切って決めました」。

「聞けば、集合住宅の外観と部屋の広さは決まっていても、住む人によって間取りや内装が全く異なるのだとか。こだわりの広いリビングダイニング以外にも、寝室や収納、子供部屋など、それぞれの空間に家族で心地よく過ごすための工夫を凝らしているといいます。どんなアイデアを取り入れているのか、スペースごとに見ていきましょう。

みつま邸の間取り図。広々としたLDKと、回遊できる間取りが特徴的。
リビングの階段は屋上につながっている

持ち物は「収納に入る分だけ」ですっきりした空間に

明るく開放的なこの空間は、寝室の窓際に設けられたみつまさんとご主人のワークスペース。造りつけの机は、となりのキッズスペースへと続いていて、部屋から部屋へ効率よく行き来できるようになっています。寝室はこのワークスペースとベッドのみで構成されていて、ほかに収納のための家具はありません。なのに驚くほどすっきり片づいているのは、家を設計するときに、納戸や家族1人に1つずつのクローゼットを設け、そこに収まる分だけのモノしか持たないというルールがあるから。

「ウォークインクローゼットも考えましたが、ウォーク部分がもったいなくて」とみつまさん。何をどこにしまうかを考え、限られたスペースを有効活用することも家づくりの大事な要素。家に帰ってホッと落ち着くことができるのも、過ごしやすい空間と、ゆとりを持つためのルールをつくり上げてこそなのかもしれません。

キッズスペースは色使いで女の子らしく

ぬいぐるみやカラフルなおもちゃに囲まれたキッズスペースは、寝室やリビングよりも少し甘めのテイストに。一面だけミントグリーンに塗られた壁がさわやかです。みつまさんとご主人の机から一続きになった娘さんの机は、天板の仕切りを取り外すことでドアを閉めることも。将来は、娘さんの部屋になるように工夫されていて、ミントグリーンの壁も壁紙で色や柄を変えれば、大人になって好みが変わっても簡単にイメージチェンジができます。

普段はワークスペースと一続きに

ドアを閉めると個室に

リビングの中心にソファを置いて「隠すスペース」をつくる

ワンフロアのLDKをぐるりと囲むように配置された大きな窓から、たっぷりと光が降り注ぐ広々したリビング。すくすくと育った観葉植物と窓からの光が相まって、やさしい空気に包まれています。

リビングの中心には、3人家族で座っても余裕があるほどの大きなソファをレイアウト。この位置からはほとんど目立ちませんが、ソファの後ろには、娘さんのピアノや学習用の小さな机、雑誌を入れたラックなどが置かれています。室内に入ったときにソファがアイキャッチになるので、空間全体がすっきりと見える効果が生まれるのだそう。このように思い切って大型家具を部屋の中心に置くことで後ろ側に「隠すスペース」が生まれるため、すぐ手に取れる場所に生活感のあるものを置いても、上手に目隠しすることができます。

壁面デコレーションで「リビングの顔」をつくる

ソファと並んでリビングのもうひとつの顔になっているのが造りつけの飾り棚。コーポラティブハウスは自由に設計できるのが魅力ですが、窓の位置には決まりがあり、壁面が少なかったため「リビングの一番目立つこの場所に、土台を壁に内蔵した飾り棚をつくりたかった」といいます。ここには季節を意識したディスプレイや、お気に入りの雑貨などのコレクションを並べているのだそう。家族のリラックススペースとしてはもちろん、飾っているものがゲストの目にとまって、自然と話が盛り上がることも多いといいます。

「飾る」と「しまう」が共存したキッチン

料理しながらリビングが見渡せるオープンキッチン。パッと目を惹く造りつけの飾り棚には、よく使う見栄えのいい調理器具や道具を飾りながら収納。見た目だけでなく、実用的な役割もしっかりと果たしています。

普段使いの食器、調理器具、食材などは、造りつけの引き出しや棚にきちんと収納。「よく使う、ときどき使う、ほとんど使わない」と、収納する場所もその頻度に合わせて設定してあるので、使い勝手が悪かったり、しまいっぱなしのモノが増えたりすることはありません。そんな「飾る」と「しまう」のバランスが、家事のしやすさにもつながっているのです。

タオルや生活雑貨は「見せる収納」で使いやすく

清潔感あふれるスケルトンのバスルーム。鏡に映る造りつけの棚は、あえて「この段にこれを入れる」と決めず、タオルや生活雑貨を見せながら収納しています。使い勝手のよさが大事なものだからこそ、配置や色に統一感を求めすぎないことも心地よく暮らすためのポイント。扉の開け閉めがないので、お風呂上がりや外出前の身支度もストレスフリーです。

引っ越してから3年が経った、みつまさん一家。今後は、当初は予算的に断念した部分を徐々にリノベーションしていきたいと思っているのだそう。下駄箱の白い扉を木に替えたり、リビングの一角にガラスの仕切りをつくったり。みつまさんの暮らしを楽しむアイデアはまだまだ尽きそうにありません。

印象的だったのは「決められた間取りに合わせて暮らすのではなく、したい暮らしに合わせて間取りや内装を変える」という考え方。心地よく暮らすには、見た目のスタイリッシュさを重視するだけではなく、自分たちがどんな暮らしをしていきたいかを追究することが大事だと気づかされました。