Dolive Doliveってなに?

farver,渡辺礼人,渡辺安樹子,ファーヴァ DATE 2020.05.25

絶妙なバランスが気持ちいい。愛着のある家具とグリーンで彩られた、花屋 farver 渡辺夫妻の暮らし -前編-

デンマーク語で「彩り」を意味する花屋<farver>の、渡辺礼人さん・安樹子さんご夫妻。その名の通り、お店の内装は色彩に溢れている。その一方、ご自宅は木をベースにしたやすらぎの空間。ご自身の好きなものに常にまっすぐな礼人さんに、家づくりのこだわりやご自宅での過ごし方などを伺う。
渡辺礼人さんご夫妻

2010年3月に、礼人さんが中目黒のカフェの一角で、屋根も扉もない庭のような花屋<farver>を始める。その2年後、同じ中目黒に移転し、〝secret garden〟をテーマに再スタートを切る。ショップを拠点にし、ブライダルをはじめとする空間スタイリング、ワークショップ、各種セミナー、商品開発など多方面で活動を行う。
farver

三角屋根のものに惹かれたことがきっかけ

〝ファッションとしての花〟を提案する花屋、<farver>のディレクター渡辺礼人さんと奥さんの安樹子さんご夫妻が、都内の閑静な住宅街に一軒家を建てたのは約3年前。「家建てるってこともインテリアのことに関しても、ぜんぶ僕が決めました」という礼人さんの言葉に、「好きなテイストは同じなので、主人にまかせればいいものができるに違いないと信頼してました」と安樹子さんが微笑む。そんな何気ないやりとりひとつにも、おふたりのおしどり夫婦ぶりが窺える。

「一時、自己暗示なのかもしれないんですけど、三角屋根の家の形に惹かれた時があったんです。家っていうわかりやすいイメージがあったのかもしれないですね。で、そのタイミングで家が欲しいって思ったんですよ」

明暗や高低といったギャップを上手く活用

色彩のコントラストが独特の美しさを印象付ける<farver>の内装とは対照的に、 ご自宅は木調の落ち着いた雰囲気。

<farver>の内装

「もちろん店舗にもこだわっていますね。店を始めた時はまだゼロの状態で、徐々にアップデートしていったわけですけど。家は、ニュートラルに戻れる場所がいいなーって思うので、落ち着いた色味で統一しています。雰囲気が変わることで、お店と家では完全にオンオフが切り替わりますね」

左:1階 右:2階

同様に、ご自宅の1階と2階にも、天高を変えることで自然と気持ちがスイッチできるような計算がされている。書斎や子ども部屋、寝室などプライベートスペースがある1階は、天高を低く設定。その分、家族が集うリビングとダイニングが広がる2階の天井をぐんっと高くすることで、とびきり開放的な空間を実現させた。

「太陽の光をいかに取り込めるかが課題でした。割り切って考えて、1階は落ち着きたい場所だからそこまで日が入らなくてもいい。でも、家族で長い時間を過ごす2階は、やっぱり気持ちのいい空間がいいなって。3階を作らなかったのは、天井高が欲しかったからなんです」

夫婦で選んだソファで過ごす至福の時間

その狙い通り、安樹子さんが好きなブランド<TRUCK>のソファを置いた2階リビングが、礼人さんの自宅での定位置に。

「たまたま仕事が早く帰宅してまだ日が高かったりすると、この場所がすごく心地いい。晴れているとベランダの扉を全開にして、ソファに寝転んで、回る天井のファンを眺めてたりしますね。 他にはコーヒーを飲んでるぐらい。ぼーっとする時間って必要だなーって思います」

どこに家を建てるかの決定打となったのは、街の住環境だったと言う。

「裏の緑道がすごくいいんですよ。誰もいなくて気持ちがいいです。ちょうど春先に桜がきれいで、それがここに住む決め手になりました。あとは、保育園だとか小中学校までの通学路だとか、子育てしやすいかどうかも重視しましたね」

自宅の設計は、愛着のある家具をベースに

「僕はもう、物は買ったらガンガン使うほうなんで」と言う礼人さん。家づくりは、最初からインテリアありきの構想だったのだそう。

「結婚してから、妻とふたりで必要なものを徐々に揃えてきました。家具に愛着が湧いてるから、それはずっと使い続けたいって言って。だから、どこに何を置くか考えながら、設計を進めていったんですよ」

だから、テーブルやソファはもちろん、壁のアート作品に到るまで、家にあるもののすべてのバランスがパーフェクト!

「家具で買い足したのは、キッチンのキャビネットぐらいですかね。やっぱり統一感は大事で、ある程度トーンを揃えてあげると、たくさん置かれていてもまとまりがあるように見えるから。植物を置くうえでもこういう木の質感って合うんですよ」

<コンプレックス ユニバーサル ファニチャー サプライ>で購入したペンダントライトは、取り付けの時に立ち会ったというほどのこだわりぶり。

「ダイニングテーブルを置いた時の高さのバランスが気になって、ライトの位置を横から見て、大工さんに『ちょっと低い』とか『高い』とか(笑) テーブルの中心位置からズラしてるのもポイントなんです」

礼人さんが一番気に入っているのは、階段の照明。

「これも同じお店で購入しました。これを直で付けるって、一から家を建てるかリノベーションするかでしか出来ないので。木のインテリアが多くなるとナチュラルになりがちなんですけど、このライトってモダンなデザインなのでちょっと大人っぽい雰囲気になるんですよ」

家族の様子が見られるキッチンは奥さんの特等席

そんな礼人さんの好きなものがめいっぱい詰まった2階を一望できるキッチンは、奥さんの安樹子さんにとっての大切な場所。

「家にいる時は、大体キッチンにいます。ここからの眺めがすごく好きで。料理をしながら子どもが遊んでる姿を見られるのはいいですね」

また、家の片付けや観葉植物のメンテナンスは、掃除好きの安樹子さんの担当なのだそう。

「血液型がA型だからなのか、整ってるほうが好きなんですよ。主人はO型だから、こだわりはあるけど散らかすタイプなので(笑)」

礼人さんが丁寧にコツコツと作り上げた家で、家族がいつも快適に過ごせるように。共通の美意識を持ち、特別な言葉がなくても互いの得意と不得意を自然にカバーし合える関係は、まさに理想の夫婦像。

後編では、植物のプロフェッショナルであるおふたりに、花と緑に囲まれた生活についての話を伺いながら、植物と暮らすためのアドバイスをいただく。

後編はこちら↓

Photography/原田数正 text/白﨑寛子