グリーンショップgarage,garage,二村昌彦 DATE 2021.03.16

グリーンショップ『garage』店主・二村さんがつくる、ライフスタイルと共に成長する家。 ー後編ー

二村さんが代表を勤める、植物とインテリアのお店garage。前編でお伺いした愛知県豊橋市にある本店のこだわりをお聞きしたが、後編では二村さんがご家族と生活を営むご自宅について。住まいづくりへのこだわりから植物とともにある暮らし方のヒントまで、詳しく教えていただく。

前編はこちら
garage代表 二村 昌彦さん

1973年生まれ。大学卒業後はホームセンターで働き、その後修行のためオランダへ渡航。2007年に愛知県豊橋市に植物とインテリア雑貨のお店garageをオープンする。現在は、豊橋本店、名古屋、横浜、立川に4店舗構える他、クラフト教室、ガーデン事業、ウェディング装飾など、植物を軸にしたビジネスを多岐にわたり展開している。
HP

「ライフスタイルに合わせて変えられる家が理想ですね」

「ずっとアパートを転々と引越しする暮らしをしていたんですけど。やっぱり仕事柄、どうしてもお庭が欲しくて土地を探してここを見つけました。いろいろな条例や法律に引っかかる土地だったんですけど、自分にとっては素敵だなと。思い切ってここに住居を構えることを決めました」

家の設計をしたのは、現在建築家としてご活躍されている二村さんの同級生。

「当初は、自分で建てたかったんです。デザインを起こして。建築家の同級生に『この土地素敵でしょ』って話していて、『どう考える?』『こうしたらいいんじゃないの』って話が盛り上がって、結局そのままお願いすることにしました」

それが、今から2年前のこと。着工した時には、二村さんがすでに45歳だったこともあって、引退後の生活を見据えた間取りを希望したのだそう。

「本当は、平家がよかったんです。でも、子どもと建築コストのことを考えると二階建てのほうがいいって話になりました。
二階を子どもたちの寝室にしようと思っていたんですけど、みんなまだ小さかったので、今はまだ一階の主寝室でいっしょに寝ています。ゆくゆくは、子どもが自分たちの部屋で寝るようになったら、妻が主寝室を使って、僕はそこの和室で、とか」

子どもの成長と、それに伴うライフスタイルの変化も見越したうえで、家全体の間取りを決めていったのだと話す。

「子どもたちが大きくなったら、僕らは一階でしか暮らさない、みたいな。子ども部屋はずっと残して、自分は庭をいじれたらいいやって」

説明するまでもなく、二村さんの一番のこだわりどころは庭。そして、次に重要視したのは、リビングダイニングを出来るだけ広く確保することだった。

「広ければ広いほどいいと思っていて。僕の生活は、プライベートと仕事がほぼいっしょなので、お客さんを招くことが結構あるんです。お庭も、オープンガーデンみたいに見てもらいたいなーと。だから、リビングダイニングはお客さんが入ってきてもいいように、奥をプライベート空間にしています」

一方、奥さまからのリクエストは、家事のしやすい家。パートナーとの共働き生活のなかで、毎日の家事をサポートしてくれる時短システムの導入とスムーズな動線の確保は不可欠だったという。

「僕は仕事で週一ぐらいしか帰ってこられないので、妻が働きながら家事や育児をしてるんです。食洗機や衣類乾燥機は自動でできるものを導入して、間取り的にもサンルームとランドリー、ウォークインクローゼット、主寝室を行き来しやすいような流れを作っています」

「サンルームは、干しっぱなしになってもいいように。設計の方がいろいろ考え、比較的ローコストで作ってくれた。うちはわりと洗濯関係は充実していますね」

目指したのは、
洋風の良さも知ったうえでの和風

建物には、全開できる雨戸や庭を望める縁側など、和を感じるデザインが数多く見られる。

「モダンな雰囲気にしたかったんです。今僕が47歳なんですけど、年齢とともにお店のセレクトも変わってきたなかで、これから50代のお客様にどういったものを提案するのか、とか。昔は海外のものをカッコいいと思っていた自分から、徐々に日本の和っていいよねと」

住む家のテイストも、その時々の生活やリズムに合わせて。その考えは、過去に修行をするため1年半のあいだ生活をした、オランダの人々の暮らしぶりに影響を受けたものだと話す。

「オランダの人って大体そういう感じなんですよ。新しく家を作るのは30代40代の方が多いと思うんですけど、70代になった時にその空間ではたしていいのかって。家はライフスタイルにあわせて変えるのが理想的だと思ってます」

そんな二村さんのご自宅での定位置は、庭を一望できるリビングと縁側。休みの日はどちらかの場所に座って、熱いエスプレッソ片手に音楽を聴きながら庭を眺めるのが至福の時。
デザイン的視点からあえてつけなかった雨樋も、雨の日には水が落ちる音が響いて、おうち時間がより趣深いものになったのだそう。

「結局、お庭が楽しくてここにたどり着きますね。庭は日々手を加えながら時間をかけて作っていく感じなんで、もうちょっと成長してくると変わるかなって。イメージしていたものに仕上がるまでは、あと5年ぐらいかな」

実は、キッチンの中央にすくっと立つ枝木も、二村さんの手で飾られている。

「これは、庭の木を剪定した時に切り除いたもの。枝もゴミにせず、部屋に飾ったりドライフラワーにするだけでもいい。こういうのが結構楽しいですね。

あとは、これだけ緑があると、蝶がやってきて卵を生んだり、鳥が来て実を食べたりとか。夏になるとセミが鳴いたり、美しい紅葉を見れたり。植物との共存は、楽しみが増えることなんです」

緑を通じて深みを増す
家族とのふれあいの時間

母屋と同じ壁材を使った、こだわりの小屋もある。

近くに自然を感じ、季節に感動することは、子どもたちの情操教育にも役立っているそう。また、二週に一度は行っているというバーベキューも、子どもたちにとって大切な学びの場となっている。駐車スペース脇にファイヤーストームを作り、家族との団欒を楽しんでいるのだとか。

「時々友人を招いたりもしています。自粛で人と会いづらい時期も、外なら集まりやすいかなって。

バーベキューの最後に薪をくべて焚き火をするんです。子どもには危ないんじゃないかともよく言われるんですけど、小さい頃からそういったものに触れさせる経験をしておくことで、しちゃいけないことを学んでいくものなので。ここから見える庭のシンボルツリーは、本当にきれいなんですよ!」

植物に囲まれた家でご家族と過ごす濃密な時間が、二村さんの仕事の活力になっていることは間違いない。

「僕の場合、家族がいなかった時は100%仕事だったんです。好きなことを仕事にしているんで、オンとオフがないんです。
家族のために時間をとるのは最初の頃は難しかったんですけど、この頃はなんとなくわかってきて。もちろん、妻の助けがあってこそなんですけど、家族に一緒に楽しんでもらってる感じがあるんですよね」

「時代に合わせて趣味嗜好が変化してきたように、この先もまだまだやりたいことが増え続けていくはず」と二村さん。植物を愛する暮らしをベースに、ビジネスとプライベートを線引きしないで好きなものだけを追い続けるその表情は、新緑のようにイキイキと、まばゆいほどの輝きに満ちていた。

前編はこちら↓

photography/原田数正 text/白﨑寛子

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