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岩切剣一郎,ケンロック DATE 2019.04.01

海まで3分!岩切剣一郎さんが暮らす、茅ヶ崎のヴィンテージハウス

サーフボードをかつぎ、歩いてすぐの茅ヶ崎の海へ。早朝の波乗りで1日をスタートし、帰ってきたら降り注ぐ陽光を浴びながら愛車を洗車する……。株式会社ケンロックCEO 岩切剣一郎さんのおおらかで爽快な暮らし方は、まさに“カリフォルニアスタイル”。ここは西海岸!?と見紛うほどの開放的な平屋は、大人も子どももワクワクすること間違いなしのリノベーション空間。岩切さんの「好き」が詰まったお住まいで、心地よい暮らしをつくるためのヒントを伺いました。

岩切剣一郎(いわきり・けんいちろう)さん

元「カリフォルニア工務店」のクリエイティブ・ディレクター。現 株式会社ケンロック CEO。施工の現場から設計の世界に入り、独学で一級建築士に。2009年、「枻出版社」に入社。建築事業を立ち上げる。「波があれば、仕事の前に必ず海へ出ます」という生粋のサーファーで、エクストリーム系のスポーツはもちろん、車、バイク、インテリア、音楽、ストリートアートにも精通する。

家全体を回遊できるレイアウトと、外と内とをつなぐ“カバードポーチ”が特徴的な間取り。海から帰って浴びるシャワーブース、浴室への動線など、生活動線に「サーフィン」がしっかりと組み込まれている。ロフトには、たっぷりのストレージも。

“海から近い立地”と“気持ちのいい景観”を求めて

中古住宅をリノベーションし、暮らしの拠点にしたいと思い続けていたという岩切さん。やはり賃貸では、岩切さんの理想を満たしてくれる物件がなかったのか……と思いきや、実は、以前住んでいた一戸建ての賃貸住宅もかなり気に入っていたといいます。

「“自分の求めるライフスタイルはこれだ!”と、気づかせてくれた家でした。ログハウス風の家でデッキや庭があり、駐車スペースが4台分あって、大好きな洗車が思いっきりできる!(笑)。たっぷりの玄関収納やペアガラス、床暖房と住居の機能性も文句なし。『この家を上回る物件に出合えたら引っ越そう』と思っていましたが、なかなか見つからなかったんです」。

岩切さんが重視したのは、“海から近い立地”と“景観のいい環境”。そんな折、ついに見つけたのが、海まで徒歩3分の場所にある中古の平屋。画家である前オーナーが、アトリエ兼住居にしていた物件です。

「サーフィンは僕の生活の一部なので、海まで歩いてすぐという立地は最高。ご近所さんもサーフィンをする人が多くて、この辺りではTシャツ、短パン、ビーチサンダルがドレスコードです(笑)。

そして、一番の決め手になったのは、ご近所さんがオープンマインドで気持ちのいい人が多いこと。自分の趣味やライフスタイルを楽しんでいるご夫婦や、子どもを大らかに育てているご家族が多いんです。実際、妻も『居心地がいい』と、すごく喜んでいます」

アトリエとして使われていたという部屋のロフトには、画家である前オーナーの絵が飾られている

目指したのは、USカルチャーを詰め込んだヴィンテージハウス

茅ヶ崎の海から歩いて岩切さんのお宅へ向かうと、まず目に飛び込んでくるのは、開放感あふれる“カバードポーチ”。住居と外を繋ぐデッキは、アメリカ西海岸で多く見られる設計なのだそう。

「僕が10代の頃から影響を受けてきたエクストリーム系のスポーツや車、バイク、アートや音楽、ファッションのほとんどが、アメリカのカルチャー。そういうライフスタイルを詰め込んだ家をつくりたいと、長年思い描いてきました。

カバードポーチは、そのコンセプトのひとつ。家の中と外の中間にスペースがあると、家の中が広がったように感じられて、外に出やすくなります。サーフィンや車&バイクいじりなど、外でする趣味を満喫するためにも、絶対につくりたいと思ったんです」

この日の朝も、颯爽とサーフボードを抱えて登場した岩切さん。出勤前の波乗りから帰宅した後は、自宅のシャワーブースへ直行します。

サーフィンから帰ったあとは玄関を通らずにシャワーを浴びてバスルームへ直行できる、サーファーならではの生活動線

「僕は、遊びと仕事の境目がほとんどありません。サーフィンも仕事と同じように“当たり前にやること”。本当に、生活の一部だと思っています」

シャワーを浴びて着替えたあとは、家の前で「週に一度は必ず、というくらい大好き」という洗車タイム。出勤前に、愛車を洗うことも少なくないのだとか。このエリアは道路幅が広く、家の前でのびのびと洗車ができるのも魅力だそう。

最大4台まで駐車できる広い駐車スペースとガレージも、サーフィンと車を愛する岩切さんになくてはならないもの。

「ガレージは主に、僕の遊び道具が入っています。サーフボードやスノーボード、車・バイク関係の工具やゴルフバッグにバーベキューセット……。もうすぐカリフォルニアから届くカスタムバイクが、今一番の楽しみですね」

