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山本海人 DATE 2020.02.04

クリエイター山本海人さんの、都会と真鶴を行き来する二拠点生活。-後編-

神奈川県の南西端・真鶴の地で、愛犬2匹と暮らす山本海人さん。ビジネスで東京を行き来しながら、昼夜趣味の釣りに興じるその暮らしぶりは、仲間たちに囲まれて都会のトレーラーハウスでスケートライフを楽しんでいた頃と何ひとつ変わらない、夢と浪漫に満ちた日常だった。

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山本海人さん

アメリカ生活での経験を活かし、都会の真ん中にスケートプールを敷地内に設けたトレーラーハウスのオーナーとして注目を浴びる。アパレルブランド「SON OF THE CHEESE」のデザインをはじめ、サンドイッチ店「BUY ME STAND」、蕎麦バー「Sober」の立ち上げなど、多方面で活躍。
SONOFTHECHEESE
BUY ME STAND 

真鶴への思い入れはなく、ただ縁があったから

自然と調和しながら、日々満ち足りた生活を送る山本さん。意外にも、移住してくる前は、真鶴という土地へのこだわりはまったくなかったのだそう。

「真鶴に引っ越したのは、場所に魅せられたからっていうわけじゃなくて、いい家があったから。たまたまですね。縁ですよ、ぜんぶ。都内で犬2匹飼えるってなかなかハードルが高くて。ここは知り合いのショップオーナーの持ち物なんです。犬も飼えるし、家具もついてるし、住むに申し分ない。車だと渋谷まで1時間10分ぐらいなんで、じゃあここにしようかなと」

“変わらない”を続けるということ

東京では、夜から仕事をして朝5時に帰宅することもザラだったが、引っ越した後は生活リズムがガラリと変化。夜に飲みに出かけることもほとんどなくなったのだそう。

「こっちだと、朝5時に起きて釣りに行って、9時に風呂行って。食事は、1日2食になりました。朝はコーヒーだけ飲んで、11時ぐらいにガツンと食べるんです。その後は、波の動きを見ながら仕事して、日没にはまた釣り行って、夜になって寒くなったらまた温泉に入る。10時には寝てますね。かなりシンプルな毎日を過ごしてます。ハプニングが釣りぐらいですね、何釣れるかわかんないから(笑)」

「ここに住んでいて、釣りが一番楽しい」

「風呂場の下にあるごはん屋のおじさんが、釣竿とか作ってくれるんです。こないだも、そのおじさんに釣竿をつくってもらって。人とのつながりのあったかさが東京とは違うなと感じます」

移住してから1年と経っていないのに、その土地での楽しみ方をすっかり知り尽くしている山本さん。地元の人たちとコミュニケーションをはかりながら、持ち前の遊びの才能を存分に発揮している模様。

「料理は作れるんですけど、仕事してると時間があまりとれないんで、外食ばっかり。釣った魚を居酒屋でさばいてもらって食べたり。よく行く真鶴漁港ってとこは、酒飲みながらのべ竿で魚が釣れるんですよ。イワシとかを釣って焼いてもらって。毎日そんな生活です」

子どもと過ごす時は自宅でゆったりと

1階リビングの一角には、カラフルな子どものおもちゃが並ぶプレイスペースが。角のないローテーブルと座りやすいチェアの選びひとつにも、子どもに注ぐ山本さんの深い愛情が見てとれる。

「金曜と月曜は子どもベタ付きの生活ですね。釣りにハマってほしくて、たくさん連れてってたんですけど、釣りもスケボーも嫌いみたいで、子どもは家に残ってる。今は、パズルにハマってるみたいです」

とはいえ、スケートボードに関しては、山本さんご自身も、引っ越し以来デッキに乗ることがほとんどなくなってしまったのだとか。

「やらなくなりましたね、こっちに来てからは。スケボーは友達と一緒にやった方が楽しいなーって思います」

心地よい熱が生まれる人と人との繋がり

旅館を経営する“湯河原のプリンス”ことおっくんがふらりと遊びにやって来た。この取材の後も、いつものようにとっておきの釣り場に行くのだそう。

「おっくんは、湯河原の友だち。同い年で話が合うんです。地元の人はみんなあったかいですね。何かをやろうとする時に、都会だと足を引っ張り合うこともあるじゃないですか。でもこっちだと、みんな関わって楽しくやろうよってなる。地元のお祭りみたいな盛り上がりがある。あと、みんな近いからどこ住んでるかすぐバレる。うちの犬が脱走しても、すぐに『あ、あそこの家の!』って(笑)」

日本に長期滞在しているNYの友人や、この日東京から遊びに来た昔からの友人も交え、庭先のベンチでひだまりの時間を過ごす。住む土地が変わっても、山本さんの元には国境や業界を越えてさまざまな人たちが集う。こうして、人を通じて吹き込んできた風が新しいアイデアを生み、次なるステージの扉を開くヒントになることも。

ここでの生活は、結構ゴールに近いかも

遊びに来た友人はみんな「また来たい」と口を揃える、山本さんのご自宅。リラックスして過ごせるそのワケは、真鶴ならではの、一年通じて温暖な気候によるところも大きいようだ。

「この家からだと、東から太陽が昇って、西に太陽が沈むのが見えるんです。景色がやっぱり最高ですね」

四季の移ろいをゆっくりと感じられる環境は想像していた以上に心地良く、これからも住み続けて、ゆくゆくはご自身の居場所にしていきたいのだそう。

「真鶴って、実は家がすごい余ってるんですよ。空き家バンクで登録して住民票をこっちに移すと、15年経つと自分の持ち家になるから、いいなって。これ、結構ゴールに近いと思うんですよね。この生活をこの先50年やるかっていうと、ちょっと悩みますけど、もう少しいろいろ挑戦してみようかなって感じです」

四季折々に美しさを変える雄大な景観や、疲れたカラダをリフレッシュできる温泉は、都会では決して手に入らないもの。東京に住んでいた頃と変わらず仕事に打ち込みながらも、地元で趣味の釣りを心ゆくまで楽しむ山本さんの暮らしは、まさに贅沢そのもの。
穏やかな海を見下ろせる丘の上で出会った山本さんは、遊びも仕事も全力投球の、とにかく人間的な魅力に溢れた人だった。


前編はこちら↓

photograph/原田数正 text/白﨑寛子