“長く過ごす場所”を、一番心地良く

どこを見ても広々とした印象の岩切さんのお住まいですが、実はライフスタイルに合わせてメリハリをつけているのも参考になるポイント。

「リビングのソファーは家族の定位置で、特に、娘はこの場所が大好き。外出をしても『早く家に帰ろう』とねだるぐらいです(笑)。ソファーでくつろぐ時間が長いのでスペースを広く取り、快適に過ごせるようにしました。ティッシュやゴミ箱など生活に必要なものは、背の部分にあらかじめ内蔵して、すぐ手が届くようにしているんです」

ソファーには、ダストボックスとティッシュボックス、スマートフォンやパソコンの配線スペースが内蔵されている

「反対に、座っている時間がそれほど長くないダイニングは最低限のスペースにしています。大好きなソファーに座って食事をすることもできるようにテーブルも特注して、極力コンパクトにおさめました」

また、家全体をぐるっと回遊できる間取りも、岩切さんの家の大きな特徴です。

気持ちのよいカーペットが敷かれたベッドルーム。ヘッドボードにはソファーと同様、コンセント、ティッシュ、ゴミ箱が完備されている

リビングの奥へ抜けると、子供部屋、ベッドルームにつづいて、ゆるやかに区切られたウォークインクローゼットが。

プライベートはラフなスタイルを好むという岩切さん。夏はTシャツにハーフパンツ、冬は『パタゴニア』のアウターを愛用しているのだとか

生活動線を短く、シンプルにしているのも岩切さんならではのアイデア。日々のルーチン作業を、できる限りスムーズに行えるようにしたといいます。

「ベッドルームと玄関の間につくったクローゼットスペースに、持っている服を全て平置きで収納しています。衣替えは面倒だし、衣装ケースを使うと“こんなの持っていたっけ?”って閉まった服を忘れてしまうこと、ありますよね。買ったものを活用できていないのは、もったいないなと思って。一目でどの服か分かるように収納すれば、毎日の洋服選びもスムーズです」

ブランドにとらわれず、長く愛用できるものを

外装や外壁のカラーリングと内装は、カリフォルニアで活躍する女性2人の建築事務所「デザイン,ビッチーズ」とコラボしたもの。

「オリジナルの家の物や形を壊さずに、再利用することもリノベーションのテーマでした。例えば、照明のシーリングを外したらグリーンやブルーの色が出てきたので、玄関やガレージは、元の家のカラーリングを再現しています。“いい家はリノベーションをすれば、価値を下げずに残せる————”。この家を通じて、そんなメッセージも伝えたいと思っていました」

ダイニングコーナーの照明は、前オーナーが使っていたランプシェードをリユースしている

インテリアに造詣が深い岩切さん。聞けば、10年、20年もののアイテムも多数! 一度気に入ったものは長く愛用するのが、岩切さんの流儀のようです。

「イームズ ハングイットオール」にインスパイアされた、カリフォルニア製のウォールハンガー。スケートボードのリール使いがニクい!

「イームズの家具やヴィンテージ家具も愛用していますが、高級家具はほとんど置いていません。この家でも『IKEA』アイテムを使って、カスタマイズを楽しんでいます。そういえば、ソファーの壁面に収納しているダストボックスは、上京した18歳から使い続けていますね(笑)。

僕は、物に残らないお金の使い方は、絶対にしないんです。お酒も飲まないし、タバコも吸いません。自分の好きなものに投資をして、それを長く楽しみたいと思っています」

もとは出窓だったという洗面スペースは「IKEA」のアイテムを活用。ミラーの周囲をカラーリングしてカスタマイズしている

家は“自分がどうありたいか”を示す、自己表現のひとつ

10代から住まいに携わってきた岩切さんにとって、“家“とはどういう存在なのでしょうか。

「年齢を重ねる度に、遊びのツールは変化します。子どもの頃は文房具だったけれど、それが自転車になり、バイクや車に乗るようになって、自分の部屋を持つ。そういう延長線上に“家”もあると思うんです。家は自分がどうありたいか を示す、自己表現のひとつ。アメリカのカルチャーにどっぷりの僕が長年夢みてきた、サーフィン、車、バイクが満喫できて、好きなインテリアやアート、カルチャーが感じられる家が、やっと形になりました。自分で言うのも何ですが、“世界一いい家”だと思っています」

数々の「好き」を集めた理想の家をつくり上げた、岩切さん。心地よい住まいを手に入れるコツを聞いてみました。

「まずは、自分の好きなものを見直すこと。簡単な作業ではありませんが、自分はどんなライフスタイルを送りたいかを知るために、必要なことだと思います。自分のことを知れば、どんな家に住みたいか、ぐっと身近に考えられるようになるはずです」

ブランコベンチは、家族の憩いのアイテム。休日の朝食は、カバードポーチで食べるのが恒例なのだとか

「イメージするためには、経験するのが一番の近道。僕もカリフォルニアに足を運んで、いろいろな人のライフスタイルを見たからこそ、この家が実現できました。例えば、近所にいいなと思う家があれば家主に話を聞くのもいいし、プロに相談するのも一つの方法です。『メディアで取り上げられるような家は、自分にはムリ』と思わず、希望を持って理想の家を思い描いてほしいですね」

好きなことを追い続ければ、夢の住まいへの第一歩が踏み出せるはず————。茅ヶ崎の明るい太陽の光と、岩切さんの満面の笑みに、そう励まされたような気がしました。